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29話
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「え、は?! え……え!?」
一度も染めたことがない真っ黒だった髪色が、赤茶色に変わっていたのだ。長いクセ毛はそのまま伸ばされていたが、思ったよりもぐちゃぐちゃでない。
「あ、髪の手入れはさせてもらっていたぜ」
それに気づいたのか、アシルがそう答えた。
手入れをしてもらったからか、癖はあるものの艶があって、毛が絡まることもなくサラサラとしている。とても自分のものとは思えなかった。
「め、目の色も……」
「あ、やっぱり変わっていたか。この世界に来る直前は茶色い目の色をしていたもんな」
アシルの言う通り、自分の目の色は濃い茶色であった。
それが、鏡に映る今の自分の目の色は青色で……空の色というより、夜の海の色というか。スカイブルーというより、インディゴブルーという感じだ。
自分の姿など見ても何も得るものなどないと思っていたので関心はなかったが、髪を結ぶためや、社会人になったらメイクをするために、どうしても見ざるを得なかった。
思い入れはないはずだが、見慣れていた自分の姿がこう変わっていると、どうにも落ち着かない。
まるで違う人間の身体を乗っ取っているような、そんな罪悪感が芽生えている。
「……落ち着かないか?」
アシルは、ルミナスの気持ちを慮るような声色で問いかけてきた。
正直、落ち着かない。
(こんな髪型や目の色で会社に行ったら、どんな冷ややかな目で見られるか……)
悩みの種は常にそれだ。
だがアシルは、ここは異世界で、ルミナスが行っていた会社はこの世界にはないのだと言った。
「……本当なの?」
「ん?」
「本当に、この世界には、私の勤め先の会社はないの……?」
「あぁ、本当だ」
けろっとした口調でそう返され、絶望する。
落ち込んだ様子のルミナスを心配したようで、今しがた軽快な口調で答えたアシルの声が不安そうなものへと変わっていく。
「ど、どうした?」
「……つまり、私は失業したということなの?」
「この世界で再就職探せば良いんじゃないか?」
「あ、ああ、アシルは、アシルは私がどんなに出来が悪いか、知らないの! 今の会社だってやっとやっと、やっとのことでようやく就職出来たの! それなのに、簡単に言わないで!!」
叫んでから、我に返った。
あまりにもお気楽な回答をされたから、ついカッとなり、感情のままに叫んでしまった。
恥ずかしさでうつむくルミナスの頭を、先ほど気圧された様子を見せていたアシルの手が優しく撫でた。
「わ、わるかった……。じゃあ、そんなに無理して働かなくても良いんだぜ」
「ッッッ……!!」
また逆上しそうになってしまった気持ちを、深呼吸して必死に抑えた。
「?」
また怒鳴ろうとして声を上げた時、何がルミナスの心を乱しているのかわからないといった表情のアシルと目が合った。
そのバイオレットの瞳を眺めているうちに、なんとか落ち着くことが出来た。
「デリカシー……」
サーナは呆れたように頭を抑えながら、頭を振った。
「???」
より一層分からないというように、アシルは首をひねる。
「……ルミナス、怒らせたのは悪かった。でも、今のどこに怒ったのか言ってもらえると助かる。オレは、サーナが言うように、他人が言おうとすることを汲み取るのが苦手なんだ。お前のことなら分かると思っていたが、どうもそうでもないみたいだし」
困ったように眉尻を下げてそう乞うアシルに、もしかしたら自分は言葉足らずであったかもしれないと反省した。
「私こそ、ごめんなさい、勝手に怒って。ただ、働かないと住む場所もないし、着るものも食べる物も買えないし……公共料金も払わないといけないの。そうでないと生きていけないの。この世界がどういうところか全然わからないけど、最低限食べる物とか住む場所にはお金がかかると思うんだけど」
「まあ、自分で狩るとかでないなら、飯代は基本かかるな」
「住む場所は?」
「金が必要だな」
「だよね?」
「だから、ここに住めば良いって言ってんだよ。っていうか、ここで暮らせ、オレと一緒に」
