カラオケ

みゆたろ

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始まり

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プロローグ


あの人(従業員)に言いたい。
一言だけ言いたい。

「ちゃんと人の話を聞いているのかぁぁぁ?」

「聞いていて忘れているのかぁ?ーーどっちなんだぁぁぁぁ?!」



私、火野ゆり子45歳。そして清水武彦62歳。
二人はカラオケに向かった。
居酒屋で飲むだけ飲んで、カラオケにいくーーこれは、二人にとって、いつもの流れだった。

会員制のカラオケボックスであるため、会員証を見せなければならない。

二人はお酒を飲む。

武彦が会員証を見せている間に、ワンドリンクをオーダーする。

「グラスワイン二つ」

「かしこまりました」

たしかに従業員の彼はそう言った。
彼は背が高く不慣れな様子を感じさせる。

「お客様、グラスが一つ25円かかりますが、よろしいですか?」

――頭の中に疑問符が浮かぶ。

「グラスワイン二つね?」

念を押すようにして、私は再度、注文を繰り返す。

「――かしこまりました」

※カラオケボックスの室内

「もしかしたら、グラスワインでもグラス代がかかるようになったのかもね?」

武彦と二人でそんな事を話していると、武彦が言う。

「でも、たけーな。グラスだけで25円はーー」

それもそうだろう。
店の常連であり、株主でもある武彦はさらに言葉をつないだ。

「今度は紙コップをもってくるようにするよ!」

「その方が安く飲めていいね!」

私もそれに同意を示した。
しばらくして、先ほどの背の高い従業員がノックをして、室内に入ってくる。



コンコンコン、失礼します。

先ほどの背の高い受付にいた従業員だ。
手には丸いお盆と、空の冷えたグラスが二つーー。
思わず武彦と目を見合わせる。

「えっと、グラスワインの赤を二つ、入れて欲しかったんだけど……」

ーー先ほどの会話の流れのおかしさの意味が、やっとわかった。

「――注文する事になりますが、よろしいでしょうか?」

背の高い従業員が聞いてくる。

「はい」

初めから注文しているのだ。
それなのに、この下りはいるのだろうか?

入室して10分程度の時間が過ぎたとき、二人のもとに、ようやくグラスに注がれたワインが届いた。

単なる間違えか?
それとも話を聞いていなかったのか?
真意は彼にしかわからないが、こんなギャグのような体験をさせてくれた事に感謝する。



従業員が集まるスタッフルームの中では、武彦が冗談ばかり言っているのを知っていた。

ーーグラスワイン二つ。

注文した声がスタッフルームにまで響いていた。

「じゃ、今日はジャンケンで負けた方が、3番の部屋に、あえて空のグラスを届けるでどうだ?」

先輩がそう言った。
先輩(中村礼司)はひょろりとした体型で、筋肉質。
なのに、勤め先であるカラオケボックスでは、後輩といつも今回のようなイタズラをして遊んでいる。

「いいっすね?!面白いじゃないですか?」

俺(藤原真人)もそれに賛同した。

ーー最初はグー、ジャンケンポン。

「よし、勝った!お前行ってこいよ!」

中村せんぱいが言う。

「わかりましたよ!行きますけど、怒られたら、お願いしますよ!?」

「わかってるよ!後は任せな!」

こうして私たち二人のもとに、空のグラスだけがが、届く事になるのだった。

それにしても、こんな事を毎回やってるんだろうか?
毎日が飽きないだろうな。

おわり。




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