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「先日はエドワード様への不敬を働きましたこと、心よりお詫び申し上げます」
オリヴァーたちが王城へ着いた。
今日は国王と王妃とサージラの監視付きで、エドワードはオリヴァーたちと会うことになった。
エドワードたちは、ティールームでお茶とお菓子をつまみながら優雅に話し合う。
「……なんで王城に招いたのか、って聞きたい顔をしているな」
「……それもあるが、なんで王族が揃っているんだよ」
ラウンドテーブルの椅子に座りながら、エドワードが小声でオリヴァーに話しかけ、オリヴァーも小声で返事をした。
「ひそひそ話をやめい。エドワードは目を離すとすぐに喧嘩をしようとする。小声でのやりとりが、大きな喧嘩になったことも、過去何度あったことか……!」
国王がくどくどと話す内容を聞き、オリヴァーが同情的な笑みを浮かべてエドワードを見る。
「……監視されているのか」
「お前のせいだぞ」
「……それは、悪かった。今日はそのことも謝るつもりで来た」
「ああ、ならとっとと謝れ。ほれ、頭テーブルにこすりつけて、土下座して全力で謝ってみろよ」
「エドワード!!!」
調子に乗ってオリヴァーをからかっていると、背後に並べられた椅子に座っていた国王の喝が室内に響き渡った。
それに萎縮したが、それより気になったことがあり、その話をした。
「それで、なんでミレー嬢が一緒に来ているんだよ?」
さらに彼女からは、先ほどから並々ならぬ視線を感じていた。
「……それなんだが、エドワード様。オレのこと、嫌いですよね?」
「は?」
「大嫌い、ですよね?」
「……急になんだよ」
「良いですから、なにも聞かずに、言ってください、いつものように、オレなんか大嫌いだと!」
オリヴァーが、かつてないほど必死な形相で頼み込んでくる。
あまりに異質な出来事に、エドワードの口角が上がっていく。
なにやら事情はよくわからないが、オリヴァーが必死に頼み込んでくることなど今までなかったのだ。
意地悪く返してやりたいという、遊び心が出てしまった。
「いや? そんなに嫌いではないけど?」
ニタニタと意地悪く返してやると、オリヴァーの顔色が青く染まっていく。
それがおかしくて、さらに追い打ちをかけるような言葉をかける。
「むしろ好きだぜ」
ケタケタと笑いながらそう言うと、固まっているオリヴァーの横でミレーが顔を青ざめさせて身体を震わせていた。
「や……やっぱり。ほら、オリヴァー!」
ミレーがオリヴァーの腕を掴んで、必死に何か返事を求めている。
オリヴァーは空いているほうの手で頭を抱えた。
「やっぱりエドワード様は、あなたのことを狙っているじゃない!!」
ミレーに身体を揺さぶられていたが、オリヴァーは疲れたようにぐったりとして、されるがまま揺さぶり続けられていた。
「は? 何言ってんだ?」
彼女の言葉が理解できず聞き返すと、ミレーは強い目線でエドワードを睨みつけた。
「オリヴァーの貞操は私が守るわ!」
そう言ったかと思うと、ミレーはオリヴァーを守るようにその後頭部を自分の胸元に抱き寄せた。
オリヴァーはもう抵抗するのを諦めたようで、ぐったりと人形のように流れに身を任せてガクガクと身体を揺さぶられている。激しく揺れている頭が無表情なのが、少し不気味だ。
状況が読めずにいると、エドワードの隣に座るマルクが説明をしてくれた。
「ミレーは、エディがオリヴァーに恋情を抱いていると思っているんだよ」
「なんでそうなった?!」
驚愕のあまり立ち上がってしまった。
「おい、オリヴァー……!」
こんな状況なのに、婚約者に抱きしめられ、やる気がなさそうにしているオリヴァーに向かって腕を伸ばした。
「説明を……」
「オリヴァーには触らせないわ!」
エドワードから守るように、身体を縮こまらせ、亀の甲羅のように背中を丸めてオリヴァーの身体へ覆いかぶさるミレー。
「……オレがオリヴァーに恋情を抱いている? どうしてそんな頓珍漢なホラ話をしたんだ?」
努めて冷静にミレーへ語りかけると、彼女は婚約者を抱きしめたままエドワードのほうを向く。
「先ほどあなたも言ったじゃないですか。好きだって!」
「それは玩具として、からかう対象として面白いから好きだって意味で……」
「オリヴァーの身体を玩具に?! ひ、ひどい! やっぱりオリヴァーにあんなことやそんなこと……淫らなことをしようとしているのね!」