「そうだよね! ……ん??」
一度も染めたことがない真っ黒だった髪色が、赤茶色に変わっていたのだ。長いクセ毛はそのまま伸ばされていたが、思ったよりもぐちゃぐちゃでない。
「あ、髪の手入れはさせてもらっていたぜ」
それに気づいたのか、アシルがそう答えた。
手入れをしてもらったからか、癖はあるものの艶があって、毛が絡まることもなくサラサラとしている。とても自分のものとは思えなかった。
「め、目の色も……」
「あ、やっぱり変わっていたか。この世界に来る直前は茶色い目の色をしていたもんな」
アシルの言う通り、自分の目の色は濃い茶色であった。
それが、鏡に映る今の自分の目の色は青色で……空の色というより、夜の海の色というか。スカイブルーというより、インディゴブルーという感じだ。
自分の姿など見ても何も得るものなどないと思っていたので関心はなかったが、髪を結ぶためや、社会人になったらメイクをするために、どうしても見ざるを得なかった。
思い入れはないはずだが、見慣れていた自分の姿がこう変わっていると、どうにも落ち着かない。
まるで違う人間の身体を乗っ取っているような、そんな罪悪感が芽生えている。
「……落ち着かないか?」
アシルは、ルミナスの気持ちを慮るような声色で問いかけてきた。
正直、落ち着かない。
(こんな髪型や目の色で会社に行ったら、どんな冷ややかな目で見られるか……)
悩みの種は常にそれだ。
だがアシルは、ここは異世界で、ルミナスが行っていた会社はこの世界にはないのだと言った。
「……本当なの?」
「ん?」
「本当に、この世界には、私の勤め先の会社はないの……?」
「あぁ、本当だ」
けろっとした口調でそう返され、絶望する。
落ち込んだ様子のルミナスを心配したようで、今しがた軽快な口調で答えたアシルの声が不安そうなものへと変わっていく。
「ど、どうした?」
「……つまり、私は失業したということなの?」
「この世界で再就職探せば良いんじゃないか?」
「あ、ああ、アシルは、アシルは私がどんなに出来が悪いか、知らないの! 今の会社だってやっとやっと、やっとのことでようやく就職出来たの! それなのに、簡単に言わないで!!」
叫んでから、我に返った。
あまりにもお気楽な回答をされたから、ついカッとなり、感情のままに叫んでしまった。
恥ずかしさでうつむくルミナスの頭を、先ほど気圧された様子を見せていたアシルの手が優しく撫でた。
「わ、わるかった……。じゃあ、そんなに無理して働かなくても良いんだぜ」
「ッッッ……!!」
また逆上しそうになってしまった気持ちを、深呼吸して必死に抑えた。
「?」
また怒鳴ろうとして声を上げた時、何がルミナスの心を乱しているのかわからないといった表情のアシルと目が合った。
そのバイオレットの瞳を眺めているうちに、なんとか落ち着くことが出来た。
「デリカシー……」
サーナは呆れたように頭を抑えながら、頭を振った。
「???」
より一層分からないというように、アシルは首をひねる。
「……ルミナス、怒らせたのは悪かった。でも、今のどこに怒ったのか言ってもらえると助かる。オレは、サーナが言うように、他人が言おうとすることを汲み取るのが苦手なんだ。お前のことなら分かると思っていたが、どうもそうでもないみたいだし」
困ったように眉尻を下げてそう乞うアシルに、もしかしたら自分は言葉足らずであったかもしれないと反省した。
「私こそ、ごめんなさい、勝手に怒って。ただ、働かないと住む場所もないし、着るものも食べる物も買えないし……公共料金も払わないといけないの。そうでないと生きていけないの。この世界がどういうところか全然わからないけど、最低限食べる物とか住む場所にはお金がかかると思うんだけど」
「まあ、自分で狩るとかでないなら、飯代は基本かかるな」
「住む場所は?」
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「だよね?」
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「そうだよね! ……ん??」
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