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8話
「……京」
「嫌です。寝ません」
左京は緩く首を振った。三木はため息を吐いて左京用となった部屋を出た。心配そうに見上げる武蔵に、左京と同じように首を振る。
「でも、もう3日だよ?左京君……ダメになっちゃう……」
「あいつが寝ようとしなけりゃどうしようもないだろ。それに……今の京と同じ状況なら、俺だって寝るのを拒む」
三木はもう一度深いため息を吐いた。
翔太郎が小玖哉に攫われてから3日が経った。
それから左京は一睡もせずにただ絶望していた。
親友である翔太郎が小玖哉に食べられてしまう。それを思うと眠気は波のように引いていき、絶望ばかりが波のように押し寄せる。心が形を持った部位であったなら、死ぬよりつらい苦痛に喘いだことだろう。いっそ苦痛という知覚出来る何かがあった方が、楽だったかもしれない。周囲にまとわりつき、手で掻き分けても消えやしない絶望の霧。そこから抜け出す術は皆無だ。
「さきょーくん、死んじゃう?」
「やだ……やだよぅ」
武蔵の脚にしがみついて泣きそうになる小百合と柚子彦を、武蔵が頭を撫でる。だが、返す言葉はない。正しい返答など、思いつくはずもなかった。安易に「大丈夫」などと言えるはずもない。
「その様子じゃ、少年は寝てないみたいだねぇ」
「七緒さん……!」
蒼白い顔をした七緒が、片手を軽く上げた。左腕は吊られており、上げた右腕に包帯が巻かれている。重傷と聞いていたが歩くまでに快復していたのか、と三木は視線を向けた。そんな視線に気づいて七緒はへにゃ、と笑った。
「少年に比べりゃ軽傷さね」
「何しに来た?京はあれから寝ていない。お前に京をどうこう出来るとは思えないが」
「オレはただ謝りに来ただけだよ。守ってやれなかったからねぇ……」
襖に手をかけて七緒が力なく笑う。そしてすっと表情を消した後、襖を開いた。左京は顔をゆっくりと上げて、それから充血した目を見開いて泣きそうな顔をした。
「七緒、さん……」
「ごめんね」
七緒は襖を閉めて、左京の向かいに正座した。そして、静かに手を床につき、頭を下げた。
「ごめん。救えなかった」
「そんな……顔を上げて、ください……」
真っ赤に充血した瞳から、涙が溢れ出した。涙を拭うことはせず、流れるままに涙を流し、唇を噛んで必死に嗚咽を堪える。七緒は額を床につけたまま続ける。
「守るとか、偉そうなこと言って、救えなかった。好きに罵ってくれ。責めてくれ。少年にはその権利がある」
「七緒さんは……翔太郎を助けようとしてくれたじゃないですか……」
「助けようとした、と、救えなかった、は違う。オレが彼を救えなかったのは事実だ。謝っても許されると思っちゃいない。だが、謝らないで済まそうとは思わない」
「でも……」
「許してくれ、とは言わない。罰は君の気の済むまで与えてくれて構わない。それが相応というものだろう」
「やめてください……俺は、そんなつもりは……」
「大切な親友を失ってつらくないはずがない。本当にすまなかった」
「七緒さん……」
左京は口を開いて、それから唇を再度噛み締めた。彼を責めるつもりはない。彼は全力で救おうとしてくれた。それに彼も傷ついている。だが、許すのでは彼の心は癒されないらしい。左京はずい、と座ったまま少し進み、七緒の右手に触れた。温かい。でも、この温かさは翔太郎にはもう───
「もう、いいんです」
「少年……?」
七緒が顔を上げる。その顔は蒼白くて、彼も相当苦しんだことを理解するに足りた。
「翔太郎はもういない……帰ってこない。この3日間、それを痛いほど理解しました。でも、それは七緒さんのせいじゃない。俺がもっと早く駆けつけて小玖哉を説得出来れば、もしかしたら助けられたかもしれない……そんなふうに考えてたらキリがないんだって、分かったんです」
「少年……」
「翔太郎が帰ってこないなら、死体でさえ戻ってこないのなら、せめて弔い合戦をしてやりたいんです。俺と翔太郎の立場が逆なら、翔太郎もそうしたと思うんです。だから───」
左京は力なく笑った。涙が溢れたままの笑顔は、更に七緒の心を悲しみに貫いた。
「俺と一緒に戦ってください。でも、死なないでください。それが、貴方への罰です」
「……ありがとう」
七緒が絞り出すように言うと、左京は涙を拭って立ち上がった。急に立ち上がってふらついた彼を、七緒が慌てて立ち上がり支える。睡眠不足もあるからだろう、左京の顔色も悪く、目の下には濃い隈が浮かんでいる。
「大丈夫です。今から寝ますから」
左京は襖を開けて、そこに立っていた三木と武蔵、小百合、柚子彦に頭を下げた。
「心配かけてごめんなさい。これから寝ます」
「左京君……」
「……そうか」
「じゃあ、さきょーくん死なない!?」
「さきょーくん死なないよね!?」
「うん、大丈夫。心配かけてごめんね」
左京が微笑むと、小百合と柚子彦は嬉しそうにぱっと笑顔を輝かせた。それから、左京の足元に駆け寄って、服の裾をぎゅ、と握った。
「寝るの怖いなら、一緒に寝よ!」
「そうだよ!みんなで寝れば怖くないよ!」
「……そうだね。怖いから、小百合ちゃんと柚子彦くん、一緒に寝てくれる?」
「うん!」
「いいよ!」
「三木さん、武蔵さん、ご迷惑とご心配お掛けしました」
「ううん、私は大丈夫……だけど……」
「何かあったらすぐ呼べ」
「はい……おやすみなさい」
「……おやすみ、左京君」
「おやすみ、京」
左京が部屋に入るのと代わるように七緒が部屋を出て、襖が閉められた。左京は布団を敷くと、小百合と柚子彦に挟まれる形で布団に潜った。暖かい。温かい。温もりが、優しさが、そして生命が。
「おやすみなさい!」
「おやすみなさい、さきょーくん!」
「うん……おやすみなさい」
左京は静かに目を閉じた。
───────
並ぶ料理の数々に辟易しながらも、左京はまっすぐ前を見た。数m先の小玖哉は何かを食みながら、こちらを見た。咀嚼し呑み込むと、小玖哉は変わらぬ春風のような声で左京を促す。
「冷めてしまいますよ」
左京は料理に手をつけず、小玖哉を見据える。数秒、十数秒が過ぎ、ようやく気づいたように小玖哉は首を傾げた。
「どうかしましたか?」
「お前が食べてるのって……」
「あぁ、はい。貴方が“親友”なんてものだと言っていたあの青年ですよ。脂肪が少なくて美味しいです」
「……そうか」
左京は憤りと吐き気を必死に呑み込んで、そしてす、と息を吸った。
「俺は、お前を許さないぞ、小玖哉」
「……はい……?」
小玖哉は甚だ疑問だとでも言うように、再度首を傾げた。左京は静かな怒りを腹に収めたまま続ける。
「親友を、大事な人を食ったお前を許さない。お前がなんと言おうと、許さないし、お前と同一存在になんてなってやらない。お前のいかれた妄想なんて無視してやる。絶対に、だ」
「突然おかしなことを言うんですね」
小玖哉が吐息のように笑う。
「僕達の間に許す許さないなどという些末な事象は存在しないですよ。貴方と僕はこれから同一存在になる身。僕達の間にあるものなんて、所詮“無い”んですよ」
小玖哉が何かを頬張る。それを見て、再びあの異常な食欲と飢餓に襲われる。おそらくこの夢の中で自分が自分のままでいられるのはほんの僅かだろう。だから、せめて、この夢の中にいる時間を削れるように、早く全て食べ尽くしてしまおう。料理に手を伸ばす。1分、1秒でも早く、この夢から脱却する為に。
小玖哉に、当てつけのようなささやかな復讐をする為に。
───────
目が覚める。
吐き気はない。食べることを受け入れたからだろうか。両脇には小百合と柚子彦が小さな寝息を立てて眠っている。しばらく起き上がれそうにない。
翔太郎が、小玖哉に食われてしまった。