「おぉい! 誰か通訳を頼む!」
話が通じずにそう叫ぶと、渋々とマルクが名乗り出てくれた。
「えっと……エドワード様はオリヴァーの身体を性的に弄びたいとかじゃなくて、心を弄べればいいって意味で……」
「通訳が全ッ然、役に立ってねえ!」
「仕方がないだろう……。ボクだってどう解釈したらいいか……っていうか、もうなんか面倒くさくて……」
「おい! 友人が困っているんだから、もう少しやる気ってものを見せろよ!」
「最初に話をややこしくしたのはエディだろう。オリヴァーが言ったとおり、最初に『お前なんか嫌いだ』っていつもの調子で言えばいいのに、なんでこういう時にひねくれるんだよ」
「こんなことになると分かっていたら、そうしたわい! そういうことはしっかり説明しろ!」
「打ち合わせなんかしたらミレーが納得しないだろう?」
マルクがどうでも良さそうに話すのに苛立ちながら、エドワードが吠えた。
「ああもう、じゃあ良いよ! 今からハッキリ言ってやる! オレはオリヴァーなんか大嫌いだ!!」
そう主張しても、ミレーが納得した様子を見せない。
「好きだとばれないように、そう言っているのね……」
(こいつ嫌いだ)
エドワードは苛立つ気持ちを懸命に落ち着かせながら、努めて冷静に対応した。
「なんでオレがオリヴァーを性的な目で見ているなんて誤解をしたんだい?」
努めて王子様スマイルで話しかける。だがミレーの警戒が緩んだ様子はない。
「初めてお会いした時から、エドワード様が私に敵意を見せていたのはわかりました。それがどういう感情かわからずにいたけれど、オリヴァーに向ける熱い視線を見て、胸に不安が広がりました。それで先月、女性の間で人気の書籍を読んで知ったんです。世の中には、男性が男性を愛することもあると!」
ティールームがしんと静まり返る。
まるで場が凍りついたように。
誰も声を発しない。発せない。発しようとしない。
静寂を破ったのは、最悪にもミレーの声だった。
「エドワード様がオリヴァーに向けていた視線はまさに、私がオリヴァーに向けているものと同じ熱さを感じました! 明らかに恋情を抱いています!」
「勘違いがすぎるだろう! あんまり適当なことを言っていると、不敬でひっ捕らえるぞ!」
「いや、面白い見解だ。もう少し聞いてみたい」
後ろのラウンドテーブルに座っていた国王が神妙な声で許した。
「ち、父上ェ……?」
普段厳格な性格なのに、こういう時に寛容になるのが、エドワードには理解不能だった。
「だが、うちの息子がそこのオリヴァーに恋情を抱いていると言うが、それが仮に本当だとしても、そんな気持ちを抱くくらいならば良いのではないか?」
しかも国王は興味津々に質問を続けた。
「別にそなたから婚約者を奪おうとしているわけでもないだろう?」
「いえ、恐れながら陛下。この国では重婚は認められておりませんよね?」
「ああ」
「それは異性同士だけではなく、同性同士も同じことと思っております」
「……ああ」
真剣な表情で頷く国王に、ミレーも真剣な表情で訴えている。
「もしも私がオリヴァーと結婚をしたら、エドワード様とオリヴァーは結婚できなくなります。それを防ぐために、私とオリヴァーの結婚を、エドワード様が認めないのではありませんか!? オリヴァーが私と結婚しなければ、いずれはご自分がオリヴァーを娶ることが出来るから……そうではありませんか!?」
「……そうなのか? エドワード」
ミレーに問われ、国王に疑問の目を向けられ、エドワードが呆れながら叫んだ。
「なんでそうなるんだよ!!! あ、じゃなくて……絶対にありえません! 魚が陸で生活するくらいありえないことですね!」
「でも、そう考えたら辻褄が合うんです。逆にそうでなければ、エドワード様が私とオリヴァーの結婚を認めない理由も、頻繁にオリヴァーをお邸に招待する理由も納得いきません」
「マルクも呼んでいるだろうが! あぁ?! オレはマルクにも変な目を向けているっていうのかよ!」
「いえ、マルクには向けていませんね。オリヴァーだけです。お二人を呼ばれる理由は、お二人と仲が良いのに、オリヴァーだけ呼ぶのは不自然だから一緒に呼んでいただけで、いずれ二人きりになったら……オリヴァーの服を無理やり脱がせて……無理やり手籠めにするおつもりでしょう!!」
