少年たちに降りかかる闇(仮)

みゆたろ

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本当の危険

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「ーー僕、お父さんたちの事、助けたい。」

司は言った。
だが、今度ばかりはどうしようもない。。

「助けに行く」事はつまり「死ぬ危険がある」と言う事なのだ。
タケルも今回ばかりは、危険な場所に司を連れていく訳にはいかなかった。

「ーー司くん、ごめんなさい」

タケルが深く頭を下げた。

「どうして僕はお父さんたちを、助けに行っちゃいけないの?ーーねぇ、タケルくん、どうして??」

司はタケルの腕にしがみつきながら泣いた。
でも、今のタケルには返す言葉も見つからない。

「ーー今回ばかりは命が危ないからです」

「ーー僕、助けたいんだよ!お父さんたちを。。」

必死の言葉。
その思いは痛いほど分かる。
だけど、こればっかりはどうしようもないーー。

「ーーあなたたち、子供を守るのが私たちuiの役目です!」

「ーーでも」

※助けに行きたい、行けない。

「ーーでも」

司はまだ粘っている。
でも、次に何て言えばいいのか。
その言葉が見つからない。

「司くん、今は彼等《おとなたち》を信じてみましょう。彼等もこれまでの長い人生をずっと生きてきたんですから、大丈夫ーー!」

俯いている司に、タケルはそう言って元気づけた。
だが、司は大人たちが信じられず、俯いたままーー。
これで父や母が助からなかったら??
僕はどうやって生きていけばいいのだろう。

自分に言い聞かせる。

ーー大丈夫。
ーーきっと大丈夫。

だが、不安ばかりが心を支配して行く事を止められない。

※一緒に

大人たちの過ごす街では、山火事の被害が広がっている中で、母の退院が決まったらしい。

「斎藤貴子さん、そろそろ退院出来るんですがね。今外では山火事の被害がすごいので、どうしますか?もう少し、入院しておきますか??」

白衣を身に付けた医師が聞いた。
もう高齢で白髪。
声が小さく話をすると、聞き取りにくい。
何かを質問すると必ずと言っていいほど「はぁ?」と聞き返されるあたり、耳が悪いのだろう。
そんな先生だ。

「ーーいいです。退院します!どうせ死ぬならあの人(晃)と一緒にいたいですから。」

「そうですか。わかりました。」

「それより息子は?司は帰ってきましたよね?ーーどこに行ったんですか?」

「ーーそれはわかりません」

医師は顔を小さく横に振って、分からないと冷たくそう言い切った。
確かタケルの話では、あの医者もグルのはず。
だとしたら分かってるはずなのに??
    
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