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ウサギとカメのデットヒート
月姫 ウサギとカメのデットヒート③
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私は泉さんに送られて自宅へと帰ってきた。
「大丈夫? 困った事あった連絡するんだよ!」
彼女は帰りがけ、優しく声を掛けてくれた。
泉さんは本当の姉のようだ。
実姉よりもお姉ちゃんっぽく感じるのは不思議だけど……。
でも悪い気はしない。
彼女を見送ると親戚に連絡するために電話帳を開いた。
さすがに父の実家ぐらいには連絡しなければいけない。
私は久しぶりに父の実家に電話を掛ける事にした。
一年ぶりぐらいだろうか……。
翌日。父の実家から叔父が一人でやってきた。
思った通り祖父母は来ていない……。
「ルーちゃん大丈夫かー?」
叔父は以前と変わらない様子だ。
彼は当たり前のように玄関から私の家に上がり込む。
「叔父さん、ウチ来るの久しぶりだねー。おじいちゃんたち元気?」
「あぁ変わんねーよー。達者すぎて面倒くさいくらいだぁ」
そう言いながら叔父は照れ笑いを浮かべて頭を掻いた。
叔父はあまり父に似てはいなかった。
三○過ぎだというのに定職にも就かずフラフラ遊び回っている。
「しっかし兄貴もなー。ずっと連絡つかなかったけどまさかこんな事になってるとは思わんかったよ」
「私も刑事さんから聞いた時は驚いたよ……。まさか千葉で見つかると思わなかった……」
「だよなー。それで? 兄貴はいつ帰ってくるんだ? 葬式はしねーとあかんだろ?」
叔父は叔父なりに私の事を心配してくれているようだ。
彼はいい加減だけれど決して悪い人ではないのだ。
私は叔父と父の葬儀について簡単に話し合った。
「したらさー、喪主はルーちゃんか? あの馬鹿は帰ってこめー?」
「お姉には連絡してみるよ! 戻ってこれるようならあの人に喪主はお願いするつもりだし……」
「ヘカはやんねーと思うぞ? あいつ兄貴と仲悪かったし、きっと嫌がんじゃねーか?」
叔父は姉の事をよく理解している。
小さい頃から叔父は姉の事をよく可愛がっていた。
姉も叔父の事は好きなんだと思う。
良くも悪くも似たもの同士なのだ……。
二人とも口が悪いのはご愛嬌。
「でも……。一応あの人が京極家の長女だし、やっぱり私がやるのは違う気がするよ……」
「ルーちゃんがそう思うんならそうしたら良いよ……。なんかあいつバンドで飯食ってるらしいなー。ヘカらしいけどよー」
叔父はそう言うと無精髭を弄りながら嬉しそうに笑った――。
その日のうちに姉と葬儀日程の相談をした。
叔父の予想とは裏腹に、彼女は喪主の件を一つ返事で了解してくれた。
以前の姉なら父の葬儀にさえ来なかったと思う。
やはり彼女も大人になったのだろう。
どうにかスケジュールを調整して実家に戻って来てくれるようだ。
「あー、ルーちゃん悪いー! ちょっと一万だけ貸してくんねーか?」
「お金? なんに使うの?」
「いや……。なんだ……。今金欠でさー、どうにか今日中には返すから」
叔父は濁したような言い方で一万円の使い道を答えようとはしない。
「貸すのは良いけどさぁ、どうせパチンコでしょ?」
「うっ!!」
図星だったようだ。
叔父は昔から本当にお金にだらしないのだ。
昔ギャンブルで大きな借金を作り、祖父母にかなりの迷惑を掛けた事があるらしい。
ギャンブルに弱いクセに止められない典型的なダメ人間……。
「な! いーだろ? ちゃんと勝って倍返しすっからさー」
「はぁ……。遂に姪にまで借金するんだ……。ねぇ? 叔父さんもそろそろ真面目に働いた方が良いと思うよ?」
「お前までうるさい事言うなよー! 親じゃあるめーし!」
いい加減にして欲しい。
私だってそんなに収入がある訳じゃないんだ。
「……。一万は貸せないかな……。これでも生活ギリギリだしね……。それにさぁ」
「それに? 何だよ?」