もう二度と、翔太郎が戻ることはない。
左京は声を噛み殺して泣いた。
「嫌です。寝ません」
左京は緩く首を振った。三木はため息を吐いて左京用となった部屋を出た。心配そうに見上げる武蔵に、左京と同じように首を振る。
「でも、もう3日だよ?左京君……ダメになっちゃう……」
「あいつが寝ようとしなけりゃどうしようもないだろ。それに……今の京と同じ状況なら、俺だって寝るのを拒む」
三木はもう一度深いため息を吐いた。
翔太郎が小玖哉に攫われてから3日が経った。
それから左京は一睡もせずにただ絶望していた。
親友である翔太郎が小玖哉に食べられてしまう。それを思うと眠気は波のように引いていき、絶望ばかりが波のように押し寄せる。心が形を持った部位であったなら、死ぬよりつらい苦痛に喘いだことだろう。いっそ苦痛という知覚出来る何かがあった方が、楽だったかもしれない。周囲にまとわりつき、手で掻き分けても消えやしない絶望の霧。そこから抜け出す術は皆無だ。
「さきょーくん、死んじゃう?」
「やだ……やだよぅ」
武蔵の脚にしがみついて泣きそうになる小百合と柚子彦を、武蔵が頭を撫でる。だが、返す言葉はない。正しい返答など、思いつくはずもなかった。安易に「大丈夫」などと言えるはずもない。
「その様子じゃ、少年は寝てないみたいだねぇ」
「七緒さん……!」
蒼白い顔をした七緒が、片手を軽く上げた。左腕は吊られており、上げた右腕に包帯が巻かれている。重傷と聞いていたが歩くまでに快復していたのか、と三木は視線を向けた。そんな視線に気づいて七緒はへにゃ、と笑った。
「少年に比べりゃ軽傷さね」
「何しに来た?京はあれから寝ていない。お前に京をどうこう出来るとは思えないが」
「オレはただ謝りに来ただけだよ。守ってやれなかったからねぇ……」
襖に手をかけて七緒が力なく笑う。そしてすっと表情を消した後、襖を開いた。左京は顔をゆっくりと上げて、それから充血した目を見開いて泣きそうな顔をした。
「七緒、さん……」
「ごめんね」
七緒は襖を閉めて、左京の向かいに正座した。そして、静かに手を床につき、頭を下げた。
「ごめん。救えなかった」
「そんな……顔を上げて、ください……」
真っ赤に充血した瞳から、涙が溢れ出した。涙を拭うことはせず、流れるままに涙を流し、唇を噛んで必死に嗚咽を堪える。七緒は額を床につけたまま続ける。
「守るとか、偉そうなこと言って、救えなかった。好きに罵ってくれ。責めてくれ。少年にはその権利がある」
「七緒さんは……翔太郎を助けようとしてくれたじゃないですか……」
「助けようとした、と、救えなかった、は違う。オレが彼を救えなかったのは事実だ。謝っても許されると思っちゃいない。だが、謝らないで済まそうとは思わない」
「でも……」
「許してくれ、とは言わない。罰は君の気の済むまで与えてくれて構わない。それが相応というものだろう」
「やめてください……俺は、そんなつもりは……」
「大切な親友を失ってつらくないはずがない。本当にすまなかった」
「七緒さん……」
左京は口を開いて、それから唇を再度噛み締めた。彼を責めるつもりはない。彼は全力で救おうとしてくれた。それに彼も傷ついている。だが、許すのでは彼の心は癒されないらしい。左京はずい、と座ったまま少し進み、七緒の右手に触れた。温かい。でも、この温かさは翔太郎にはもう───
「もう、いいんです」
「少年……?」
七緒が顔を上げる。その顔は蒼白くて、彼も相当苦しんだことを理解するに足りた。
「翔太郎はもういない……帰ってこない。この3日間、それを痛いほど理解しました。でも、それは七緒さんのせいじゃない。俺がもっと早く駆けつけて小玖哉を説得出来れば、もしかしたら助けられたかもしれない……そんなふうに考えてたらキリがないんだって、分かったんです」
「少年……」
