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第18話 5人目のお客様
しおりを挟むあのあとは、報酬の魔法書をもらい、もう一泊させてもらった。
馬車で送ってもらったのだが、わざわざ、セドルさんも一緒にきてくれた。
サドルさんは、お母さんに丁寧にお辞儀をして帰っていった。
礼儀正しい人だと思う。
お母さんはニヤニヤして「ブラ役にたったー?」だって。呑気なものだ。
そんなこと言ってて、本当にわたしとセドルさんが結婚したらどうするんだろうね。お母さんだって大変だと思うのに。
夢のような数日はアッと言う間に終わり、わたしはいつもの日常に戻った。
いつものように魔法書をパラパラめくりながら店番をする。セドルさんにもらったのは「寒い時に暖をとる魔法」。
魔法原理の章を見る限り、風を起こす魔法と空気の温度を上げる魔法が組み合わさっているようだった。
温度の上下だけでは、火炎を呼び出すことはできないだろうけれど、工夫次第では色々な使い道があるように思う。
たとえば、相手の肺にある空気を超高温にしたり、対象物の周りを高音にして空気を送り込めば燃やすこともできると思う。
温度を上げられるということは、下げることもできるのではないか。気づけば、物騒なことばかり考えている。なんか嫌だな。
そんなことを考えていると、扉が開いた。
入ってきたのは、わたしと同じくらいの女の子だ。視線が交差し目が合う。その瞬間に私の意識は記憶を辿り、数年前に戻った。
そこは近所の広場だった。何人かで集まり、何かの遊びをしている。
わたしは1人。
この子はエマ。エマの周りには数人の女の子がいる。
わたしは言った。
「エマちゃーん。あーそんで」
すると、エマはつまらないものを見るような顔をする。
「いやよ。あなたの家、貧乏じゃない。それにいつも本ばかり読んでいて気味が悪い。本の虫がうつるから、みんなソフィアとは遊ばないようにしよっ」
そういうと、エマと数名は走り去る。
わたしは、あの日、はじめて人の悪意にふれた。いま思えば、大したことではなかったのだろう。
だけれど、親しい人以外を知らず剥き出しだったわたしの心は。
一つの結論に至った。
わたしは、他の子とは違う。
他の子に奇異の目で見られるくらいなら、独りでいる方が楽だ。
それ以来、わたしは自分から他の子に話しかけることはなくなった。
1人でいる時間が長くなっていき、気づけば今日のわたしが出来上がった。
相手からすれば、ちょっとした意地悪だったのだろう。だけれど、わたしは……。
白昼夢が終わり、ハッとする。
エマはわたしに向かって一直線に向かってくる。
怖い。
逃げたい。
目を背けたい。
エマは、わたしの目の前に立つと頭を下げた。
その様子はオドオドしていて、以前のエマとは別人のようだった。
「わたし、学校でのけものにされていて。助けてください」
「え?」
何を言っているんだ。この人は。
エマは虐められる側ではなく、虐める側だったはず。
それに、どの面下げて……。
自業自得ではないか。
あぁ。これはわたしの悪意だ。
わたしは平気なフリをしても、ずっと引きずっていたのか。エマにささやかな仕返しをして、気をよくしているのだ。
とりあえず、話しだけでも聞いてみよう。
わたしは冷静を装った。
「できることと、できないことがあります。それに報酬の魔法書はお持ちですか?」
「はい。もってます。「素敵な夢を見る魔法」です。実は、ソフィアさんが来なくなってから……」
それによれば、学校に通うようになって、新しいリーダー格の子が現れた。それを面白く思わないエマさんとトラブルになり、結果的にはエマさんがターゲットになったらしい。
「でも、エマさん幼馴染の友達いたじゃないですか?」
「あの子達は、その一件以来、さーっといなくなってしまったの。ハハ……。自業自得だよね」
エマさんは、あの頃のわたしと同じだ。
わたしのときは、誰も助けてくれなかった。
このまま見捨てて。
わたしと同じ思いをさせるの……?
何でも屋をはじめて、色んな人に出会って、わたしを信頼してくれる人に出会えた。また遊びにおいでと言ってくれる人もいた。
わたしはあの時とは違う。
少しは変われたと思いたい。
……わたしは、依頼を受けることにした。
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