純文学のブックマーク ~栞と五人の文芸部員~

海獺屋ぼの

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第二章 ニコタマ文芸部

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 日がすっかり沈んだ。日が延びたせいでまだ薄明るい。紺色の空にうっすらと星が浮かんでいる。残念ながら東京の汚れた空からでは天の川は見えない。
「中原くんどこだろ?」
 私は辺りを見渡した。校庭を照らす照明とマスコミが用意した撮影機材の明かりだけ歪に光っている。
「えーとね……。神社口にいるって……」
「はぁ……。あそこ蚊がいるからあんまり行きたくないんだけどさぁ」
 浩樹はうんざりしたように首を横に振る。まぁ、私も同じだけれど。
 私の通う高校には正規の入り口意外に抜け道があった。誰が名付けたか知らないけれどそこは『神社口』と呼ばれている。ちなみにその入り口には神社は存在しない。
「なんでここって神社口って呼ばれるんだろうね?」
「さぁ? それが誰に聞いてもわからないんだよ。俺も入学してから先輩に聞いたけど誰も知らないんだ」
 名は体を表さない。そんなことがあるだろうか?
 『神社口』はうっそうとした雑木林に囲まれていた。そもそも正規の入り口ではないので、どちらかと言えば獣道に近いと思う。
「やぁ」
 暗闇から声が聞こえた。
「あ!」
 私たちは声がした方に目をやる。
「悪いね。呼び出して……。じゃあ行こうか? 正門はマスコミ連中いるからさ……」
 私たちは中原くんに言われるまま、『神社口』に入った。予想していた通りの雑木林で顔や髪に枝が当たる。
「おい、中原……。用事ってなんだよ?」
「ちょっとね。御堂さんのことでやりたいことがあってさ」
 浩樹の声は明らかに不機嫌だ。中原くんは意に介していないけれど。
「そういえばなんでここが『神社口』なのか知ってるかい?」
 中原くんは突拍子もなく話題を変えた。
「わかんない……」
 私は暗闇で呟くと反射的に首を横に振った。振ったせいで枝が頬に当たる。
「おい中原……。そんなことよりこれからどこ行くんだよ?」
 浩樹はさっきより不機嫌な口調になる。
「昔ね。二子玉川高校がある場所には神社があったんだ」
 浩樹のことを無視すると中原くんは話し始めた。
「それで?」
「うん。それでね。そこの神社には土着の神様……。あ、簡単に言うとその土地で昔から信仰されてた神様ね。が祀られてたらしいんだよね。でね。その神様はすごくやっかいな神様だったらしいんだ」
 彼は一体何の話をしているのだろう? 文芸部全員がそう思ったと思う。でも私たちは話を遮らずに続きを促した。
「祟りなんてものがあるとは思えないけど、祟ったらしいんだ。嘘か本当か、GHQの進駐軍も祟り殺されたらしいよ。ま、眉唾だけどね」
 GHQ……。なんでそんなこと知っているのだろう? 私はそう思った。
「なんでそんなこと知ってるの?」
 私が思うのと同時に楓子が中原くんに尋ねた。
「歴史調べるの好きでね。特に民俗学は好きなんだ……。でね。しばらくはその土地に誰も手を出さなかったわけだけど、あるとき高校を作る話になったんだ。まぁ、結果見ればこうして高校が出来たわけだけど」
 中原くんはそこまで話すと深いため息を吐いた。
「……っていうのが今まで調べたことね。まだ核心に触れてないけど面白そうじゃない?」
 暗闇で中原くんの白い歯だけが光るのが見えた。
「あのなぁ中原……。そんな話はいいから……」
「ああ、すまないね。でもどうやら無事に出られたみたいだ」
 そう言われて初めて気がついた。既に雑木林から通学路に出ている。
「じゃあ、ファミレスでも行こうか?」
 中原くんはそう言うと上機嫌に笑った。
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