平民に扮した公爵さまの甘い愛に蕩かされる令嬢の話

rifa

文字の大きさ
16 / 27

16

しおりを挟む
 だからミレーは頭を振った。
「私は、貴族なんてあまりいいものだとは思わないわ。……うちの家族がそうだったからだけど、私はこの歳になるまで社交界の場にも出たことが無くて……貴族の全員がそうだとは思わないけれど、今更貴族でありたいなんて思いもしないわ」
「……そ、そうか」
「だから安心して。私は、グランと一緒にいるから。……18になっても何も知らない元令嬢だけど、あなただけに頼りきりの生活にしないから。私にやれることはなんでもやるし、出来ないことも出来るように努力します」
「いや、オレがミレーを支えるから、そんな無理はしなくていい!」
「いや! 私もなにかしたい! 自由にしていいって言われたし……!」
 そう言うとグランはグッと喉を詰まらせたように黙った。
「そうだけど……」
 彼は不満そうにそう漏らすが、彼のお言葉をありがたく頂戴したまでだ。
「……ミレーは、貴族と平民が結婚できないって、聞いたことないか?」
「あるわ。でも大丈夫。……私がキズモノになったってお父様たちが知れば、そんな家門の恥だって喜々として私との縁を切ると思うの。……そうしたら、まぁ、手続きは少し大変かもだけど、私は平民になることが出来るはずだから」
「キズモノって……嘘をつくのか?」
「……嘘じゃなく、してほしい」
 ミレーはグランの手を握って少し顔を上げ、自分よりやや背の高い彼の顔を見据えた。
「私を、抱いて。……私の初めてをあなたに奪ってほしい。あなたの手で、私をキズモノにして?」
「……ミレー」
 グランは顔を赤くしながら目を細め、うっとりとしたような表情をする。
「あなたにキズモノにされるのなら本望だから」
 そう告げると、グランはミレーの身体を強く抱きしめた。
「あっ……」
 彼の身体は厚みがあって、力強くて、強く抱きしめられると自分の骨が軋むようで……。
 少し痛みを感じるが、相手がグランなら耐えられる、と考えていた。
 しかしグランは、すぐに身体を引き離した。
「……今はダメだ」
「! な、なんで……?」
 グランも自分と同じ気持ちだと思っていた。それを拒否されて、揺らがなかった気持ちが不安で揺らぎそうになった時、グランがミレーの手首を軽く掴み上げて言った。
「あのなぁ、オレが少し力を入れただけで全身複雑骨折しそうなミレーを、本気で抱きつぶせるわけがないだろう!」
「が、頑張るから……!」
「頑張ったって折れるもんは折れるんだよ。……お前の身体をそんな風に傷つけたいとは思わない。だから、せめてまず骨が折れない程度に飯を食って太れ。……そうして、ちょっと本気で抱きしめても痛いと思わなくなったら、抱かせてくれ」
「それって、いつ……?」
「……ミレー次第、かな」
「じゃあ……!」
 頑張ってたくさん食べる、と言うのを読まれていたようで、グランがミレーの唇に人差し指を当てた。
「無理はすんな」
「…………」
 しゅんと落ち込んでしまうミレーの唇に、グランがまた軽いキスをしてくれた。
「大丈夫だって、そんなに焦るな。とりあえずミレーの家族は、ミレーがここにいるとは思わない。行方知れずになったってことにして、元気になるまでここで暮らせ。……その間の滞在費と生活費は、こうやって毎日キスしてくれるだけで良いから」
「キスだけで良いの?」
「……あ、あとは自分で……ちょ、自分でやるからっつってんだろ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

歳の差を気にして去ろうとした私は夫の本気を思い知らされる

紬あおい
恋愛
政略結婚の私達は、白い結婚から離縁に至ると思っていた。 しかし、そんな私にお怒りモードの歳下の夫は、本気で私を籠絡する。

【完結】 初恋を終わらせたら、何故か攫われて溺愛されました

紬あおい
恋愛
姉の恋人に片思いをして10年目。 突然の婚約発表で、自分だけが知らなかった事実を突き付けられたサラーシュ。 悲しむ間もなく攫われて、溺愛されるお話。

【完結】 君を愛せないと言われたので「あーそーですか」とやり過ごしてみたら執着されたんですが!?

紬あおい
恋愛
誰が見ても家格の釣り合わない婚約者同士。 「君を愛せない」と宣言されたので、適当に「あーそーですか」とやり過ごしてみたら…? 眉目秀麗な筈のレリウスが、実は執着溺愛男子で、あまりのギャップに気持ちが追い付かない平凡なリリンス。 そんな2人が心を通わせ、無事に結婚出来るのか?

【完結】 女に弄ばれた夫が妻を溺愛するまで

紬あおい
恋愛
亡き兄の恋人を愛し、二年後に側室に迎えようと政略結婚をした男。 それを知りつつ夫を愛し、捨てられないように公爵夫人の地位を確立しようと執務に励む女。 そんな二人が心を通わせるまでのお話。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

婚約破棄までの168時間 悪役令嬢は断罪を回避したいだけなのに、無関心王子が突然溺愛してきて困惑しています

みゅー
恋愛
アレクサンドラ・デュカス公爵令嬢は舞踏会で、ある男爵令嬢から突然『悪役令嬢』として断罪されてしまう。 そして身に覚えのない罪を着せられ、婚約者である王太子殿下には婚約の破棄を言い渡された。 それでもアレクサンドラは、いつか無実を証明できる日が来ると信じて屈辱に耐えていた。 だが、無情にもそれを証明するまもなく男爵令嬢の手にかかり最悪の最期を迎えることになった。 ところが目覚めると自室のベッドの上におり、断罪されたはずの舞踏会から1週間前に戻っていた。 アレクサンドラにとって断罪される日まではたったの一週間しか残されていない。   こうして、その一週間でアレクサンドラは自身の身の潔白を証明するため奮闘することになるのだが……。 甘めな話になるのは20話以降です。

【10話完結】 忘れ薬 〜忘れた筈のあの人は全身全霊をかけて私を取り戻しにきた〜

紬あおい
恋愛
愛する人のことを忘れられる薬。 絶望の中、それを口にしたセナ。 セナが目が覚めた時、愛する皇太子テオベルトのことだけを忘れていた。 記憶は失っても、心はあなたを忘れない、離したくない。 そして、あなたも私を求めていた。

【完結】 表情筋が死んでるあなたが私を溺愛する

紬あおい
恋愛
第一印象は、無口で無表情な石像。 そんなあなたが私に見せる姿は溺愛。 孤独な辺境伯と、一見何不自由なく暮らしてきた令嬢。 そんな二人の破茶滅茶な婚約から幸せになるまでのお話。 そして、孤独な辺境伯にそっと寄り添ってきたのは、小さな妖精だった。

処理中です...