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soixante trois
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……でお食事付きフリートーク直前の小休憩中、私たちは四人連れ立ってトイレにあるパウダールームにこもっていた。ここは会場のある階ではないので今のところ私たち以外誰もいない。
「どうだった?良い人見つけられた?」
水無子さんが話を切り出してくる。
「う~ん、ビミョーですぅ」
まぁ睦美ちゃんにはちょっと歳が……ってところはあるかもね。私でもう~んって方いたもの、ぶっちゃけてしまうと。
「でも今回婚活パーティーにしては男性陣もお若かったですよね?」
「最高齢で四十四歳だったから確かにね。私は夏絵の向かいに座ってた方、悪くないと思ったんだけど」
あぁ最初にお話させて頂いた銀行員の方だ、三十六歳だから同い年ですものね。
「出身地も同じで……まさかこんな所で故郷トークが出来るとは思ってなくてちょっと楽しかったのよね」
「フリートークでお声掛けしてみてはいかがですぅ?」
そうしようかしら……水無子さん遂にですかぁ?これはグッドラックと背中を押そうじゃないですか、後輩として。
「「「頑張ってください水無子さん!」」」
東さんと睦美ちゃんも同じ事考えてたみたい、三人揃ってのエールに先輩若干引いてらっしゃるわ。
「あぁ……そうさせてもらうわ。ところで夏絵、随分と知り合いが多かったっぽいけど」
「一番二番は腐れ縁、二十二番は中学の同級生です」
「ちょっとした同窓会みたくなってんじゃない、地元だとこれがあるからねぇ」
「まさかこんな事になるとは……」
「私の郷でもそれきっかけで結婚した子二人ほどいたわよ、案外夏絵も春が近いんじゃないの?二十二番の子なんて良いじゃない、あの若さで司法書士なんて優良物件そのものでしょ」
水無子さん水無子さん、カーストトップの野村君が地味で平凡な私なんか相手にする訳ないじゃないですか。
「え~っ!私ああいうのイヤですぅ、だって遊び慣れてそうじゃないですかぁ。それでしたら子持ちでも一番の方のが誠実そうですよぉ、夏絵さんお子様の事もご存じなんでしょお?」
睦美ちゃんは睦美ちゃんで自身の事そっちのけで先輩の話題に乗ってくる。フリートークもまだなのに早くも投げてるよねあなた?それにしてもお二人さん、私にはてつこと野村君しか選択肢は無いのかい?
「司法書士の資格取るのってめちゃくちゃ難しいらしいよ、遊んでる暇無かった可能性もあるかも。バツイチって事は既婚ってのをモチベーションにしてたとも……そろそろ時間ですね」
ここは東さんが話を締め、軽くメイクを直してからパウダールームを後にした。
「お~もうゴング鳴ってる感じだね」
私たちが会場に入るともう“合戦”は始まっていた。ここでの一番人気は野村君、既に四人ほどの女性に囲まれて猛アピールを受けまくっている。そしてぐっちーも何気に人気がある様でちょくちょく声を掛けられてる。
「取り敢えずお腹空きました」
婚活パーティーで色気より食い気に走った私は睦美ちゃんの事言えないわ。
「まぁ腹が減っては何とやらだけど……」
そんな私に若干呆れてる水無子さん、彼女の中ではどうも大食漢の印象が付いてしまっているらしい。そんなでもないんだけど今更訂正する必要性も無いか。ん~まずは何食べよう?サンドウィッチでもつまもうかな?と推定一人分の乗ったサンドウィッチの皿を手に取って空いてる席を探す。四人並んで座れる所どこかなぁ?っと思ってたら……。
「五条、一緒に食べない?」
私の傍らにはいつの間にか野村君が数種類の料理の乗ったお皿を持って立っていた。一緒にいるつもりでいた先輩たちも何やかんやで男性に声を掛けられてパーティーに本格参戦してらっしゃるわ、私も一応“参戦”っと。
「あれ?一緒にいらした方たちは?」
「あぁ、適当に流して切り上げてきた」
あそこ空いてるよ。野村君は空いてる二つの椅子を指差し、スマートにエスコートしてくれる。彼中学時代からこういうの妙にサマになってるんだよね、当時から女性に優しかったから机の中とか下駄箱の中とか毎日のようにラブレターが入ってた記憶がある。