「父上、こいつそろそろ牢にぶち込んで良いんじゃないですか!?」
あまりに荒唐無稽な話をされ、エドワードは頭が痛くなってきた。
オリヴァーたちが王城へ着いた。
今日は国王と王妃とサージラの監視付きで、エドワードはオリヴァーたちと会うことになった。
エドワードたちは、ティールームでお茶とお菓子をつまみながら優雅に話し合う。
「……なんで王城に招いたのか、って聞きたい顔をしているな」
「……それもあるが、なんで王族が揃っているんだよ」
ラウンドテーブルの椅子に座りながら、エドワードが小声でオリヴァーに話しかけ、オリヴァーも小声で返事をした。
「ひそひそ話をやめい。エドワードは目を離すとすぐに喧嘩をしようとする。小声でのやりとりが、大きな喧嘩になったことも、過去何度あったことか……!」
国王がくどくどと話す内容を聞き、オリヴァーが同情的な笑みを浮かべてエドワードを見る。
「……監視されているのか」
「お前のせいだぞ」
「……それは、悪かった。今日はそのことも謝るつもりで来た」
「ああ、ならとっとと謝れ。ほれ、頭テーブルにこすりつけて、土下座して全力で謝ってみろよ」
「エドワード!!!」
調子に乗ってオリヴァーをからかっていると、背後に並べられた椅子に座っていた国王の喝が室内に響き渡った。
それに萎縮したが、それより気になったことがあり、その話をした。
「それで、なんでミレー嬢が一緒に来ているんだよ?」
さらに彼女からは、先ほどから並々ならぬ視線を感じていた。
「……それなんだが、エドワード様。オレのこと、嫌いですよね?」
「は?」
「大嫌い、ですよね?」
「……急になんだよ」
「良いですから、なにも聞かずに、言ってください、いつものように、オレなんか大嫌いだと!」
オリヴァーが、かつてないほど必死な形相で頼み込んでくる。
あまりに異質な出来事に、エドワードの口角が上がっていく。
なにやら事情はよくわからないが、オリヴァーが必死に頼み込んでくることなど今までなかったのだ。
意地悪く返してやりたいという、遊び心が出てしまった。
「いや? そんなに嫌いではないけど?」
ニタニタと意地悪く返してやると、オリヴァーの顔色が青く染まっていく。
それがおかしくて、さらに追い打ちをかけるような言葉をかける。
「むしろ好きだぜ」
ケタケタと笑いながらそう言うと、固まっているオリヴァーの横でミレーが顔を青ざめさせて身体を震わせていた。
「や……やっぱり。ほら、オリヴァー!」
ミレーがオリヴァーの腕を掴んで、必死に何か返事を求めている。
オリヴァーは空いているほうの手で頭を抱えた。
「やっぱりエドワード様は、あなたのことを狙っているじゃない!!」
ミレーに身体を揺さぶられていたが、オリヴァーは疲れたようにぐったりとして、されるがまま揺さぶり続けられていた。
「は? 何言ってんだ?」
彼女の言葉が理解できず聞き返すと、ミレーは強い目線でエドワードを睨みつけた。
「オリヴァーの貞操は私が守るわ!」
そう言ったかと思うと、ミレーはオリヴァーを守るようにその後頭部を自分の胸元に抱き寄せた。
オリヴァーはもう抵抗するのを諦めたようで、ぐったりと人形のように流れに身を任せてガクガクと身体を揺さぶられている。激しく揺れている頭が無表情なのが、少し不気味だ。
状況が読めずにいると、エドワードの隣に座るマルクが説明をしてくれた。
「ミレーは、エディがオリヴァーに恋情を抱いていると思っているんだよ」
「なんでそうなった?!」
驚愕のあまり立ち上がってしまった。
「おい、オリヴァー……!」
こんな状況なのに、婚約者に抱きしめられ、やる気がなさそうにしているオリヴァーに向かって腕を伸ばした。
「説明を……」
「オリヴァーには触らせないわ!」
エドワードから守るように、身体を縮こまらせ、亀の甲羅のように背中を丸めてオリヴァーの身体へ覆いかぶさるミレー。
「……オレがオリヴァーに恋情を抱いている? どうしてそんな頓珍漢なホラ話をしたんだ?」
努めて冷静にミレーへ語りかけると、彼女は婚約者を抱きしめたままエドワードのほうを向く。
「先ほどあなたも言ったじゃないですか。好きだって!」
「それは玩具として、からかう対象として面白いから好きだって意味で……」
「オリヴァーの身体を玩具に?! ひ、ひどい! やっぱりオリヴァーにあんなことやそんなこと……淫らなことをしようとしているのね!」
「おぉい! 誰か通訳を頼む!」
