閻魔大王の判決

みゆたろ

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エピローグ

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ここにまた一人の男がたどり着いた。
名前は川島豊ーー。
彼もまたこの世界で、罪を改めなければならない。
案内人は言った。
「この世界ではウソをついてはいけないーーお分かりですね?」
彼はこの世界に来るのは2度目だ。
「あぁ」
「それでは裁判を始めましょうか」
彼を室内に招き入れると、案内人は走り去っていった。
室内に入ると、豊は堂々と宣言を始めた。
「この裁判で私は、ウソをつかないようにします」と。
「ーーそれでは開廷」
裁判長が言う。
俺の罪を裁く裁判が始まった。
「それでは、あなたの名前、没日、そしてどうして死を迎えたのか?話しなさい」
「名前は川島豊。俺は昨日、3月20日に死んだそうです。自殺です」
「それでは、あなたはなぜ死を選んだのか?話しなさい」
「ーー俺は、娘を虐待してしまいました。妻の姓になった事で、不満ばかりが募っていました。虐待中に彼女は突然いなくなりーー目の前から彼女がいなくなった事で、恐怖を感じました。それで自ら死を選ぶ事にしたんです」
「奥さんの姓ーーでは、今の川島という名字が奥さんのものですか?」
「違います。妻の名字は相川です」

裁判長たちの間でざわついている。
「ーー先程の幸枝ちゃんを連れてきなさい」
裁判長が少し間を置いてから言った。
「証人を呼ぶため、この法廷を10分間、休憩します」
「ーーは?証人なんて前回の時は呼ばなかっただろ?」
「ーー静粛に、静粛に」
裁判長が被告人を黙らせる。

5分後。
幸枝が到着する。
案内人が幸枝に状況を説明する。
「ーー今ね、君のお父さんだと思うんだけど、裁判を受けに来てるから、お父さんかどうかの確認をしてほしいんだけど、いーかなぁ?」
「ーー会いたくない。」
幸枝は軽く横向きに首を振った。
「それじゃ別の部屋から顔だけ確認してくれる?」
「話さなくていーなら、、」
幸枝はしょうがなく頷いた。
父とはもう関わり合いたくない。この世界に来て、幸枝は初めてそう思った。

10分程度の時間が過ぎ、川島豊の法廷がようやく始まった。

「それでは始めます」
「あなたの娘さんの名前は?」
「幸枝です。」
「なぜ、虐待と知っていながら、娘さんを虐待したんですか?」
「ーーうまく行っていなかった妻に、あまりにも似ていたから、、」
豊はうつむいた。
「ただあの時、幸枝が突然目の前からいなくなって、俺はすごく慌てた。ーー目の前にいて当たり前だと思っていた幸枝が消えて、俺の頭の中が真っ白になった。」
「被告人は、どう思ったんですか?」
「俺はその時気づいた。ーー幸枝を大切に思っていた自分に、、。いつか俺が守り続けたいと思っていた人の子なのだとーー」
「もう一度、幸枝ちゃんに会えるとしたらどーしたいですか?」
「今度はちゃんと幸枝を大切にしていきたい」
「あなたからの虐待を受け、傷ついた本人はもうあなたには会いたくないと言ってますが、、」
「ーーそれは、普通の感情だと思います。俺が悪かったので、、」
豊は思い余って涙が溢れるのを止められなかった。
何より会いたくないとまで言われている現実が悲しかった。ーーもう会えない。俺にはもう彼女に償う事は出来ないのか、、。
豊はそんな思いを巡らせていた。
「それではこれで最後の質問です」
「はい」
「あなたの選ぶ人生は光ですか?それともー?」
「ーー闇だと思います」
「それはなぜですか?」
「生きていたとしても、幸枝に嫌がられ、死んだとしても、幸枝には忘れ去られる。ーーどの道、俺にはもう光の指す場所はないと思うからです」
「ーー以上を持ちまして、被告人、川島豊の審議を終えます。判決が出るまで少しお待ちください」
その法廷は閉廷した。

俺はもうやりきった気持ちで一杯だった。

控え室に通され、被告人の顔を見ていた幸枝は重い口を開いた。
そこには案内人が立っている。
「この人が私の父です」
「あなたが選べばいいと思います。二度と会いたくないと言うのなら、この国に止めましょう。ですが、許す気があるのなら、日本に帰しましょう」
まだ5歳の子供に決断を委ねるのはどうなのか?裁判長の意向はわからなかったが、、裁判長がそう言ってるからには、そーするより他はない。
「ーーどーしますか?」
案内人が急かすように聞いた。
「ーー私、、もう二度とあの人に会いたくないし、関わりたくない。ーーそれを約束させた上で、日本に帰してほしい」
「なんで日本に返してほしいの?ーー会いたくないのに?」
案内人は不思議そうに言った。
「私は会いたくないけど、お母さんは会いたいかも知れないからーー」
なるほど。
母を思っての決断だったのかーー。
5歳にしては出来すぎた子供だと思った。