「翔太郎が帰ってこないなら、死体でさえ戻ってこないのなら、せめて弔い合戦をしてやりたいんです。俺と翔太郎の立場が逆なら、翔太郎もそうしたと思うんです。だから───」
左京は力なく笑った。涙が溢れたままの笑顔は、更に七緒の心を悲しみに貫いた。
「俺と一緒に戦ってください。でも、死なないでください。それが、貴方への罰です」
「……ありがとう」
七緒が絞り出すように言うと、左京は涙を拭って立ち上がった。急に立ち上がってふらついた彼を、七緒が慌てて立ち上がり支える。睡眠不足もあるからだろう、左京の顔色も悪く、目の下には濃い隈が浮かんでいる。
「大丈夫です。今から寝ますから」
左京は襖を開けて、そこに立っていた三木と武蔵、小百合、柚子彦に頭を下げた。
「心配かけてごめんなさい。これから寝ます」
「左京君……」
「……そうか」
「じゃあ、さきょーくん死なない!?」
「さきょーくん死なないよね!?」
「うん、大丈夫。心配かけてごめんね」
左京が微笑むと、小百合と柚子彦は嬉しそうにぱっと笑顔を輝かせた。それから、左京の足元に駆け寄って、服の裾をぎゅ、と握った。
「寝るの怖いなら、一緒に寝よ!」
「そうだよ!みんなで寝れば怖くないよ!」
「……そうだね。怖いから、小百合ちゃんと柚子彦くん、一緒に寝てくれる?」
「うん!」
「いいよ!」
「三木さん、武蔵さん、ご迷惑とご心配お掛けしました」
「ううん、私は大丈夫……だけど……」
「何かあったらすぐ呼べ」
「はい……おやすみなさい」
「……おやすみ、左京君」
「おやすみ、京」
左京が部屋に入るのと代わるように七緒が部屋を出て、襖が閉められた。左京は布団を敷くと、小百合と柚子彦に挟まれる形で布団に潜った。暖かい。温かい。温もりが、優しさが、そして生命が。
「おやすみなさい!」
「おやすみなさい、さきょーくん!」
「うん……おやすみなさい」
左京は静かに目を閉じた。
───────
並ぶ料理の数々に辟易しながらも、左京はまっすぐ前を見た。数m先の小玖哉は何かを食みながら、こちらを見た。咀嚼し呑み込むと、小玖哉は変わらぬ春風のような声で左京を促す。
「冷めてしまいますよ」
左京は料理に手をつけず、小玖哉を見据える。数秒、十数秒が過ぎ、ようやく気づいたように小玖哉は首を傾げた。
「どうかしましたか?」
「お前が食べてるのって……」
「あぁ、はい。貴方が“親友”なんてものだと言っていたあの青年ですよ。脂肪が少なくて美味しいです」
「……そうか」
左京は憤りと吐き気を必死に呑み込んで、そしてす、と息を吸った。
「俺は、お前を許さないぞ、小玖哉」
「……はい……?」
小玖哉は甚だ疑問だとでも言うように、再度首を傾げた。左京は静かな怒りを腹に収めたまま続ける。
「親友を、大事な人を食ったお前を許さない。お前がなんと言おうと、許さないし、お前と同一存在になんてなってやらない。お前のいかれた妄想なんて無視してやる。絶対に、だ」
「突然おかしなことを言うんですね」
小玖哉が吐息のように笑う。
「僕達の間に許す許さないなどという些末な事象は存在しないですよ。貴方と僕はこれから同一存在になる身。僕達の間にあるものなんて、所詮“無い”んですよ」
小玖哉が何かを頬張る。それを見て、再びあの異常な食欲と飢餓に襲われる。おそらくこの夢の中で自分が自分のままでいられるのはほんの僅かだろう。だから、せめて、この夢の中にいる時間を削れるように、早く全て食べ尽くしてしまおう。料理に手を伸ばす。1分、1秒でも早く、この夢から脱却する為に。
小玖哉に、当てつけのようなささやかな復讐をする為に。
───────
目が覚める。
吐き気はない。食べることを受け入れたからだろうか。両脇には小百合と柚子彦が小さな寝息を立てて眠っている。しばらく起き上がれそうにない。
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