親友だった奴等と異世界で勇者やってましたが、俺だけ力不足だとクビにされたので見返すために可愛い亜人たちと世界救っちゃいます!

農民サイド

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第1章 冒険の始まり

第3話 猫族の少女

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「おぉ!」

 パスウェストの街に入ると人の多さと、色とりどりの建物の並びに圧倒される。
 シルヴェストのような、木、石作りの家なのは同じだと思うが、赤、青、緑、黄色などの様々な色で装飾され、派手な見た目をしている、道の脇にも花や木が植えられ、イメージ的にはハワイのような観光地のように感じる。
 まあ、実際にハワイに行ったことなんてないけど、そんな感じがするってだけ。

「うひょ。これが亜人と暮らす街かぁ。いずれ俺もここで暮らしたい」

 欲望だだ漏れの声がかき消えるくらいの人の量に、日本のアキバを思い出す。
 あそこも、欲望だだ漏れで歩いても、誰も気にしないだけの活気があった、それに似ている。

「お、美味うまそうだな」

 露天に並ぶ、様々な果物を見ていたら、自分が空腹なのを思い出した。

「興奮しすぎて、忘れてたわ……ってか俺、無一文じゃん……」

 ついでに自分のサイフ事情も思い出してしまった。
 これでは、今夜の宿どころか飯も買えない。
 当初は、お金稼ぎのために冒険者を目指していたしな。

「なんか仕事……」

 一応、どこの国にも冒険者ギルドや、酒場で依頼をこなし対価を得ることは出来るのだが、身分証が必要なんで、今の俺にはどうしようもない。
 パスウェストでは、冒険者登録ができないので、どうしたもんかとぶらついていると、女の子の悲鳴が聞こえる。

「いやぁ! 放してよ!」
「うるせえぞガキ! さっさと盗んだもんを返しやがれ!」

 俺が駆けつけるとすでに野次馬の人だかりが出来ており、その中心には、スキンヘッドで肌の黒い、屈強な男に片足を掴まれ持ち上げられている、小さい女の子がいた。
 男の方は人間のようだが、女の子の方は、頭部から猫耳と、お尻の方から細長い尻尾が生えている。

「あれが、噂の猫族か……っても俺の守備範囲外だな……」

 申し訳ないが、健全な男子はロリっ子はエヌジーなのだ。
 やっぱり、同い年くらいの女の子との恋愛にあこがれがあるのは誰でもそうだろう。

「うんうん」

 俺は1人で頷いていたのだが、目の前の自体はどんどん悪くなっていた。

「しらばっくれるなら、衛兵に突き出してやるぞ! さっさと盗んだ物を出せ!」
「私は、盗んでない!」

 女の子は泣いている。

「おい、おっさん」

 俺は、気づくと男と女の子の前に立っていた。
 
「なんだてめぇ?」

 ひぃいこっわ。

「おっさん、その女の子は盗んでないって言ってるんだから放してやったらどうだ?」
「はぁ? てめぇはこいつの身内か?」
「いや、違うけど」
「だったら黙ってろ! こいつは盗みの常習犯で、こっちはもう何回も被害にあってんだ。今更無実ですなんて言われて、はいそうですかって、聞けるわけ無いだろ!」

 それは、ごもっとも。
 どうやら、盗んだことは事実のようだな。
 ふと、女の子の顔を見る。
 潤んだ瞳で、俺に助けを訴えているように見えた。

「おっさん、俺が代わりに払うから、その子を放してくれないか?」
「ほう、それは構わんが、どうみてもてめぇ。金持ってるようにはみえねえな」

 いやいや、俺ってそんなふうに見えるか?
 一応、普通の容姿の高校生だと今まで思ってたんだけど、もしかしてみんな気を使ってくれてただけ?

「で、どうすんだ。金があるなら放してやるよ」

 おっさんは、俺をギロリと睨みつける。
 まじで、こええ。

「金はある、だから放してやってくれ」

 俺は空のサイフを取り出して、払う素振りを見せる。
 おっさんは、その女の子を放して、俺の方へと視線を写したのを確認すると。

「逃げるぞ! 小手先の勇者必殺『猫騙し』!」

 最高に洗練された、俺の猫騙しがおっさんに炸裂すると同時に、女の子の手を引いて走り出す。
 これが、俺の勇者としての必殺技。
 相手の意識が俺だけに向いている時に使え、絶対に相手を行動不能にする最強の技だ。
 
 俺たちは、潜在能力が覚醒するんじゃないかってくらいの速度で、街なかを走り抜け、気づくとひと気のない、薄暗い路地裏の壁にもたれ掛かって座り込んでいた。

「はぁ……はぁ……ここまでくれば……」

 荒い呼吸を整えながら、女の子を見る。
 可愛い子が、息荒くしているのは、なかなかこう、男としてクルものがあるな!

「見ないでよ変態!」

 俺が見ていることに気づいた女の子は、いきなり俺の頬を叩いた。

「いったっ! 何すんのいきなり、俺、一応、恩人じゃないの!?」

 すると女の子は、ハッとしたように目を見開くと、俺の顔をまじまじと見つめてくる。
 うーむ、白い肌、くりっくりの大きい緑の目、ちっちゃいお口と、ちょっと紅潮しているほっぺ……
 将来は、絶対美人になるな……
 と考えていたら、2発目のビンタが飛んできた。

「私を見る目が、怪しすぎる、犯罪者の目だ!」
「ええ……」

 いや、助けてくれた人間にその言いようはなくない?
 まあ、俺も下心ゼロで見てたわけじゃないから、俺も悪いか……

「いや、そんな訳無いだろう。一応、助けましたよ! プリーズお礼!」
「プ、プリーズ? なに訳分からないこと言ってるの……」

 なんか、助けた俺が異常者のようにしか見えなくなってきた。

「はあ、もういいよ……俺は行くから。もう捕まんなよ……」

 これ以上話しててもお腹が減るだけなので、俺はさっさと立ち上がり、立ち去ろうとすると……

「兄ちゃん、勇者なの?」
「え? どうしてそれを?」

 もしかして、俺の名声はこの国まで轟いているのか!
 なんだかんだ、嬉しいな。

「だってさっき、勇者がどうのこうのって自分で言ってたじゃん」
「あ……」

 そう言えば、さっき格好いいと思って、そんなこと叫んだなぁ……

「ちなみ、俺のこと知ってたりする?」
「知らない」

 即答!?
 嘘だろ……
 俺は2年もの歳月を、身を粉にして働いたのにぃ?
 知らないって即答!?

「あっそうっすか……」
「なあ、兄ちゃん勇者なら、私の姉ちゃんを助けてよ!」
「姉ちゃん?」
「そうだ! 悪い貴族に捕まって……きっと今頃、あんなことやこんなことをされてるに違いない……ふんっ!」

 突如、顔面を殴られる。

「痛い! なに!? なんで俺殴られたの!?」
「これだから人間の男は嫌いだっ!」

 理不尽!
 俺勇者なのよ!
 一応……あ、元勇者か……

「はぁ、嫌いなのは分かったけど、その嫌いな人間の男に、救出を依頼するのもどうなのよ?」
「うっさい、勇者でしょ! 黙って助けてよ!」
「もう、理不尽通り越して、不幸だよ! そんなこと言われたら断るよ、さすがの俺も」
「……助けてくれないの?」

 上目遣いと、潤んだ瞳……
 はい無理。

「分かった、助けますよ」
「ありがとう! ……チョッロ」

 童貞舐めんな!?
 女の子に耐性なんてないからな、即落ちよ!
 なんか最後に聞こえたけど、この際、気にしないでおこう。

「で、お姉さんは何処にいるの?」
「うーん、この国で一番大っきい建物って言ってたよ」

 一番でかい建物?
 どこだよそこ。

「もっと、情報ない?」
「えーと……サザーラインって名前だったかなぁ」

 おお、名前はでかいな。
 適当に聞いて回ろうか、と思ったけど。
 俺は、女の子を見る。

「なに変態?」
「見てただけで変態扱いは如何なものだと思うよ……」

 まあ、可愛いけどさ。
 その分、目立つし、さっきの騒動の後だから気軽に歩き回る訳にもいかないな……
 しょうがない。

「えーと……俺の名前は、碇才蔵。君は?」
「……サイゾウ? 変な名前」
「うっせえ、この世界じゃ変わってるけど元の世界ではな……」

 と思ったけど、元の世界でも変わってたわ。
 お祖父ちゃんが、忍者が好きとかで付いけた名前だしな……

「まあ、それはいいは。名前は?」
「……サティア」
「サティアね。サティア、少し動かないでね」
「え? なんで……ひゃっ!」

 俺は、サティアの顔と髪を少し触る。
 すると、さっきまで赤かった髪色が青くなり、目の色は緑から赤に変わる。
 これは、俺の能力とは違うが、なんとなく魔力操作の練習で会得した特技のようなものだ。
 俺の小手先の勇者の能力は、異常なまでに器用になるようで、魔力を切り貼りしたり、長短させたり、硬軟させたりと色々出来るようで、割と応用がきく。
 いや、逆に言えば、それしかできないとも言える。

「これでいいかな」
「さ、触られた……」

 い、いや。触ったくらいでそんな……と思ったけかなりショックを受けているようだ。
 嘘……俺って、そんなに女の子受け悪い?

「その、触ってごめん……ただ、髪と目の色変えたから、これでいきなり捕まることはないと思う」
「ふーん、そんな事出来るんだ」
「これは俺の勇者としての能力だよ、誰でも出来るかは知らないけど」

 誰でも出来たらまじでヘコむけどな……
 さて、俺は自分の顔を、まるっきりの別人に変える。
 
「これでよし……」
「サイゾウの顔、さっきの顔よりまだいいね」
「それ以上、言わないでくれ……」

 なんか、勇者をクビにされたときより、ショックを受けそうな事を言われたが、とりあえずサティアのお姉さんを探すため、聞き込みをするために、明るい通りへ歩き出した。
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