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それから一週間後、姉と私と冬樹とで輝と栞の面倒を看ていた時にピンポンとチャイムが鳴る。あら? 梅雨ちゃんにしては早くない?
「ママかなぁ?」
「にしてははやいぞぉ」
栞はともかく輝は両親の行動パターンはある程度把握しているようだ。
「無視していいんじゃな~い?」
冬樹、お前は単に面倒臭いだけだろうが。姉はスーパーに行くと張り切ってメイクしてるしと思いながら立ち上がると再度チャイムが。新聞勧誘なら毎日六社来てるからお断りよと心の中で反芻しながら玄関を開けると満田君が仕事時の格好でやって来た。白のポロシャツのポケットに『旗本書店』と刺繍がしてある、まさか仕事抜けてきてないよね?
「こんにちは、何かお手伝いできる事、ありますか?」
ん? 何しに来たの? 休日出勤と伺ってますが。
「いえ特に無いわよ。姉と弟もいるから」
「その子の勉強なら……」
その子? と思って後ろを向くと、輝がリビングから玄関を覗いていた。可愛い妹を守るため来客が気になったのね、やっぱりお兄ちゃんだなぁ。
「ぼくふゆちゃんがいい!」
あら嫌われちゃってるね満田君、さすがは親子と言ったところかしら?
「んじゃ二階に行く~?」
「うん。じゃましないでよおじさん」
冬樹と輝はそのまま二階に直行、上がってきたかと思ったら今度は絵本を楽しんでる栞にターゲットを絞ったようだ。
「それ読んであげようか?」
満田君栞に触らない方がいいよ、誘拐されかけたことあるから知らない大男は苦手なの。
「うわーん! なつぅー! こわいよー!」
栞は私に飛び付いてきて恐さのあまり泣き出してしまった。まぁ満田君大きいからしょうがないよ、しかも覆い被さるように寄ってったでしょ。私は栞を抱えて満田君から離れる。
「ねぇ栞の泣き声聞こえてきたけど……」
スーパーに行くだけでフル装備の姉がリビングを覗きに来る。
「うん、初対面の男の人にびっくりしちゃって」
「そりゃそうでしょ。満田さん、申し訳無いけどこの子と同じ部屋に入らないでくださらない? 知らない大人の男性が苦手なのよ」
「なら尚のこと今のうちに慣らしておかないと」
「それは両親である葉山夫妻が決めることです、他人が余計なことをなさるのは頂けませんね」
姉のこういう反応は珍しい、普段あまり言わないのに。
「なつ、分かってると思うけど」
うん、栞は絶対一人にしないよ。トイレにも連れてくから。
「大丈夫、そこは任せて」
「んじゃちょっとお買い物してくるね。満田さん、大したもてなしも出来ず申し訳ありません」
と言いつつせわしなく動き回って麦茶と頂き物のお茶受けを置く。
「お姉ちゃん、そんなに慌てなくてもよくない?」
「何言ってんの? タイムサービスでお醤油が限定百本で九十九円なのよ、絶対ゲットしなくちゃ!」
姉はちょいと派手目な格好とは裏腹に、可愛らしいファイティングポーズを作ってからいそいそと家を出た。それから気を取り直して栞に絵本を読んでやっているところにこんにちはー、と梅雨ちゃんの声が聞こえてきた。勝手に上がってもらおうと放置していると満田君が玄関に向かっていった。
『あら奇遇ですね、子供を迎えに来たの』
『そうですか、でしたら早く帰らせてあげないとですね』
既に喧嘩腰のお二人、一応仲裁しておきますか。
「あぁ、梅雨ちゃんにらんちゃんいらっしゃい。折角来たんだから上がってって」
「夏絵さん、こちらの方だってご都合が……」
「そうだとしても一分あれば戻れる距離よ、お茶くらい飲んでっても大丈夫よね?」
「えぇ全然平気よ、冬樹と輝は?」
「冬樹の部屋でお勉強に夢中よ」
「そう、じゃあ遠慮なく。らんちゃん?」
らんちゃんなら二人が睨み合ってる間に上がってるよ。私はキッチンに立ってやかんにお水を入れて火にかける。
「なつ、まともなお茶飲ませてくれるんでしょうね?」
「失礼だなぁ、お茶淹れとお米のセットとレンジでチンはちゃんと出来るよ」
「あら~、成長したじゃないの」
梅雨ちゃんは私の頭を撫でてくれる。
「何かそういうの馬鹿にしてるように見えますね」
えっ? 梅雨ちゃん毒は吐くけど馬鹿にはしないよ。
「あらそう見えてるの? つまりあなたにはなつが馬鹿に映ってるのね、私にはその発想が全く無かったから逆にびっくりなんだけど」
「僕はあなたの道徳心の無さにびっくりです」
私はこの程度の話題に道徳心を引っ張り出してきてる事にびっくりです。
「あんたはなつの事知らねぇからそんな事が言えるんだ。味噌汁一つ作るのにIH一つ壊すような女だぞ?」
うん、事実なんだけど恥ずかしいからあんま広めないでらんちゃん。
「なつおこめのセットできるようになったのぉ?」
「うん、最近やっとコツが掴めてきたの」
そうよ、私だって成長してるのよなんて思ってたら姉がスーパーから帰宅、随分と買い込んでない?
