170 / 176
第十二章 航空自衛隊 百里基地
10
しおりを挟む
採寸が終わって少しすると香澄さんは帰った。どうやら彼女は幕張に帰ったらすぐに私の衣装の仕立てを始めるようだ。来週から私がその衣装を着るのだから当然といえば当然なのだけれど。
「あの子もいい子ねぇ。コレ見てよ」
母はそう言うと香澄さんの持ってきた手土産の袋からお菓子と和柄の化粧ポーチを取り出した。その化粧ポーチはまるで成人式の振り袖みたいな見た目をしていた。地味すぎず派手すぎず。そんな彼女のセンスそのものみたいな柄に見える。
「何か気を遣わせちゃったみたいだね……」
私は化粧ポーチを母から受け取るとその手触りを確かめるみたいに軽く撫でてみた。さわり心地は思いのほかざらざらと指先に引っかかる。どうやらこれは普通の生地ではないようだ。
「それきっと正絹よ」
「しょうけん?」
「そう。上質な絹……。まぁシルク製ってことね」
母はそう言うと私に化粧ポーチを返すように催促した。私はそのまま化粧ポーチを母に返す。
「買ったら結構高いんじゃないかな? 知ってるでしょ? 絹って物によっては車より高いんだから」
それから母はその化粧ポーチを点検するみたいにジッパーを開けて、中の仕切りに指を滑り込ませた。そして「ん?」と少し驚いたような声を出すと中から折りたたまれたピンク色の便せんを取り出す。
「何か入ってるね」
母はそう言うとその便せんを広げた。そして一通り目を通すとそれを私に差し出す。
「何?」
「いいから見てみなさい」
私は母に促されるまま便せんを受け取るとその中身に目を通した。そこには『聖那さんのお母様へ 化粧ポーチ作ってみました。拙い品ですが良ければ使ってください』と書かれていた。実に香澄さんらしい実直な手紙だ。必要以上のことはしない。そんな彼女の人柄が表れているように感じる。
「鹿島さんって……。なんか奥ゆかしい子ね」
不意に母がそう呟いた。私はそれに対して「だね」と軽く返した。実際、香澄さんはかなり奥ゆかしい女の子なのだ。大和撫子を絵に描いたような少女。素直にそう思う。
「……本当にエレメンタルの子たちってみんないい子だよね。香取さんは礼儀正しいし、春日さんも地頭良さそうな子よね」
母はそう言うと化粧ポーチをソッとキャビネットの中にしまった。……って待って待って! お母さん今何て言った? エレメンタルの子たちって言わなかった? なんでそのこと知ってるの……。と私は二秒ほど混乱した。
どう思い返しても母に魔法少女のことは愚かアルバイト先の名前さえ教えた覚えがないのだ。まぁ……。その口ぶりから察するに母は何もかも知ってるみたいだったのだけれど。
「あの子もいい子ねぇ。コレ見てよ」
母はそう言うと香澄さんの持ってきた手土産の袋からお菓子と和柄の化粧ポーチを取り出した。その化粧ポーチはまるで成人式の振り袖みたいな見た目をしていた。地味すぎず派手すぎず。そんな彼女のセンスそのものみたいな柄に見える。
「何か気を遣わせちゃったみたいだね……」
私は化粧ポーチを母から受け取るとその手触りを確かめるみたいに軽く撫でてみた。さわり心地は思いのほかざらざらと指先に引っかかる。どうやらこれは普通の生地ではないようだ。
「それきっと正絹よ」
「しょうけん?」
「そう。上質な絹……。まぁシルク製ってことね」
母はそう言うと私に化粧ポーチを返すように催促した。私はそのまま化粧ポーチを母に返す。
「買ったら結構高いんじゃないかな? 知ってるでしょ? 絹って物によっては車より高いんだから」
それから母はその化粧ポーチを点検するみたいにジッパーを開けて、中の仕切りに指を滑り込ませた。そして「ん?」と少し驚いたような声を出すと中から折りたたまれたピンク色の便せんを取り出す。
「何か入ってるね」
母はそう言うとその便せんを広げた。そして一通り目を通すとそれを私に差し出す。
「何?」
「いいから見てみなさい」
私は母に促されるまま便せんを受け取るとその中身に目を通した。そこには『聖那さんのお母様へ 化粧ポーチ作ってみました。拙い品ですが良ければ使ってください』と書かれていた。実に香澄さんらしい実直な手紙だ。必要以上のことはしない。そんな彼女の人柄が表れているように感じる。
「鹿島さんって……。なんか奥ゆかしい子ね」
不意に母がそう呟いた。私はそれに対して「だね」と軽く返した。実際、香澄さんはかなり奥ゆかしい女の子なのだ。大和撫子を絵に描いたような少女。素直にそう思う。
「……本当にエレメンタルの子たちってみんないい子だよね。香取さんは礼儀正しいし、春日さんも地頭良さそうな子よね」
母はそう言うと化粧ポーチをソッとキャビネットの中にしまった。……って待って待って! お母さん今何て言った? エレメンタルの子たちって言わなかった? なんでそのこと知ってるの……。と私は二秒ほど混乱した。
どう思い返しても母に魔法少女のことは愚かアルバイト先の名前さえ教えた覚えがないのだ。まぁ……。その口ぶりから察するに母は何もかも知ってるみたいだったのだけれど。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる