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trente-huit
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バザーで倒れた私は会長と社長の計らいで一週間休みを貰えたのだった。休日出勤を憶えていた秋都が会社に連絡を入れてくれ、月曜日(祝日)の午後会長夫妻がお見舞いに来てくださった。
「この際ゆっくり休むといいよ夏絵ちゃん」
「それが良いわ。勤務履歴見たけど経理課の残業酷いじゃない、あンのクソ息子がチャラチャラして社長業務出来てないせいよね」
一度絞め上げなくちゃ。会長夫人は笑顔で恐ろしいセリフを……この方有言実行だからハッタリではない、私と同類っちゃ同類だが熟練度が半端ないのでまともに勝てる相手ではない。
「凪子さん穏便になさってくださいね」
と三人分の紅茶とお見舞いで頂いたクッキーを持ってきた姉が窘めてる。
「あら春香ちゃん、問題はそれだけじゃないでしょう?」
「まぁそうですけど」
と言って私を心配そうに見つめてる。ん? 何かあったのお姉ちゃん?
「そろそろ解決したかのぅ」
会長はブルブル震えているケータイの操作を始めている。古希を過ぎ、最近やれ手先が~だの老眼が~だのと言っている割に新し物好きで、そのケータイも先週発売されたばかりのアンドロイドタイプのものである。会長は新品のケータイをニマニマしながらしばらくいじってからポケットにしまい直した。
「全部片付いたと、懲戒解雇だと何しでかすか分からんから北の工場にぶち込むとさ」
「そうですか。まぁこっちに被害さえ及ばなければ」
「う~む、ぬるいかも知れんなぁ。いっそ裏側の材木採集場にでも飛ばすか、そこならさすがに……」
「それだと確実に退職しませんか? 北の工場でも怪しいかと」
私には何の話かさっぱり見えてこない、どなたか説明をヘルプ。
「それならG県の倉庫に閉じ込めて延々在庫管理させるのは? 隣県だから一応本社勤務の名目だしちょうど一人空きがあったでしょ?」
「おぅ、その手があったか! 他の社員は別の所に移動してもらって一番広い倉庫を一人で管理させれば……棚卸だけで十年は掛かるぞぉ」
会長はまるで子供がイタズラでも仕掛けるみたいに目を輝かせている。だから何があったんです?私話が見えません。
「あの、お三方……何のお話してらっしゃるんでしょうかぁ?」
「「「えっ……?」」」
三人は揃いも揃って私の顔を見つめてくる。えっ? まさか私のことなのっ?
「私……何かしましたでしょうか?」
「「「・・・・・・」」」
そこで黙らないで頂きたい、私真面目に聞いてるんですから。
「夏絵チャンノ話ジャナイワヨ」
「君ニコンナ仕打チスル訳無イヨ、私ノ可愛イ運転手サン」
「ナツハ何モ気ニシナクテイイカラ」
ダッタラ何デカタコトニナルンデショウネェ?
で一週間がっつり休んで久し振りに出社すると、課長席に係長が、係長席に主任が座っている。水無子さんも主任だから管理職は一応埋まってるのか。にしてもミミズは?
