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アホ王子への教育とこの異世界
第40講 『信念と十字とコンスタンティヌス1世 ~“信じる力”が帝国を変えた時~』
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夜の王宮。
広間では、神官と学者たちが集まり、王立魔導院による「信仰と国家の在り方」の討論会が行われていた。
「――つまり、王は神に選ばれし存在である!」
「いや、神の名を利用して民を縛るのは誤りだ!」
激論が飛び交う中、ケイ王子は中央の席で頭を抱えていた。
「もうやだ……どっちが正しいのかさっぱりわかんねぇ……!」
隣で控えるアシュリー先生が小声で囁く。
「殿下、落ち着いてくださいませ……。これも“王の勉学”でございますよ」
「勉学っていうか……宗教バトルだよなぁ……」
私は壁際でそれを見て、やれやれと肩をすくめた。
(……あーあ。王と信仰か。避けられねぇ話題だな)
王子が私を見つけると、駆け寄ってきた。
「コヒロ! “王と神”って結局どっちが上なんだ!?」
「重い質問きたな……。よし、いい機会だ。“信仰を政治に持ち込んだ最初の王”の話をしよう」
「そんなのいるの!?」
「いたんだよ。――コンスタンティヌス1世、ローマ帝国の皇帝だ」
*
『信仰と権力を一つにした皇帝』
と、黒板にさらっと書き、
「時は4世紀。ローマ帝国は東西に分裂し、戦乱と混乱の時代。
“神々の加護”を信じる軍と、“新しい信仰”を掲げる民がぶつかり合っていた。
その中で頭角を現したのが――コンスタンティヌス1世」
私は黒板に描く。「剣」と「十字架」。
「彼はもともと“多神教のローマ”の将軍だった。
けれどある戦の日、彼は空に光り輝く十字架を見たという。
“この印のもとに勝て”――そう声が聞こえたそうだ。
そして彼は、兵士の盾に十字を刻み、戦場へ向かった。
結果は――大勝。」
「おおお、神パワー!?」
「そう見えたんだろうな。
彼はその後、“キリスト教”を公認し、迫害されていた信徒を救った。
ローマ帝国が“宗教国家”へと変わる始まりだったんだ」
ケイ王子が顎に手を当てる。
「でも、王が“神”を決めちゃうのって……危なくね?」
「いい視点だな。
彼は信仰を“支配の道具”じゃなく、“統一の象徴”として使った。
民の心を一つにするために、“信じる自由”を与えたんだ。
ただ――それが後の時代に、また別の争いを生むんだけどな」
チョークを走らせながら、私は言った。
「彼は“剣で国を治めた”最初の皇帝であり、
同時に“信仰で国をまとめた”最初の王でもあった。
つまり、“信じる力”を国家の根幹に据えたんだ」
「――我、コンスタンティヌス。
神を信じぬ者を罰するためではなく、
人が“恐れずに祈れる帝国”を築くために剣を抜いた。
剣は信仰を守るためにこそある!」
「きたーっ!! コヒロの憑依魔術・皇帝モード!!」
ケイ王子が歓声を上げる。
リョーキューが「もう驚きません」と呟いた。
講義が終わると、王子は静かに席を立ち、窓の外を見た。
「……“信じる力”か。
僕、まだ王として何を信じればいいかわかんないけど……。
民が信じたいものを、守れる王にはなりたいな」
私は少し笑った。
「立派なこと言うじゃん。コンスタンティヌスもびっくりだな」
「そいつ、僕と同じくらいの歳で戦ってたんでしょ? 負けてらんないじゃん!」
「比べる対象がおかしい!」
*
――その数日後。
王宮の中庭に、ケイ王子の新しい命令が掲示された。
『王立神学会・全宗派合同討論会開催! テーマ:“平和のための祈り”』
神官、聖職者、魔導師、精霊信仰、果ては異国の賢者まで招集され、
会場は一瞬で修羅場になった。
「おい王子! “信仰を一つにまとめる”って、そういう意味じゃねぇ!!」
「だって、コンスタンティヌスも会議したって言ってたじゃん!」
「お前は会議の後に“帝都二分化”したこと知らねぇだろ!!」