「ただいまぁ、スーパーのセールで買い込んじゃったから好きなの作ってあげる」
ついでに見切り品も買ってきたのね、さすがは買い物上手。
「お帰り、今お茶の準備してるの」
梅雨ちゃんに淹れる分、妊婦さんは体冷やしちゃ駄目だもんね。
「そっちやるからこれ冷蔵庫に詰めてくれない? これ以上台所壊さないで」
姉は私の服を引っ張ってキッチンから遠ざけようとする。成長振りをアピール出来るチャンスなのにぃ。
「梅雨子、お茶飲んでから夕飯作るの手伝ってよ。どうせ泊まる気なんでしょ?」
うんうんたまには良いじゃない。輝と栞の面倒なら私が看るよ、明日は出掛けるから早く寝る予定なの。
「お姉様までそんな言い方……」
「だって事実ですもの。それより満田さん、留守番ありがとうございました」
「僕もお手伝いしますよ」
「いえもう結構です、お仕事抜けてこられてるんですよね?これ以上のおサボりは不味いんじゃないでしょうか?」
やっぱりそう思うよね? 思いっきり職場の制服で来てるんだもん。
「満田君、これ以上ご迷惑かけられないから仕事に戻って」
「いえ大丈夫です、会社には直帰する旨を伝えますので」
そういう事じゃないの、オサボリイケナイ! NO、オサボリ!
「その皺寄せは誰が払うのかしら?あなたがそうする事で仕事が増える方が何名かはいらっしゃる訳よね?」
そう! そういう事なの! さすが梅雨ちゃん!
「あなたには関係ないでしょう」
まぁ誰にも関係無いけどそれの元凶になってるのは頂けない、やっぱり駄目だよそういうの。
「私には全く関係無いわよ、ただあなたの皺寄せを被って仕事が増えた方にだって都合はあるんじゃないかしら? ご家族が体調不良だから定時に上がりたい、今日は土曜日だから仕事を少しでも早く切り上げて夜のデートを楽しみたい。ひょっとしたらプロポーズを予定してる方もいらっしゃるかもね」
「それは個々で何とかすれば……」
「大抵の仕事は何だかんだでチームプレーよ。私の仕事はここまでです、ていうのはあってもチームノルマは存在するでしょ? やむを得ない事情で人員が減ることはあっても、サボりで仕事が増えるのは心情的に腹立たしい話よね?」
「そうだよ満田君、こっちは十分助かってるから。今日はどうもありがとう」
輝と栞に嫌われて全く役には立ってないけど、一応厚意のお礼だけはきちんとね。私は満田君の荷物を持って玄関に押しやった、今日はもう帰って。
「夏絵さん、また連絡します」
「今度はちゃんと約束してから会いましょ」
大分その気は失せてます……とは言えないけど、それは次回でいいや。私は追い出す様に満田君を帰らせると妙な疲れが出て思わず溜息を洩らしてしまった。
「やっと帰ったね~あの木偶の坊」
満田君が居なくなったのを見計らって冬樹と輝が二階から降りてくる。さては逃げてたなお前ら。
「それにしても参ったわ。なつ、これからどうするの?」
基本姉はこの手の話には一切口を出してこないのに、相当満田君が嫌いみたいだ。家族に嫌われるような男は駄目よねやっぱり。
「う~ん、今日のでマイナスポイント」
「だったら早目に縁切りなよ~、ああいうの続けられると僕困るんだよね~」
「うん、ゴメンねふゆ。ちゃんと話するから」
「なつが悪いんじゃないでしょ」
はぁい。冬樹は不機嫌丸出しでムスッとしてると、ただいまぁと秋都の声が聞こえてきてミッツを連れて上がってきた。
「お帰り。いらっしゃいミッツ」
「お邪魔します姐さん」
だからその呼び方やめろって。
「ママかなぁ?」
「にしてははやいぞぉ」
栞はともかく輝は両親の行動パターンはある程度把握しているようだ。
「無視していいんじゃな~い?」
冬樹、お前は単に面倒臭いだけだろうが。姉はスーパーに行くと張り切ってメイクしてるしと思いながら立ち上がると再度チャイムが。新聞勧誘なら毎日六社来てるからお断りよと心の中で反芻しながら玄関を開けると満田君が仕事時の格好でやって来た。白のポロシャツのポケットに『旗本書店』と刺繍がしてある、まさか仕事抜けてきてないよね?
