ねこ耳娘の異世界なんでも屋♪

おもち

文字の大きさ
27 / 29

第27話 6人目のお客様

しおりを挟む
 
 エマとスージーの発表は大成功だったらしい。
 2人は友達になり、今はクラスに仲間外れはいないという。

 わたしはというと。
 相変わらず、学校には行っていない。

 ちょっと自分の成長のなさにガッカリではあるけれど、行かない意味合いは、わたしの中で少しだけ変わった。

 魔法っていう学校よりも好きなことがあるから。だから、行かない。

 1人でいるこの部屋も、祭りの後のような肌寒さはなくなり、再び静かな快適空間に戻った。

 その他にも、少しだけ変わったことがある。
 エマとスージーが頻繁に遊びに来るようになった。

 なので、今のわたしは、友達のいるひきこもりにバージョンアップした。
 

 そんなことを考えながら魔法書をパラパラめくる。

 「素敵な夢をみる魔法」

 魔法陣を介して、相手の精神に干渉する魔法。基本は寝ている間の夢に介入する。だけれど、工程を加えれば、逆に相手を夢から引き剥がすこともできるように思う。
  
 夢はもうひとつの世界だ。そこを支配できるということは、悪用厳禁の凶悪魔法だなぁ。これは。

 

 カラン。
 店のドアが開いた。

 エマかな?

 立ち上がって覗くが、誰もいない。

 風?

 どこからか「にゃー」と聞こえる。
 カウンターから身を乗り出して覗き込むと、1匹のネコがいた。

 白と黒の薄茶の三毛猫だ。
 小柄でまんまるの瞳。
 口には煮干を咥えている。

 迷って入ってきてしまったのかな。

 「ここは、遊ぶところじゃないの」

 そう言ってわたしが近寄ると、ネコは、横をすり抜け居住スペースに入ってしまった。追いかけても、棚の上、机の下としなやかに飛び跳ね、縦横無尽に逃げ回る。

 あれ?
 どこにいった?

 見失ってしまった。
 わたしがウロウロしていると、さっきの猫が、ススッと体を擦るようにして、音もなくわたしの横を通り過ぎた。

 ん?
 何か咥えている。
 
 あれは……。

 例の厚手ブラじゃないか!!

 しかも、お母さんが「ソフィア」って刺繍してくれたんだ。あんなのを外で捨てられたら大変。

 「まってぇ!!」

 わたしは必死に追いかける。
 猫は、まるでわたしを先導するように、村の中をどんどん進んでいく。

 すると、ある家の前で止まった。

 壁はあちらこちらヒビ割れ、屋根も一部剥げ落ちている家。入り口には古びた看板がかかっている。看板の埃を吹き飛ばす。看板には「魔法屋」と書いてあった。

 人が手入れしている様子はない。
 廃墟なのかな。

 あぁ、そういえば、お母さんが前に言ってたっけ。
 昔、この村にも魔法屋があったって。

 ケホケホ……。
  埃があたり一面に舞い、目の前が見えない。

 猫は、そんなわたしを一瞥すると、トコトコと建物の中に入って行こうとする。

 「ちょっと待って……!!」

 猫はどんどん中に入っていく。
 わたしもその後を追う。

 一階のリビングを通り、奥の階段の裏。

 猫はそこに立ち止まると、こちらを向いて座った。

 「にゃー」

 何かを訴えるように、その場でブラを地面に落とした。
 わたしは駆け寄り、ブラを回収する。

 すると、ブラの下に何かある事に気づいた。
 埃を払うと、羊皮紙で覆われた古い本だった。
 背表紙には「動物と話せる魔法」と書いてある。
 
 リビングに戻ろうと身体を翻した時に柱の裏が視界に入った。
 柱の裏の一部に亀裂が入っていて、中からカサカサ音がする。

 え。なに?

 中を覗くと、中からシロアリが溢れ出てきた。

 「きゃっ」

 わたしは、ビックリして尻餅をついてしまった。
 それにしても情けない声だ。
 誰かに聞かれなくて良かった。

 わたしの尻餅のせいか、二階の床からギシリと物騒な音がする。床が振動し、家が揺れているのが分かる。

 ゾゾっと背筋に悪寒がはしる。
 今にも崩れそうだ。

 素人のわたしから見ても、ここは危険だ。
 早くここから出なければ。

 わたしが逃げ出そうと立ち上がった時。

 女性の声がした。
 
 「ミーケー。帰ってるのー?」

 ミケ?
 この猫のことかな。

 建物の入口から女性が入ってきた。

 歳はわたしと同じくらい。
 でも、身長は大きくて、切れ長な目の女の子。

 彼女は手を組むと言った。

 「あなたっ。人の家で勝手に何をしているの?」

 すると、猫は女の子のスカートの裾を噛み、ググっと外の方に引っ張る。

 「にゃー、にゃー」

 手を思いっきり開き、爪を立てて小さな体で必死に引っぱる。まんまるお目目が、潤んでいるように見えた。
 
 「にゃっ」

 しかし、必死の訴えも虚しく、体ごと引きずられると、仕舞いにはヒョイと持ち上げられてしまった。猫は、だらりと四肢を投げ出し、髭も寝てしまっている。しょんぼりしているように見えた。

 わたしは思った。
 
 『この子、この家が危ないって知らせたかったのかも』

 確かに、この家は危ない。
 わたしの勘もそう告げている。

 そういえば、前にお母さんが、純血の猫耳族には、猫の言葉がわかる人がいると言っていた。だから、きっとこの猫は、わたしにどうにかして欲しいと期待して店に来たのだろう。


 今回の依頼主は、この猫ちゃんかな。
 きっと、飼い主さんを助けて欲しいんだよね。

 分かったよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

処理中です...