「えっ!? そうなの!?」
「そうだよ!!!」
私は頭を抱えた。
けれど、ふとその喧騒の中で、笑う王子を見た。
(……それでも、争いを恐れず“信じること”を学ぼうとしてる。
――まあ、あの皇帝も天から見て笑ってるだろうな)
広間では、神官と学者たちが集まり、王立魔導院による「信仰と国家の在り方」の討論会が行われていた。
「――つまり、王は神に選ばれし存在である!」
「いや、神の名を利用して民を縛るのは誤りだ!」
激論が飛び交う中、ケイ王子は中央の席で頭を抱えていた。
「もうやだ……どっちが正しいのかさっぱりわかんねぇ……!」
隣で控えるアシュリー先生が小声で囁く。
「殿下、落ち着いてくださいませ……。これも“王の勉学”でございますよ」
「勉学っていうか……宗教バトルだよなぁ……」
私は壁際でそれを見て、やれやれと肩をすくめた。
(……あーあ。王と信仰か。避けられねぇ話題だな)
王子が私を見つけると、駆け寄ってきた。
「コヒロ! “王と神”って結局どっちが上なんだ!?」
「重い質問きたな……。よし、いい機会だ。“信仰を政治に持ち込んだ最初の王”の話をしよう」
「そんなのいるの!?」
「いたんだよ。――コンスタンティヌス1世、ローマ帝国の皇帝だ」
*
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“神々の加護”を信じる軍と、“新しい信仰”を掲げる民がぶつかり合っていた。
その中で頭角を現したのが――コンスタンティヌス1世」
私は黒板に描く。「剣」と「十字架」。
「彼はもともと“多神教のローマ”の将軍だった。
けれどある戦の日、彼は空に光り輝く十字架を見たという。
“この印のもとに勝て”――そう声が聞こえたそうだ。
そして彼は、兵士の盾に十字を刻み、戦場へ向かった。
結果は――大勝。」
「おおお、神パワー!?」
「そう見えたんだろうな。
彼はその後、“キリスト教”を公認し、迫害されていた信徒を救った。
ローマ帝国が“宗教国家”へと変わる始まりだったんだ」
ケイ王子が顎に手を当てる。
「でも、王が“神”を決めちゃうのって……危なくね?」
「いい視点だな。
彼は信仰を“支配の道具”じゃなく、“統一の象徴”として使った。
民の心を一つにするために、“信じる自由”を与えたんだ。
ただ――それが後の時代に、また別の争いを生むんだけどな」
チョークを走らせながら、私は言った。
「彼は“剣で国を治めた”最初の皇帝であり、
同時に“信仰で国をまとめた”最初の王でもあった。
つまり、“信じる力”を国家の根幹に据えたんだ」
「――我、コンスタンティヌス。
神を信じぬ者を罰するためではなく、
人が“恐れずに祈れる帝国”を築くために剣を抜いた。
剣は信仰を守るためにこそある!」
「きたーっ!! コヒロの憑依魔術・皇帝モード!!」
ケイ王子が歓声を上げる。
リョーキューが「もう驚きません」と呟いた。
講義が終わると、王子は静かに席を立ち、窓の外を見た。
「……“信じる力”か。
僕、まだ王として何を信じればいいかわかんないけど……。
民が信じたいものを、守れる王にはなりたいな」
私は少し笑った。
「立派なこと言うじゃん。コンスタンティヌスもびっくりだな」
「そいつ、僕と同じくらいの歳で戦ってたんでしょ? 負けてらんないじゃん!」
「比べる対象がおかしい!」
*
――その数日後。
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会場は一瞬で修羅場になった。
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「だって、コンスタンティヌスも会議したって言ってたじゃん!」
「お前は会議の後に“帝都二分化”したこと知らねぇだろ!!」
「えっ!? そうなの!?」
「そうだよ!!!」
私は頭を抱えた。
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