「こんにちは、何かお手伝いできる事、ありますか?」
ん? 何しに来たの? 休日出勤と伺ってますが。
「いえ特に無いわよ。姉と弟もいるから」
「その子の勉強なら……」
その子? と思って後ろを向くと、輝がリビングから玄関を覗いていた。可愛い妹を守るため来客が気になったのね、やっぱりお兄ちゃんだなぁ。
「ぼくふゆちゃんがいい!」
あら嫌われちゃってるね満田君、さすがは親子と言ったところかしら?
「んじゃ二階に行く~?」
「うん。じゃましないでよおじさん」
冬樹と輝はそのまま二階に直行、上がってきたかと思ったら今度は絵本を楽しんでる栞にターゲットを絞ったようだ。
「それ読んであげようか?」
満田君栞に触らない方がいいよ、誘拐されかけたことあるから知らない大男は苦手なの。
「うわーん! なつぅー! こわいよー!」
栞は私に飛び付いてきて恐さのあまり泣き出してしまった。まぁ満田君大きいからしょうがないよ、しかも覆い被さるように寄ってったでしょ。私は栞を抱えて満田君から離れる。
「ねぇ栞の泣き声聞こえてきたけど……」
スーパーに行くだけでフル装備の姉がリビングを覗きに来る。
「うん、初対面の男の人にびっくりしちゃって」
「そりゃそうでしょ。満田さん、申し訳無いけどこの子と同じ部屋に入らないでくださらない? 知らない大人の男性が苦手なのよ」
「なら尚のこと今のうちに慣らしておかないと」
「それは両親である葉山夫妻が決めることです、他人が余計なことをなさるのは頂けませんね」
姉のこういう反応は珍しい、普段あまり言わないのに。
「なつ、分かってると思うけど」
うん、栞は絶対一人にしないよ。トイレにも連れてくから。
「大丈夫、そこは任せて」
「んじゃちょっとお買い物してくるね。満田さん、大したもてなしも出来ず申し訳ありません」
と言いつつせわしなく動き回って麦茶と頂き物のお茶受けを置く。
「お姉ちゃん、そんなに慌てなくてもよくない?」
「何言ってんの? タイムサービスでお醤油が限定百本で九十九円なのよ、絶対ゲットしなくちゃ!」
姉はちょいと派手目な格好とは裏腹に、可愛らしいファイティングポーズを作ってからいそいそと家を出た。それから気を取り直して栞に絵本を読んでやっているところにこんにちはー、と梅雨ちゃんの声が聞こえてきた。勝手に上がってもらおうと放置していると満田君が玄関に向かっていった。
『あら奇遇ですね、子供を迎えに来たの』
『そうですか、でしたら早く帰らせてあげないとですね』
既に喧嘩腰のお二人、一応仲裁しておきますか。
「あぁ、梅雨ちゃんにらんちゃんいらっしゃい。折角来たんだから上がってって」
「夏絵さん、こちらの方だってご都合が……」
「そうだとしても一分あれば戻れる距離よ、お茶くらい飲んでっても大丈夫よね?」
「えぇ全然平気よ、冬樹と輝は?」
「冬樹の部屋でお勉強に夢中よ」
「そう、じゃあ遠慮なく。らんちゃん?」
らんちゃんなら二人が睨み合ってる間に上がってるよ。私はキッチンに立ってやかんにお水を入れて火にかける。
「なつ、まともなお茶飲ませてくれるんでしょうね?」
「失礼だなぁ、お茶淹れとお米のセットとレンジでチンはちゃんと出来るよ」
「あら~、成長したじゃないの」
梅雨ちゃんは私の頭を撫でてくれる。
「何かそういうの馬鹿にしてるように見えますね」
えっ? 梅雨ちゃん毒は吐くけど馬鹿にはしないよ。
「あらそう見えてるの? つまりあなたにはなつが馬鹿に映ってるのね、私にはその発想が全く無かったから逆にびっくりなんだけど」
「僕はあなたの道徳心の無さにびっくりです」
私はこの程度の話題に道徳心を引っ張り出してきてる事にびっくりです。
「あんたはなつの事知らねぇからそんな事が言えるんだ。味噌汁一つ作るのにIH一つ壊すような女だぞ?」
うん、事実なんだけど恥ずかしいからあんま広めないでらんちゃん。
「なつおこめのセットできるようになったのぉ?」
「うん、最近やっとコツが掴めてきたの」
そうよ、私だって成長してるのよなんて思ってたら姉がスーパーから帰宅、随分と買い込んでない?
