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cinqante-neuf
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それをきっかけに私はお菓子のお礼も兼ねて部長と連絡を取り合うようになった。ほとんどが思い出話か近況報告なんだけど、家族とも仲が良いし先輩や恩さんとは高校時代の同好会仲間なので彼らの話題になる事もあった。
【そう言えば栗林ってどうしてんだ?】
栗林苑子通称そのちゃんは私と同級の子でこの学年では唯一の女子仲間だった。彼女は高校卒業を機に海外に留学してそのまま結婚したって聞いてるけど。
【留学先で現地の方と結婚してますよ、五年ほど前の話だと思います】
うん、年賀状的なエアメールが毎年届くもの。今年も届いて……あった。今年のエアメールで【ようやくベイビーを授かった】とかって書いてあったな、高校時代は保育士を目指してて、そもそもは福祉先進国で保育を学んで帰国する予定だったらしい。けどダーリンとの出会いがそこにあって、現地でちゃんと夢を叶えてらっしゃるよ。
【そうか、アイツだけ連絡取れなくてさ。高校卒業以来音信不通で】
あっそうだったんだ、先輩は途中退部なさってるから仕方が無いし、恩さんや桃子にも私経由で伝わるって踏んでたんだねきっと。ゴメンそのちゃん、私その辺ズボラ過ぎてほとんど伝えてませんでした。
【五条が連絡取ってんならよかった、誰に聞いても分かんなかったから】
何かすんません部長、そのちゃんは現地で元気に暮らしてらっしゃいますよ。きっと夏くらいには出産を終えて来年のエアメールでお子ちゃまのお写真が拝めるだろうと思います。
【来年頭くらいにお子ちゃまの写真が届くかもです。年一程度で連絡は取り合ってますんでその時が来たらお見せします】
【楽しみにしてるわ】
ほぼ即レスで来た部長からのメールを確認してケータイを置く。そろそろ寝るか……と思ってベッドの入ったところで又してもメール、ん?部長?私は多少面倒臭えと思いつつもベッドから出ないよう腕を目一杯伸ばしてケータイを掴む。
【今度の土曜、都合付かへんか?話がある】
関西弁の文面で届いた郡司君からのメール、このところこういった内容のものがちょいちょい届くんだけどいかんせん全てタイミングが悪い。次の土曜日は婚活パーティーに参戦する、職場の経理課女四人衆で……はぁ~もうじき年の瀬じゃない、今年一年あっという間だったなぁ。
取り敢えず返信はしておいた方がいいのかなぁ?もう眠いんで明日の朝でもいいですかぁ?私は彼からのメールに返信する事なく寝落ちしかけてたところでブーブーと震え出すケータイ、ガチで睡眠モードに入っていた私は心臓が飛び出るんじゃないかってくらいにビックリしてしまった。
「もぅ~マジうっざいんですけど~」
なんて一人ブツクサ文句を言いながら画面を見ると郡司君、ホントもう勘弁して……私は通話に出る気力を失い、留守電モードに切り替えてさっさと眠りに付いてやった。
それから数日後の土曜日、待ちに待った婚活パーティーに参戦するため朝から姉に巻髪を作ってもらっている。それどころか服選びもメイクも姉任せ、だってセルフプロデュースだと間違いなく地味でパッとしない三十路女の出来上がりですからね。そうそう、どうでも良い案件気味ではあるけど、郡司君には翌朝きちんとお断りしておきました。
「最近女に磨きがかかってきたんじゃない?」
と身内贔屓フィルター全開の姉が嬉しそうに鏡越しの私を見つめてる。あのねお姉ちゃん、どう見たって私はあなたほど美しくはない。
「お姉ちゃん視力に問題無かった?」
ある訳ないじゃない。姉はしれっとそう言い返してきて、更に伸びた剛毛黒髪をクルクルとヘアアイロンに巻き付けていく。今日もクオリティーの高い巻髪が着々と仕上がっていき、後ろ姿だけは結構な美人さんになっているハズ。
「どうかしら?」
「素材さえ良ければ完璧!」
もうこれ以上どうにもなりませんってくらいに今日の私はイケてると思う、この平凡過ぎる素材でなければ。
「なつは自己評価低過ぎなのよ」
だってそれは自分自身が一番分かってるんだってな~、なんて言ってたらコンコンとノック音が聞こえてくる。
『出来たか?』
ん?秋都いつの間に帰ってきてたの?最近夜勤続きでほとんど見かけないや。
「えぇ、終わったわよ」
入るぞ。その声を合図にドアが開き、小箱を持った秋都が部屋に入ってきた。その箱もしかして……!
