犬

訪問者

ピンポーン。

突然の訪問者だった。
特に何も約束はしていない。
今、母は買い物に出ている。そして父は相変わらずの仕事に行っていて由美１人だけが家に取り残されている。

ピンポーン。

再度インターフォンが鳴らされた。

「ーーはーい」

由美は声を出す。

「由美ちゃん？私ーー」

あ、この声はーー夕夏だ。
元気よくドアの前に走っていくと、思い切りドアを開けた。
「ーー夕夏」

ドアの向こう側で、夕夏が額を押さえていた。
「何してんの？」

「今ドアに頭ぶつけた」

「え？大丈夫だった？ごめんね」

「大丈夫だよ」

「ほんと、ごめんね。勢いよく開けない方がいーよ」
二人は笑い声を発した。
今日は楽しい時間が訪れそうだった。

夕夏を部屋に招き入れると、由美はウーロン茶を注いでくれる。

「これ飲んで」
由美が拙い手つきで、ウーロン茶を運んでくると、それを差し出した。

「ーーありがとう。ところでポチはどう？」

「まだ、、あんまりなついてくれなくて、、まーしょうがないよね？虐待にあってたんだからーー」
由美は苦笑する。

二人は話ながら、ポチのいる部屋へと向かった。

ワンッワン。
柴ちゃんが巻き付いてくる。

「おーよしよし。元気にしてたかー？」
柴ちゃんと会うのも久しぶりな気がするけど、まだ一日しか経っていないのだ。

小さな声で柴ちゃんが私に言った。

「夕夏、ポチのやつも話せるんだ。今はまだ話していないけど、、彼の心を開いてやってほしい」

「ーーそんな事を言われても」

夕夏にはどーすれば彼が心を開いてくれるのか？検討がつかない。

「ーー頼むよ。夕夏」
柴ちゃんが上目使いで夕夏を見つめる。

「ーーうーん。やれるだけやってみる」

夕夏は柴ちゃんを撫でた。