「ただいまぁ、スーパーのセールで買い込んじゃったから好きなの作ってあげる」
ついでに見切り品も買ってきたのね、さすがは買い物上手。
「お帰り、今お茶の準備してるの」
梅雨ちゃんに淹れる分、妊婦さんは体冷やしちゃ駄目だもんね。
「そっちやるからこれ冷蔵庫に詰めてくれない? これ以上台所壊さないで」
姉は私の服を引っ張ってキッチンから遠ざけようとする。成長振りをアピール出来るチャンスなのにぃ。
「梅雨子、お茶飲んでから夕飯作るの手伝ってよ。どうせ泊まる気なんでしょ?」
うんうんたまには良いじゃない。輝と栞の面倒なら私が看るよ、明日は出掛けるから早く寝る予定なの。
「お姉様までそんな言い方……」
「だって事実ですもの。それより満田さん、留守番ありがとうございました」
「僕もお手伝いしますよ」
「いえもう結構です、お仕事抜けてこられてるんですよね?これ以上のおサボりは不味いんじゃないでしょうか?」
やっぱりそう思うよね? 思いっきり職場の制服で来てるんだもん。
「満田君、これ以上ご迷惑かけられないから仕事に戻って」
「いえ大丈夫です、会社には直帰する旨を伝えますので」
そういう事じゃないの、オサボリイケナイ! NO、オサボリ!
「その皺寄せは誰が払うのかしら?あなたがそうする事で仕事が増える方が何名かはいらっしゃる訳よね?」
そう! そういう事なの! さすが梅雨ちゃん!
「あなたには関係ないでしょう」
まぁ誰にも関係無いけどそれの元凶になってるのは頂けない、やっぱり駄目だよそういうの。
「私には全く関係無いわよ、ただあなたの皺寄せを被って仕事が増えた方にだって都合はあるんじゃないかしら? ご家族が体調不良だから定時に上がりたい、今日は土曜日だから仕事を少しでも早く切り上げて夜のデートを楽しみたい。ひょっとしたらプロポーズを予定してる方もいらっしゃるかもね」
「それは個々で何とかすれば……」
「大抵の仕事は何だかんだでチームプレーよ。私の仕事はここまでです、ていうのはあってもチームノルマは存在するでしょ? やむを得ない事情で人員が減ることはあっても、サボりで仕事が増えるのは心情的に腹立たしい話よね?」
「そうだよ満田君、こっちは十分助かってるから。今日はどうもありがとう」
輝と栞に嫌われて全く役には立ってないけど、一応厚意のお礼だけはきちんとね。私は満田君の荷物を持って玄関に押しやった、今日はもう帰って。
「夏絵さん、また連絡します」
「今度はちゃんと約束してから会いましょ」
大分その気は失せてます……とは言えないけど、それは次回でいいや。私は追い出す様に満田君を帰らせると妙な疲れが出て思わず溜息を洩らしてしまった。
「やっと帰ったね~あの木偶の坊」
満田君が居なくなったのを見計らって冬樹と輝が二階から降りてくる。さては逃げてたなお前ら。
「それにしても参ったわ。なつ、これからどうするの?」
基本姉はこの手の話には一切口を出してこないのに、相当満田君が嫌いみたいだ。家族に嫌われるような男は駄目よねやっぱり。
「う~ん、今日のでマイナスポイント」
「だったら早目に縁切りなよ~、ああいうの続けられると僕困るんだよね~」
「うん、ゴメンねふゆ。ちゃんと話するから」
「なつが悪いんじゃないでしょ」
はぁい。冬樹は不機嫌丸出しでムスッとしてると、ただいまぁと秋都の声が聞こえてきてミッツを連れて上がってきた。
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