「この裁判に、協力してくれてありがとうね」
案内人は頭を下げた。
「いいえ。あの人はどーなるの?」
「君のお父さんかな?」
「あんな人、お父さんなんかじゃないけど?」
「もう大丈夫だよ。お父さんには約束させるから。心配しないで」
「私、約束するのを見るまで、帰らないーー」
頑なにそう言い張る幸枝がいた。
たかだか、五年の人生でなぜこんなにもシッカリしてしまっているのだろう?

ーー判決。

「被告人、川島豊。判決を言い渡します」
「はい。お願いします」

「あなたの判決は、生ですーーしかし、条件があります」
「ーー条件とは?」
「今後、娘さんには会ったり、電話をしたりしない事です」
「ーー手紙は?」
「手紙くらいならいいでしょう。反省するのであれば、それを伝える事は大切でしょう」
「わかりました。幸枝には、もう二度と会いません。電話もしません。約束しますーー」
「必ず守っていただけますね?」
裁判長が、確認をする。
「俺はウソをつかないーー絶対に」
豊のその目は真剣そのものだった。
「それを信じましょう」
「それでは案内人について行ってくださいーーお疲れ様でした」

ーー終わった。俺の裁判も、幸枝と歩くはずだった未来も何もかもーー。
豊はこれまでの自分の人生を悔やみ、動けなかった。
「俺、しばらくここにいていいですか?」
豊が案内人に聞いた。
「構いませんよ。頭の中が整理出来るまでならーー」
「あぁ、それだけで充分だ」
目から涙が溢れだして止まらなくなった。
誰もいない。今だからこそ泣けるーー。

ーー俺はこれから一体どーするべきなのだろうか?

その時。
証人として連れられてきた幸枝は、母のもとに帰る為、案内人の後ろを黙って歩いていた。
「ねぇ、案内人のおじさんーー」
幸枝が突然口を開いた。
「なんですか?」
案内人は笑顔を浮かべている。
「もう、私はこの世界に来なくていーよね?」
「それは幸枝ちゃん、あなたがどんな風に生きていくか?によって未来は変わるかも知れませんが、、少なくても今と同じように生きていたら、この世界には来なくてよくなりますよ」
「ほんと?ーーそれじゃ私、このままで生きていく。あの人の様にはなりたくないから」
「大丈夫ですよ!ーーシッカリ強く生きて行ってください」
そう言って、案内人は幸枝の頭を軽くなでた。
「頑張るーーおじさん、ありがとう」
幸枝はそう言って、母の待つ日本に帰って行った。


その頃。
日本では、またしても幸枝が行方不明だと捜索願いが出されていた。
「ーーただいま」
「幸枝、あんたどこに行ってたの?またいなくなったのかと思って、捜索願い出しちゃったわよーー」
母は捜索願いなんて言う難しい事を言っていたが、幸枝にはさっぱりわからなかった。
「ーー心配ばっかかけて、ごめんなさい」
幸枝は深く頭をさげた。
「いーのよ。これからは出かける時は、ママにお話して行ってね」
「はい」
「じゃ、ご飯にしましょ。手を洗ってきて」
「はーい。今日のご飯は何?」
「幸枝が大好きな唐揚げだよ」
「やったー」
急いで手を洗うと、キッチンにあるイスに座った。
「ーーいただきます」
その日は母の布団に入り込んで、幸枝は眠った。
そこには、これまでなかった安心感があって、いつもより深い眠りの中で、幸枝は久しぶりに夢を見た。
まだ幼かった頃、家族が幸せに満ちた笑顔の中にいた日の夢をーー。
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感想 3

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みんなの感想(3件)

クー
2021.12.27 クー

読者の年齢の幅をいかしてもっと読み手が頭の中で想像や妄想が出来る作品を作ると面白いと思うし季節を取り込んで短いスパンの作品を期待します。

2021.12.27 みゆたろ

おはよーございます😁昨日はありがとうございます。
ちゃんと読んでくれたんですねぇ😆うれしー😁

解除
Kabochan
2021.11.20 Kabochan

っていうか22位になってるじゃないですか!
ホラー・ミステリーで!!

2021.11.20 みゆたろ

え?マジっすか?

解除
Kabochan
2021.11.20 Kabochan

ホラーって言うからドキドキしてたら逆に感動しちゃいましたよ、

2021.11.20 みゆたろ

わー(^^)感想ありがとう御座います😁ってか、読むのはやっ😄笑

解除

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