「私は回収出来ない投資はしない事にしてんだよ! どうせ一万貸したってすぐに溶かして終わりじゃん?」
「大丈夫だって! 絶対勝つから! 今日はそんな予感がするんだ!」
私はそろそろウンザリしていた。そして思い出した。
そうだ……。叔父はこういう人だった。
お金にだらしなくて、女たらしで、遊び人で、お人好しで……。
「わかったよ……。でも一万は貸せない! 五千円貸したげるからちゃんと返してね!」
私はそう言うと財布から五千円札を取り出して叔父に手渡した。
「悪い! 恩に着るよー! まぁ見てろ! 倍以上に増やして返してやっから!」
「はいはい! 期待しないで待ってるよ!」
「期待しろよー! 俺は今まさに誇り高き錬金術師だ! この五千円を黄金に換えてくるぞー」
誇り高き錬金術師……。
本当に馬鹿みたいだ――。
その日は夕方まで掛かって葬儀の段取りを組んだ。
父の知人や私の友人にも連絡する。
姉とも小まめに連絡を取り合いながら葬儀の準備を進めた。
幸いな事に葬儀費用の一部は祖父母の実家で負担してくれるようだ。
祖父母もさすがに自分の息子の葬儀ぐらいは手助けしたいのだろう……。
「ただいまー」
誇り高き錬金術師の帰還。
「お帰りなさい。ずいぶんと掛かったねー! 五千円じゃ大して遊べなかったでしょ?」
「おいおいルーちゃん! 負け前提で話すんなよ?」
叔父はそう言うとビニール袋いっぱいに入ったお菓子と飲み物をテーブルの上に置いた。
「え? まさか勝ったの?」
「へへっ! 大勝ちしたよ! こいつは春から縁起が良い!」
叔父は財布にびっしりと入った万札を取り出して私に見せた。
「すごい! 叔父さんがパチンコで勝ったの初めて見たよ」
「ルーちゃんは知んねーからそう言うんだよー。ヘカが高校ん時はよく一緒に行ってたけど割と勝ってたんだぞ?」
「……。ツッコミどころが沢山あるけど……。まぁいいや、とりあえず良かったね」
「サンキュー、これも賢明な姪のお陰だよ! あ、金返すよ!」
叔父はそう言うと万札を適当な枚数掴んで私に手渡した。
「え……。いいよこんなに……」
「いーから貰っとけ! 泡銭だし気にすんなー」
叔父は上機嫌に言うとタバコに火を付けた……。
「大丈夫? 困った事あった連絡するんだよ!」
彼女は帰りがけ、優しく声を掛けてくれた。
泉さんは本当の姉のようだ。
実姉よりもお姉ちゃんっぽく感じるのは不思議だけど……。
でも悪い気はしない。
彼女を見送ると親戚に連絡するために電話帳を開いた。
さすがに父の実家ぐらいには連絡しなければいけない。
私は久しぶりに父の実家に電話を掛ける事にした。
一年ぶりぐらいだろうか……。
翌日。父の実家から叔父が一人でやってきた。
思った通り祖父母は来ていない……。
「ルーちゃん大丈夫かー?」
叔父は以前と変わらない様子だ。
彼は当たり前のように玄関から私の家に上がり込む。
「叔父さん、ウチ来るの久しぶりだねー。おじいちゃんたち元気?」
「あぁ変わんねーよー。達者すぎて面倒くさいくらいだぁ」
そう言いながら叔父は照れ笑いを浮かべて頭を掻いた。
叔父はあまり父に似てはいなかった。
三○過ぎだというのに定職にも就かずフラフラ遊び回っている。
「しっかし兄貴もなー。ずっと連絡つかなかったけどまさかこんな事になってるとは思わんかったよ」
「私も刑事さんから聞いた時は驚いたよ……。まさか千葉で見つかると思わなかった……」
「だよなー。それで? 兄貴はいつ帰ってくるんだ? 葬式はしねーとあかんだろ?」
叔父は叔父なりに私の事を心配してくれているようだ。
彼はいい加減だけれど決して悪い人ではないのだ。
私は叔父と父の葬儀について簡単に話し合った。
「したらさー、喪主はルーちゃんか? あの馬鹿は帰ってこめー?」
「お姉には連絡してみるよ! 戻ってこれるようならあの人に喪主はお願いするつもりだし……」
「ヘカはやんねーと思うぞ? あいつ兄貴と仲悪かったし、きっと嫌がんじゃねーか?」
叔父は姉の事をよく理解している。
小さい頃から叔父は姉の事をよく可愛がっていた。