「夏絵さぁ~ん!会いたかったですぅ~!」
睦美ちゃんは容赦無く私に飛び付き、とんでもない力で抱きしめてくる。むぐぐっ、苦しい……。
「コラッ! 夏絵が死ぬだろっ!」
水無子さんが慌てて睦美ちゃんを引き剥がしてる。
「先週で全部システム元に戻ったんですよぉ~!」
「弥生めちゃくちゃ頑張ったんだよ、この前夏絵の頑張りフイにしたからって。で金曜日からダウンしてる」
うわぁ~私が休んじゃったばっかりに……今度ご飯奢るよ弥生ちゃん、それとも姉の手料理でもいかが? と言ったのは彼女もまた姉の豚汁が大層お気に入りなのだ。去年の話だけど健吾さんのために作り方覚えたいって家に来て弟子入りしてたもんね。
「ところで随分スッキリしましたね」
私は結局離れなかった睦美ちゃんの頭を撫でる。
「あぁ、やらかしやがったらしいのよ如月」
「何をです?」
水無子さんがミミズの“やらかし”を教えてくれた。
ミミズは異動が決まってから特定の場所で特定の家の周囲を徘徊していることが発覚したそうで、タレコミによって社長に情報がもたらされたらしい。んで独自の調査の結果裏付けが取れ本人に事情徴収、最初は否定したもののガサ入れによってストーキング行為をしていたとされる画像がバッチリ残っていたらしい。揃った証拠を晒して自白を促す(社長がしたのであれば強要だろうな)と被害者は同じ会社の女性社員で、人事課にいた当時に入社試験の面接をして以来ずっと狙っていたらしい。私の時の人事担当って誰だったっけ? まぁどうでもいっか。
「夏絵、あんたの年の女子社員結構ヤバいわよ。アレが人事課に居たのって七~八年前に三年ほどだけだから」
七~八年前……私七年目だから怪しいなぁ。
「私は外れま~す」
「私も外れてますね」
とは睦美ちゃんと補充要員の東さん、彼女は睦美ちゃんが入社するまで一緒に働いていた三期先輩だ。今は総務課に所属しているのでまぁ顔はちょくちょく合わせる。
「でも私ってことは無いでしょ」
「そんなの分かんないわよー、夏絵ちゃん総務でも人気あるんだから」
総務の男性社員って四十五歳以上の既婚ばかりではないか、それはモテると言うより娘扱いだと思う。
「いやいや無いでしょう」
「え~っ、夏絵さん怪し~」
いやマジで無しにしてくれ気色悪い。
「俺入ってます、見憶えあるんで」
とは仲谷君、君一期後輩だから怪しいけど男だよね?
ミミズが居なくなった経理課から残業が消え、毎日定時に帰れる日々を取り戻した。何事も無く一週間を終え、今日は今やすっかり仲良しの田処茉莉花とベビー用品を物色するためショッピングに繰り出していた。ベビー用品メーカー社員の彼女は事務要員なので本社ビル勤務なのだが、最近駅エリアのショッピングビルに新店舗がオープンしたので見に行く事になった。
「今年はマタニティラッシュだわ」
先月幼馴染のこうたの嫁さんのおめでたが分かり、早速お祝いを渡そうという計画を立てている。性別はまだ不明、こうた曰く『楽しみはとっておく』つもりらしい。
「そうですね。梅雨子さん、ミトちゃん、桃子さんもですもんね」
あっ、桃子はこうたの嫁さんね。彼女高校の後輩で馴れ初めはデブ専桃子がこうたに一目惚れ、双方を知ってる私がキューピット役になったので思い入れのあるカップルだ。結婚式はマジ泣けた、桃子のウエディングドレス姿は本当に可愛かった……と話脱線しました。
「まりちゃん最近顔色良くなったね」
「えぇ、私寒いのは割と平気なんです」
「でも引っ越しは疲れたでしょ?」
「いえ、皆が手伝ってくれたので私殆ど何もしてないんです。自分の分ですらあかりと母に任せきりで」
良いじゃない良いじゃない、出産してからの方がきっと大変なんだから。まりちゃん一家は石渡組が建設した一軒家を購入して一家総出で島エリアへお引っ越し、元いた家は賃貸物件として家賃収入が入るようになったそうだ。今では種田あかり共々同い年の四バカ(ゲン、サク、ミッツ、秋都)と親しくしていて、バザーで買ったハンドメイドクッキーをお見舞いに持ってきてくれた。出会い方はともかく今ではみんな仲良し、二人とも本来は礼儀正しくて気の利く可愛こちゃんたちだ。
「五条っ!」
と商店街の喧騒をぶった斬るイケメンボイス、その方向に視線を合わせると……。
「ぐっ郡司君っ!」
「しばらく振り、体調はもうええんか?」
そっか、連絡先でも分かればメール出来たのに。
「お陰様でもう平気です、先日はご迷惑をお掛けしました」
「俺ら同級生なんやから敬語やめへんか?」
「それもそうですね……あれ?」
う~ん、何故か郡司君には敬語になってしまう、同い年なんだけどなぁ……この反応にまりちゃんがクスッと笑う。
「敬語抜けてないじゃない夏絵さん、私先にお店に入ってますね」
「うん、すぐ行くから」
まりちゃんは気を利かせて先にお店に入っていく。私は彼女の背中を見送ってから郡司君に向き直る。
「郡司君は買い物か何かで……なの?」
「いや、休みで暇やったからぶらぶらしてるだけ。それよりこの前バタバタしてしもたし、ええ機会やから連絡先交換せえへん?」
えっ? 何この棚ボタ? 私は内心かなり慌てていたが表向きは平静を装おうとバッグを漁ってケータイを取り出す。
「いいですよ、ちょっと待ってくだ……ごめんなさい、徐々にでいいですか?」
う~ん敬語が直らない……郡司君は苦笑いしてたけどもう少し待ってほしい。私たちはケータイを突き合わせて連絡先を交換した。
「この際ゆっくり休むといいよ夏絵ちゃん」
「それが良いわ。勤務履歴見たけど経理課の残業酷いじゃない、あンのクソ息子がチャラチャラして社長業務出来てないせいよね」
一度絞め上げなくちゃ。会長夫人は笑顔で恐ろしいセリフを……この方有言実行だからハッタリではない、私と同類っちゃ同類だが熟練度が半端ないのでまともに勝てる相手ではない。
「凪子さん穏便になさってくださいね」
と三人分の紅茶とお見舞いで頂いたクッキーを持ってきた姉が窘めてる。
「あら春香ちゃん、問題はそれだけじゃないでしょう?」
「まぁそうですけど」
と言って私を心配そうに見つめてる。ん? 何かあったのお姉ちゃん?
