純文学のブックマーク ~栞と五人の文芸部員~

海獺屋ぼの

文字の大きさ
44 / 64
第二章 ニコタマ文芸部

29

しおりを挟む
 翌日。学校に行くと予期せぬ事態に出くわした。重そうなカメラ、『PRESS』と書かれた腕章。お世辞にもお行儀が良いとは言いがたい態度。そんな集団が校門を占拠していたのだ。
「二子玉川高校の生徒さんですか?」
「は、はい……」
「私、西都新聞の堤と申します。少し話を聞かせていただいても……」
 彼女はそう言うと白くて厚みのある名刺を差し出した。私はそれを反射的に受け取る。
「御堂火憐さんという生徒さんはそちらに……」
 彼女がそう言いかけると校門に学年主任が走り寄ってきた。
「ちょっとあんたら! 生徒たちに絡まないで! ほら! 君も相手しないでいいから」
 学年主任は息を乱しながら言うと私の腕を引っ張った。
「あんたらは授業の邪魔だ! あんまりしつこいと警察呼ぶぞ!」
 酷い言葉が響き渡る。まぁ、昨日も聞いた気がするけれど――。

「おはよう栞。あんたも絡まれた?」
 教室に着くと眠そうな顔をした楓子に声を掛けられた。徹夜明けなのか目の下には濃いクマがある。
「おはよう。うん、楓子ちゃんも?」
「ああ、絡まれたよ……。ってか手当たり次第って感じだったしさ」
 どうやら私たちだけではないらしい。クラスメイトの大半はマスコミに絡まれたようだ。
「なんだろうね? なんか御堂さんがどうとかって……」
「……。たぶん昨日の件だと思うよ? どっから漏れたのか知らないけどカンニングねつ造をマスコミにチクった奴がいるんだと思う。
「そう……。だよね。やっぱり村田先生かな?」
「うーん……。どうだろ? 村田先生はそんなことしないとは思うけど」
 正直な話。これだけマスコミが来た理由は彼以外ありえないと思った。文芸部の誰かがリークするはずがないし、学校側がわざわざ自分たちの不祥事を宣伝するわけもないのだ。
「謎だよね……」
「うん……。まぁ、どっちにしても誰かがマスコミにチクったのは間違いないよね」
 一体誰が? そんな疑問が解決したのは放課後のことだ――。

 その日の授業は一限を除いて普段通り行われた。一限だけは強制的に自習だったけれどそれだけ。他に変わったことがあったとすれば体育の授業が体育館に変わったことぐらいだろう。
「川村さん、篠田さんお疲れ」
 部室に着くと先に浩樹が来ていた。昨日と違って髪の毛が短くサッパリしている。
「お疲れ様! 髪切った?」
「うん。暑くなってきたからね」
 浩樹の短髪。それは季節の風物詩みたいなものだ。彼は年間でこの時期だけかなり短髪にするのだ。彼が短髪になると蝉が鳴き出す。そんな風にさえ思う。
「川村さんたちも新聞記者に絡まれた?」
「うん。浩樹くんも?」
「ああ、いやマジでめんどかったよ……。御堂さんなんか裏口から入ったんだよ? まぁ、当事者だから仕方ないけどさ」
 浩樹はやれやれといった感じで軽いため息を吐いた。昨日の今日で疲れているのか、いつもより猫背に見える。
「そういえば水貴くんと御堂さんは?」
「ああ、水貴はいつものだよ。御堂さんは……。もうすぐ来ると思うよ」
「そっか……」
 いつもの。今日も水貴は来ないらしい。
「水貴くんのお母さん相変わらず? 最近ちょっと多くない?」
 バッグから画材を取り出すと楓子がそう尋ねた。
「うーん……。あんまり具合は良くないらしいね……。俺もあんまりツッコんでないけど、良くはないんだと思う……」
「瀬戸くんさぁ。さすがに知らんぷりにも限界があるよ……。そろそろ水貴くんに聞かなきゃさ」
 楓子にしては珍しい。思えば高校に進学してから彼女の口数は増えたように感じる。
「ああ、そうだね。それはそうと……」
 浩樹はバツが悪くなったのか話を切り替える。
「分かったんだよ。今回誰がマスコミにリークしたか! まったく迷惑な話だけどさ……」
「え!? 誰なの?」
 私は思わず大きな声を上げた。
「ほら、ウチのクラスの中原だよ。あいつ何考えてるか分からない奴だったけどまさかこんなことするとはね……」
 浩樹曰く、中原くんはマスコミへのリークをあっさり自供したらしい。それこそ「言ったのは僕だよ」くらいの軽いノリだったとか。
「でもなんで? 中原くん、カンニングねつ造が嫌だったの?」
「うーん……。正直分かんないかな……。あいつって本当によくわかんない奴だからさぁ」
 そう言うと浩樹は心底うんざりしたような顔で首を横に振った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密

まさき
青春
 俺は今、東大院生の実験対象になっている。  ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。  「家庭教師です。住まわせてください」  突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。  桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。  偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。  咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。  距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。  「データじゃなくて、私がそう思っています」  嘘をついているような顔じゃなかった。  偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。  不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

処理中です...