姉も叔父の事は好きなんだと思う。
良くも悪くも似たもの同士なのだ……。
二人とも口が悪いのはご愛嬌。
「でも……。一応あの人が京極家の長女だし、やっぱり私がやるのは違う気がするよ……」
「ルーちゃんがそう思うんならそうしたら良いよ……。なんかあいつバンドで飯食ってるらしいなー。ヘカらしいけどよー」
叔父はそう言うと無精髭を弄りながら嬉しそうに笑った――。
その日のうちに姉と葬儀日程の相談をした。
叔父の予想とは裏腹に、彼女は喪主の件を一つ返事で了解してくれた。
以前の姉なら父の葬儀にさえ来なかったと思う。
やはり彼女も大人になったのだろう。
どうにかスケジュールを調整して実家に戻って来てくれるようだ。
「あー、ルーちゃん悪いー! ちょっと一万だけ貸してくんねーか?」
「お金? なんに使うの?」
「いや……。なんだ……。今金欠でさー、どうにか今日中には返すから」
叔父は濁したような言い方で一万円の使い道を答えようとはしない。
「貸すのは良いけどさぁ、どうせパチンコでしょ?」
「うっ!!」
図星だったようだ。
叔父は昔から本当にお金にだらしないのだ。
昔ギャンブルで大きな借金を作り、祖父母にかなりの迷惑を掛けた事があるらしい。
ギャンブルに弱いクセに止められない典型的なダメ人間……。
「な! いーだろ? ちゃんと勝って倍返しすっからさー」
「はぁ……。遂に姪にまで借金するんだ……。ねぇ? 叔父さんもそろそろ真面目に働いた方が良いと思うよ?」
「お前までうるさい事言うなよー! 親じゃあるめーし!」
いい加減にして欲しい。
私だってそんなに収入がある訳じゃないんだ。
「……。一万は貸せないかな……。これでも生活ギリギリだしね……。それにさぁ」
「それに? 何だよ?」
「私は回収出来ない投資はしない事にしてんだよ! どうせ一万貸したってすぐに溶かして終わりじゃん?」
「大丈夫だって! 絶対勝つから! 今日はそんな予感がするんだ!」
私はそろそろウンザリしていた。そして思い出した。
そうだ……。叔父はこういう人だった。
お金にだらしなくて、女たらしで、遊び人で、お人好しで……。
「わかったよ……。でも一万は貸せない! 五千円貸したげるからちゃんと返してね!」
私はそう言うと財布から五千円札を取り出して叔父に手渡した。
「悪い! 恩に着るよー! まぁ見てろ! 倍以上に増やして返してやっから!」
「はいはい! 期待しないで待ってるよ!」
「期待しろよー! 俺は今まさに誇り高き錬金術師だ! この五千円を黄金に換えてくるぞー」
誇り高き錬金術師……。
本当に馬鹿みたいだ――。
その日は夕方まで掛かって葬儀の段取りを組んだ。
父の知人や私の友人にも連絡する。
姉とも小まめに連絡を取り合いながら葬儀の準備を進めた。
幸いな事に葬儀費用の一部は祖父母の実家で負担してくれるようだ。
祖父母もさすがに自分の息子の葬儀ぐらいは手助けしたいのだろう……。
「ただいまー」
誇り高き錬金術師の帰還。
「お帰りなさい。ずいぶんと掛かったねー! 五千円じゃ大して遊べなかったでしょ?」
「おいおいルーちゃん! 負け前提で話すんなよ?」
叔父はそう言うとビニール袋いっぱいに入ったお菓子と飲み物をテーブルの上に置いた。
「え? まさか勝ったの?」
「へへっ! 大勝ちしたよ! こいつは春から縁起が良い!」
叔父は財布にびっしりと入った万札を取り出して私に見せた。
「すごい! 叔父さんがパチンコで勝ったの初めて見たよ」
「ルーちゃんは知んねーからそう言うんだよー。ヘカが高校ん時はよく一緒に行ってたけど割と勝ってたんだぞ?」
「……。ツッコミどころが沢山あるけど……。まぁいいや、とりあえず良かったね」
「サンキュー、これも賢明な姪のお陰だよ! あ、金返すよ!」
叔父はそう言うと万札を適当な枚数掴んで私に手渡した。
「え……。いいよこんなに……」
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