「いいの?元同級生の相手なんかしてて」
「何言ってんの?対象外の女より五条の方がいいに決まってるだろ」
婚活パーティーの場で可哀相な顛末になっちゃってるらしき野村君、せめてもの慰みとして十数年振りに再会した同級生との対話を楽しもうって事なんだね。正直私も助かってるよ、ぶっちゃけってしまえば今回ピンときてないんだよ。
「合いそうな方いらっしゃらなかったの?」
「まぁ……そういう事になるかな。五条は?」
「う~ん、私もそんな感じかな?中西と小口の登場でちょっと萎えたところもある」
はぁ~この後何言われるか分かったもんじゃないわ、特にぐっちーには。今回案外モテてるみたいだし……おっ!?ちょっとアイツいい感じになっちゃってんじゃないのよぉ!どうやら一人に絞ったみたいで、ちょっと離れた場所でいい雰囲気を醸し出してる。一方のてつこは……アレ?居ないじゃん。
「まさか俺に対してもそう思ってる?」
おっとやっべ、隣の野村君の存在忘れかけてた。
「思わないわよ、腐れ縁とは違うもの」
「なら良かった、せっかくのご縁だから連絡先交換しないか?」
うんいいよ。私たちはケータイを取り出して連絡先を交換した……では終わらず、痺れを切らしました的な空気を纏った一人の女性が私たちの前に立ちはだかってきた。
「あの!独り占めって良くないと思うんですけど!」
ん~仰ってる意味がよく分からないけど、ここはマトモに相手しない方がいいわよね。
「あ~ちょうど今話が終わったとこなんですぅ」
もう面倒臭いんで私はさっと立ち上がり、どうぞどうぞと言った感じでその場をとっとと立ち去ってやる。野村君は引き止める態度を取ってたけど、こんな所で不要なトラブルなんぞまっぴらゴメン!それにもうちょっと食べ足りないしとビュッフェの前で何を食べようかと物色してるところにてつこがやって来た。そう言えばアンタさっきからどこほっつき歩いてたの?
「……何してんの?肝心なとこで抜け出して」
「ん?取引先からの通話に出てた」
「今日くらい断わんなさいよ」
「仕事してる方がいいわ」
……今言うんじゃないよそんな事。
「どうだった?良い人見つけられた?」
水無子さんが話を切り出してくる。
「う~ん、ビミョーですぅ」
まぁ睦美ちゃんにはちょっと歳が……ってところはあるかもね。私でもう~んって方いたもの、ぶっちゃけてしまうと。
「でも今回婚活パーティーにしては男性陣もお若かったですよね?」
「最高齢で四十四歳だったから確かにね。私は夏絵の向かいに座ってた方、悪くないと思ったんだけど」
あぁ最初にお話させて頂いた銀行員の方だ、三十六歳だから同い年ですものね。
「出身地も同じで……まさかこんな所で故郷トークが出来るとは思ってなくてちょっと楽しかったのよね」
「フリートークでお声掛けしてみてはいかがですぅ?」
そうしようかしら……水無子さん遂にですかぁ?これはグッドラックと背中を押そうじゃないですか、後輩として。
「「「頑張ってください水無子さん!」」」
東さんと睦美ちゃんも同じ事考えてたみたい、三人揃ってのエールに先輩若干引いてらっしゃるわ。
「あぁ……そうさせてもらうわ。ところで夏絵、随分と知り合いが多かったっぽいけど」
「一番二番は腐れ縁、二十二番は中学の同級生です」
「ちょっとした同窓会みたくなってんじゃない、地元だとこれがあるからねぇ」
「まさかこんな事になるとは……」
「私の郷でもそれきっかけで結婚した子二人ほどいたわよ、案外夏絵も春が近いんじゃないの?二十二番の子なんて良いじゃない、あの若さで司法書士なんて優良物件そのものでしょ」
水無子さん水無子さん、カーストトップの野村君が地味で平凡な私なんか相手にする訳ないじゃないですか。
「え~っ!私ああいうのイヤですぅ、だって遊び慣れてそうじゃないですかぁ。それでしたら子持ちでも一番の方のが誠実そうですよぉ、夏絵さんお子様の事もご存じなんでしょお?」
睦美ちゃんは睦美ちゃんで自身の事そっちのけで先輩の話題に乗ってくる。フリートークもまだなのに早くも投げてるよねあなた?それにしてもお二人さん、私にはてつこと野村君しか選択肢は無いのかい?