「そろそろ解決したかのぅ」
会長はブルブル震えているケータイの操作を始めている。古希を過ぎ、最近やれ手先が~だの老眼が~だのと言っている割に新し物好きで、そのケータイも先週発売されたばかりのアンドロイドタイプのものである。会長は新品のケータイをニマニマしながらしばらくいじってからポケットにしまい直した。
「全部片付いたと、懲戒解雇だと何しでかすか分からんから北の工場にぶち込むとさ」
「そうですか。まぁこっちに被害さえ及ばなければ」
「う~む、ぬるいかも知れんなぁ。いっそ裏側の材木採集場にでも飛ばすか、そこならさすがに……」
「それだと確実に退職しませんか? 北の工場でも怪しいかと」
私には何の話かさっぱり見えてこない、どなたか説明をヘルプ。
「それならG県の倉庫に閉じ込めて延々在庫管理させるのは? 隣県だから一応本社勤務の名目だしちょうど一人空きがあったでしょ?」
「おぅ、その手があったか! 他の社員は別の所に移動してもらって一番広い倉庫を一人で管理させれば……棚卸だけで十年は掛かるぞぉ」
会長はまるで子供がイタズラでも仕掛けるみたいに目を輝かせている。だから何があったんです?私話が見えません。
「あの、お三方……何のお話してらっしゃるんでしょうかぁ?」
「「「えっ……?」」」
三人は揃いも揃って私の顔を見つめてくる。えっ? まさか私のことなのっ?
「私……何かしましたでしょうか?」
「「「・・・・・・」」」
そこで黙らないで頂きたい、私真面目に聞いてるんですから。
「夏絵チャンノ話ジャナイワヨ」
「君ニコンナ仕打チスル訳無イヨ、私ノ可愛イ運転手サン」
「ナツハ何モ気ニシナクテイイカラ」
ダッタラ何デカタコトニナルンデショウネェ?
で一週間がっつり休んで久し振りに出社すると、課長席に係長が、係長席に主任が座っている。水無子さんも主任だから管理職は一応埋まってるのか。にしてもミミズは?