「これでいいんだよな?」
「うん、ありがとう。今日はこれに合うようコーディネートしたのよ」
秋都から小箱を受け取った姉の手にはかつて母が愛用していたバレッタ。ぶっちゃけてしまえばそこまで高価ではないけれど、私が小さい頃やたらと借りたがっていたダリアの花を型どった金属製のものである。色はちょっとくすんだシルバーで、古い代物ではあるけど手入れが行き届いている。きっと箱もそれに合わせたものを姉が購入し、暇を見つけては手入れもしてきたんだと思う。
「たかだか婚活パーティーでそれ使わなくても……!」
それなりに楽しみにはしてるけどそこまでの思い入れは無いよ、それにコレは姉の方がよく似合ってると思う。
「良いじゃないの、お母さん最初からなつにあげるつもりでいたんだから。これがきっと素敵な出会いをもたらしてくれるはず」
だから連れてってあげて。姉は最後の仕上げとして母とは似ても似つかぬ剛毛黒髪にそれを付けてくれた。そう言えばこのバレッタ大人になってから付けるの初めてだ、さっきまでかなりライトな気持ちで臨むはずだったのに一気に緊張館が高まってくる。
「……ありがとう。でも結果は期待しないで」
「大丈夫、すぐじゃなくても何かはきっと変わると思う……はいこれで完成ね」
私は姉に促されて立ち上がり、時間を確認するとそろそろいい時間になっている。
「んじゃ行ってくるね」
「行ってらっしゃい、椿さんたちにも宜しく伝えてね」
は~い。私はこの日使うバッグを開け、忘れ物が無いことを確認してからウキウキした気分で家を出たはいいけれど……。
「なつ」
一体何なのよこの展開!?
【そう言えば栗林ってどうしてんだ?】
栗林苑子通称そのちゃんは私と同級の子でこの学年では唯一の女子仲間だった。彼女は高校卒業を機に海外に留学してそのまま結婚したって聞いてるけど。
【留学先で現地の方と結婚してますよ、五年ほど前の話だと思います】
うん、年賀状的なエアメールが毎年届くもの。今年も届いて……あった。今年のエアメールで【ようやくベイビーを授かった】とかって書いてあったな、高校時代は保育士を目指してて、そもそもは福祉先進国で保育を学んで帰国する予定だったらしい。けどダーリンとの出会いがそこにあって、現地でちゃんと夢を叶えてらっしゃるよ。
【そうか、アイツだけ連絡取れなくてさ。高校卒業以来音信不通で】
あっそうだったんだ、先輩は途中退部なさってるから仕方が無いし、恩さんや桃子にも私経由で伝わるって踏んでたんだねきっと。ゴメンそのちゃん、私その辺ズボラ過ぎてほとんど伝えてませんでした。
【五条が連絡取ってんならよかった、誰に聞いても分かんなかったから】
何かすんません部長、そのちゃんは現地で元気に暮らしてらっしゃいますよ。きっと夏くらいには出産を終えて来年のエアメールでお子ちゃまのお写真が拝めるだろうと思います。
【来年頭くらいにお子ちゃまの写真が届くかもです。年一程度で連絡は取り合ってますんでその時が来たらお見せします】
【楽しみにしてるわ】
ほぼ即レスで来た部長からのメールを確認してケータイを置く。そろそろ寝るか……と思ってベッドの入ったところで又してもメール、ん?部長?私は多少面倒臭えと思いつつもベッドから出ないよう腕を目一杯伸ばしてケータイを掴む。
【今度の土曜、都合付かへんか?話がある】
関西弁の文面で届いた郡司君からのメール、このところこういった内容のものがちょいちょい届くんだけどいかんせん全てタイミングが悪い。次の土曜日は婚活パーティーに参戦する、職場の経理課女四人衆で……はぁ~もうじき年の瀬じゃない、今年一年あっという間だったなぁ。