話が通じずにそう叫ぶと、渋々とマルクが名乗り出てくれた。
「えっと……エドワード様はオリヴァーの身体を性的に弄びたいとかじゃなくて、心を弄べればいいって意味で……」
「通訳が全ッ然、役に立ってねえ!」
「仕方がないだろう……。ボクだってどう解釈したらいいか……っていうか、もうなんか面倒くさくて……」
「おい! 友人が困っているんだから、もう少しやる気ってものを見せろよ!」
「最初に話をややこしくしたのはエディだろう。オリヴァーが言ったとおり、最初に『お前なんか嫌いだ』っていつもの調子で言えばいいのに、なんでこういう時にひねくれるんだよ」
「こんなことになると分かっていたら、そうしたわい! そういうことはしっかり説明しろ!」
「打ち合わせなんかしたらミレーが納得しないだろう?」
マルクがどうでも良さそうに話すのに苛立ちながら、エドワードが吠えた。
「ああもう、じゃあ良いよ! 今からハッキリ言ってやる! オレはオリヴァーなんか大嫌いだ!!」
そう主張しても、ミレーが納得した様子を見せない。
「好きだとばれないように、そう言っているのね……」
(こいつ嫌いだ)
エドワードは苛立つ気持ちを懸命に落ち着かせながら、努めて冷静に対応した。
「なんでオレがオリヴァーを性的な目で見ているなんて誤解をしたんだい?」
努めて王子様スマイルで話しかける。だがミレーの警戒が緩んだ様子はない。
「初めてお会いした時から、エドワード様が私に敵意を見せていたのはわかりました。それがどういう感情かわからずにいたけれど、オリヴァーに向ける熱い視線を見て、胸に不安が広がりました。それで先月、女性の間で人気の書籍を読んで知ったんです。世の中には、男性が男性を愛することもあると!」
ティールームがしんと静まり返る。
まるで場が凍りついたように。
誰も声を発しない。発せない。発しようとしない。
静寂を破ったのは、最悪にもミレーの声だった。
「エドワード様がオリヴァーに向けていた視線はまさに、私がオリヴァーに向けているものと同じ熱さを感じました! 明らかに恋情を抱いています!」
「勘違いがすぎるだろう! あんまり適当なことを言っていると、不敬でひっ捕らえるぞ!」
「いや、面白い見解だ。もう少し聞いてみたい」
後ろのラウンドテーブルに座っていた国王が神妙な声で許した。
「ち、父上ェ……?」
普段厳格な性格なのに、こういう時に寛容になるのが、エドワードには理解不能だった。
「だが、うちの息子がそこのオリヴァーに恋情を抱いていると言うが、それが仮に本当だとしても、そんな気持ちを抱くくらいならば良いのではないか?」
しかも国王は興味津々に質問を続けた。
「別にそなたから婚約者を奪おうとしているわけでもないだろう?」
「いえ、恐れながら陛下。この国では重婚は認められておりませんよね?」
「ああ」
「それは異性同士だけではなく、同性同士も同じことと思っております」
「……ああ」
真剣な表情で頷く国王に、ミレーも真剣な表情で訴えている。
「もしも私がオリヴァーと結婚をしたら、エドワード様とオリヴァーは結婚できなくなります。それを防ぐために、私とオリヴァーの結婚を、エドワード様が認めないのではありませんか!? オリヴァーが私と結婚しなければ、いずれはご自分がオリヴァーを娶ることが出来るから……そうではありませんか!?」
「……そうなのか? エドワード」
ミレーに問われ、国王に疑問の目を向けられ、エドワードが呆れながら叫んだ。
「なんでそうなるんだよ!!! あ、じゃなくて……絶対にありえません! 魚が陸で生活するくらいありえないことですね!」
「でも、そう考えたら辻褄が合うんです。逆にそうでなければ、エドワード様が私とオリヴァーの結婚を認めない理由も、頻繁にオリヴァーをお邸に招待する理由も納得いきません」
「マルクも呼んでいるだろうが! あぁ?! オレはマルクにも変な目を向けているっていうのかよ!」
「いえ、マルクには向けていませんね。オリヴァーだけです。お二人を呼ばれる理由は、お二人と仲が良いのに、オリヴァーだけ呼ぶのは不自然だから一緒に呼んでいただけで、いずれ二人きりになったら……オリヴァーの服を無理やり脱がせて……無理やり手籠めにするおつもりでしょう!!」
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