双面の王子に愛されています

八百屋 成美

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 夜会が終わり、私室に戻ったルカは、すぐに二人の王子に取り囲まれた。
 カイがソファに座り、イルスが扉の鍵を閉める。
 逃げ場のない密室で、二つの碧眼がルカを射抜いた。

「ルカ。今日の件で、俺とイルスは共通の認識を持った」

 カイが重々しく口を開く。
 イルスもまた、静かに頷いてルカの背後に立った。

「私たちは互いに、お前を自分だけのものにしたいと争ってきた。……だが、他の有象無象に触れられるくらいなら、兄上と共有する方がマシだ」
「俺も同意見だ。あの薄汚い伯爵の手がルカに伸びた瞬間、俺たちは同時に殺意を抱いた」

 二人の王子が、ルカに手を伸ばす。
 右からカイの手が、左からイルスの手が、ルカの頬を包み込んだ。
 熱い掌と、冷たい掌。
 対照的な温度が、同時にルカの肌に触れる。

「ルカ。お前は俺たちのものだ。髪の一本、指の先まで」
「私たち以外の男には、視線ひとつ向けるな。お前の世界には、私たち二人だけでいい」

 それは、歪んだ独占欲による協定だった。
 今まで反目し合っていた「太陽」と「月」が、ルカという存在を鎖で繋ぎ止めるために手を組んだのだ。

「さあ、ルカ。……今夜は趣向を変えよう」

 カイが邪悪な笑みを浮かべ、サイドテーブルから黒いシルクの布を取り出した。

「お前のその自慢の観察眼……視覚を奪われた状態でも機能するか、試してやろう」
「え……?」
「どちらが触れているか、当ててみろ。間違えたら……分かっているな?」

 イルスが背後からルカの耳元に唇を寄せ、甘く囁く。

「たっぷりと罰を与えてやる。……もちろん、正解しても愛してやるがな」

 視界が黒い布で覆われる。
 闇の中で、二人の獣の気配がルカを取り囲んだ。
 競い合うのではなく、協力して獲物を追い詰める双子の王子の遊戯が、始まろうとしていた。
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