取り敢えず返信はしておいた方がいいのかなぁ?もう眠いんで明日の朝でもいいですかぁ?私は彼からのメールに返信する事なく寝落ちしかけてたところでブーブーと震え出すケータイ、ガチで睡眠モードに入っていた私は心臓が飛び出るんじゃないかってくらいにビックリしてしまった。
「もぅ~マジうっざいんですけど~」
なんて一人ブツクサ文句を言いながら画面を見ると郡司君、ホントもう勘弁して……私は通話に出る気力を失い、留守電モードに切り替えてさっさと眠りに付いてやった。
それから数日後の土曜日、待ちに待った婚活パーティーに参戦するため朝から姉に巻髪を作ってもらっている。それどころか服選びもメイクも姉任せ、だってセルフプロデュースだと間違いなく地味でパッとしない三十路女の出来上がりですからね。そうそう、どうでも良い案件気味ではあるけど、郡司君には翌朝きちんとお断りしておきました。
「最近女に磨きがかかってきたんじゃない?」
と身内贔屓フィルター全開の姉が嬉しそうに鏡越しの私を見つめてる。あのねお姉ちゃん、どう見たって私はあなたほど美しくはない。
「お姉ちゃん視力に問題無かった?」
ある訳ないじゃない。姉はしれっとそう言い返してきて、更に伸びた剛毛黒髪をクルクルとヘアアイロンに巻き付けていく。今日もクオリティーの高い巻髪が着々と仕上がっていき、後ろ姿だけは結構な美人さんになっているハズ。
「どうかしら?」
「素材さえ良ければ完璧!」
もうこれ以上どうにもなりませんってくらいに今日の私はイケてると思う、この平凡過ぎる素材でなければ。
「なつは自己評価低過ぎなのよ」
だってそれは自分自身が一番分かってるんだってな~、なんて言ってたらコンコンとノック音が聞こえてくる。
『出来たか?』
ん?秋都いつの間に帰ってきてたの?最近夜勤続きでほとんど見かけないや。
「えぇ、終わったわよ」
入るぞ。その声を合図にドアが開き、小箱を持った秋都が部屋に入ってきた。その箱もしかして……!
「これでいいんだよな?」
「うん、ありがとう。今日はこれに合うようコーディネートしたのよ」
秋都から小箱を受け取った姉の手にはかつて母が愛用していたバレッタ。ぶっちゃけてしまえばそこまで高価ではないけれど、私が小さい頃やたらと借りたがっていたダリアの花を型どった金属製のものである。色はちょっとくすんだシルバーで、古い代物ではあるけど手入れが行き届いている。きっと箱もそれに合わせたものを姉が購入し、暇を見つけては手入れもしてきたんだと思う。
「たかだか婚活パーティーでそれ使わなくても……!」
それなりに楽しみにはしてるけどそこまでの思い入れは無いよ、それにコレは姉の方がよく似合ってると思う。
「良いじゃないの、お母さん最初からなつにあげるつもりでいたんだから。これがきっと素敵な出会いをもたらしてくれるはず」
だから連れてってあげて。姉は最後の仕上げとして母とは似ても似つかぬ剛毛黒髪にそれを付けてくれた。そう言えばこのバレッタ大人になってから付けるの初めてだ、さっきまでかなりライトな気持ちで臨むはずだったのに一気に緊張館が高まってくる。
「……ありがとう。でも結果は期待しないで」
「大丈夫、すぐじゃなくても何かはきっと変わると思う……はいこれで完成ね」
私は姉に促されて立ち上がり、時間を確認するとそろそろいい時間になっている。
「んじゃ行ってくるね」
「行ってらっしゃい、椿さんたちにも宜しく伝えてね」
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