「夏絵さぁ~ん!会いたかったですぅ~!」
睦美ちゃんは容赦無く私に飛び付き、とんでもない力で抱きしめてくる。むぐぐっ、苦しい……。
「コラッ! 夏絵が死ぬだろっ!」
水無子さんが慌てて睦美ちゃんを引き剥がしてる。
「先週で全部システム元に戻ったんですよぉ~!」
「弥生めちゃくちゃ頑張ったんだよ、この前夏絵の頑張りフイにしたからって。で金曜日からダウンしてる」
うわぁ~私が休んじゃったばっかりに……今度ご飯奢るよ弥生ちゃん、それとも姉の手料理でもいかが? と言ったのは彼女もまた姉の豚汁が大層お気に入りなのだ。去年の話だけど健吾さんのために作り方覚えたいって家に来て弟子入りしてたもんね。
「ところで随分スッキリしましたね」
私は結局離れなかった睦美ちゃんの頭を撫でる。
「あぁ、やらかしやがったらしいのよ如月」
「何をです?」
水無子さんがミミズの“やらかし”を教えてくれた。
ミミズは異動が決まってから特定の場所で特定の家の周囲を徘徊していることが発覚したそうで、タレコミによって社長に情報がもたらされたらしい。んで独自の調査の結果裏付けが取れ本人に事情徴収、最初は否定したもののガサ入れによってストーキング行為をしていたとされる画像がバッチリ残っていたらしい。揃った証拠を晒して自白を促す(社長がしたのであれば強要だろうな)と被害者は同じ会社の女性社員で、人事課にいた当時に入社試験の面接をして以来ずっと狙っていたらしい。私の時の人事担当って誰だったっけ? まぁどうでもいっか。
「夏絵、あんたの年の女子社員結構ヤバいわよ。アレが人事課に居たのって七~八年前に三年ほどだけだから」
七~八年前……私七年目だから怪しいなぁ。
「私は外れま~す」
「私も外れてますね」
とは睦美ちゃんと補充要員の東さん、彼女は睦美ちゃんが入社するまで一緒に働いていた三期先輩だ。今は総務課に所属しているのでまぁ顔はちょくちょく合わせる。
「でも私ってことは無いでしょ」
「そんなの分かんないわよー、夏絵ちゃん総務でも人気あるんだから」
総務の男性社員って四十五歳以上の既婚ばかりではないか、それはモテると言うより娘扱いだと思う。
「いやいや無いでしょう」
「え~っ、夏絵さん怪し~」
いやマジで無しにしてくれ気色悪い。
「俺入ってます、見憶えあるんで」
とは仲谷君、君一期後輩だから怪しいけど男だよね?
ミミズが居なくなった経理課から残業が消え、毎日定時に帰れる日々を取り戻した。何事も無く一週間を終え、今日は今やすっかり仲良しの田処茉莉花とベビー用品を物色するためショッピングに繰り出していた。ベビー用品メーカー社員の彼女は事務要員なので本社ビル勤務なのだが、最近駅エリアのショッピングビルに新店舗がオープンしたので見に行く事になった。
「今年はマタニティラッシュだわ」
先月幼馴染のこうたの嫁さんのおめでたが分かり、早速お祝いを渡そうという計画を立てている。性別はまだ不明、こうた曰く『楽しみはとっておく』つもりらしい。
「そうですね。梅雨子さん、ミトちゃん、桃子さんもですもんね」
あっ、桃子はこうたの嫁さんね。彼女高校の後輩で馴れ初めはデブ専桃子がこうたに一目惚れ、双方を知ってる私がキューピット役になったので思い入れのあるカップルだ。結婚式はマジ泣けた、桃子のウエディングドレス姿は本当に可愛かった……と話脱線しました。
「まりちゃん最近顔色良くなったね」
「えぇ、私寒いのは割と平気なんです」
「でも引っ越しは疲れたでしょ?」
「いえ、皆が手伝ってくれたので私殆ど何もしてないんです。自分の分ですらあかりと母に任せきりで」
良いじゃない良いじゃない、出産してからの方がきっと大変なんだから。まりちゃん一家は石渡組が建設した一軒家を購入して一家総出で島エリアへお引っ越し、元いた家は賃貸物件として家賃収入が入るようになったそうだ。今では種田あかり共々同い年の四バカ(ゲン、サク、ミッツ、秋都)と親しくしていて、バザーで買ったハンドメイドクッキーをお見舞いに持ってきてくれた。出会い方はともかく今ではみんな仲良し、二人とも本来は礼儀正しくて気の利く可愛こちゃんたちだ。
「五条っ!」
と商店街の喧騒をぶった斬るイケメンボイス、その方向に視線を合わせると……。
「ぐっ郡司君っ!」
「しばらく振り、体調はもうええんか?」
そっか、連絡先でも分かればメール出来たのに。
「お陰様でもう平気です、先日はご迷惑をお掛けしました」
「俺ら同級生なんやから敬語やめへんか?」
「それもそうですね……あれ?」
う~ん、何故か郡司君には敬語になってしまう、同い年なんだけどなぁ……この反応にまりちゃんがクスッと笑う。
「敬語抜けてないじゃない夏絵さん、私先にお店に入ってますね」
「うん、すぐ行くから」
まりちゃんは気を利かせて先にお店に入っていく。私は彼女の背中を見送ってから郡司君に向き直る。
「郡司君は買い物か何かで……なの?」
「いや、休みで暇やったからぶらぶらしてるだけ。それよりこの前バタバタしてしもたし、ええ機会やから連絡先交換せえへん?」
えっ? 何この棚ボタ? 私は内心かなり慌てていたが表向きは平静を装おうとバッグを漁ってケータイを取り出す。
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