「司法書士の資格取るのってめちゃくちゃ難しいらしいよ、遊んでる暇無かった可能性もあるかも。バツイチって事は既婚ってのをモチベーションにしてたとも……そろそろ時間ですね」
ここは東さんが話を締め、軽くメイクを直してからパウダールームを後にした。
「お~もうゴング鳴ってる感じだね」
私たちが会場に入るともう“合戦”は始まっていた。ここでの一番人気は野村君、既に四人ほどの女性に囲まれて猛アピールを受けまくっている。そしてぐっちーも何気に人気がある様でちょくちょく声を掛けられてる。
「取り敢えずお腹空きました」
婚活パーティーで色気より食い気に走った私は睦美ちゃんの事言えないわ。
「まぁ腹が減っては何とやらだけど……」
そんな私に若干呆れてる水無子さん、彼女の中ではどうも大食漢の印象が付いてしまっているらしい。そんなでもないんだけど今更訂正する必要性も無いか。ん~まずは何食べよう?サンドウィッチでもつまもうかな?と推定一人分の乗ったサンドウィッチの皿を手に取って空いてる席を探す。四人並んで座れる所どこかなぁ?っと思ってたら……。
「五条、一緒に食べない?」
私の傍らにはいつの間にか野村君が数種類の料理の乗ったお皿を持って立っていた。一緒にいるつもりでいた先輩たちも何やかんやで男性に声を掛けられてパーティーに本格参戦してらっしゃるわ、私も一応“参戦”っと。
「あれ?一緒にいらした方たちは?」
「あぁ、適当に流して切り上げてきた」
あそこ空いてるよ。野村君は空いてる二つの椅子を指差し、スマートにエスコートしてくれる。彼中学時代からこういうの妙にサマになってるんだよね、当時から女性に優しかったから机の中とか下駄箱の中とか毎日のようにラブレターが入ってた記憶がある。
「いいの?元同級生の相手なんかしてて」
「何言ってんの?対象外の女より五条の方がいいに決まってるだろ」
婚活パーティーの場で可哀相な顛末になっちゃってるらしき野村君、せめてもの慰みとして十数年振りに再会した同級生との対話を楽しもうって事なんだね。正直私も助かってるよ、ぶっちゃけってしまえば今回ピンときてないんだよ。
「合いそうな方いらっしゃらなかったの?」
「まぁ……そういう事になるかな。五条は?」
「う~ん、私もそんな感じかな?中西と小口の登場でちょっと萎えたところもある」
はぁ~この後何言われるか分かったもんじゃないわ、特にぐっちーには。今回案外モテてるみたいだし……おっ!?ちょっとアイツいい感じになっちゃってんじゃないのよぉ!どうやら一人に絞ったみたいで、ちょっと離れた場所でいい雰囲気を醸し出してる。一方のてつこは……アレ?居ないじゃん。
「まさか俺に対してもそう思ってる?」
おっとやっべ、隣の野村君の存在忘れかけてた。
「思わないわよ、腐れ縁とは違うもの」
「なら良かった、せっかくのご縁だから連絡先交換しないか?」
うんいいよ。私たちはケータイを取り出して連絡先を交換した……では終わらず、痺れを切らしました的な空気を纏った一人の女性が私たちの前に立ちはだかってきた。
「あの!独り占めって良くないと思うんですけど!」
ん~仰ってる意味がよく分からないけど、ここはマトモに相手しない方がいいわよね。
「あ~ちょうど今話が終わったとこなんですぅ」
もう面倒臭いんで私はさっと立ち上がり、どうぞどうぞと言った感じでその場をとっとと立ち去ってやる。野村君は引き止める態度を取ってたけど、こんな所で不要なトラブルなんぞまっぴらゴメン!それにもうちょっと食べ足りないしとビュッフェの前で何を食べようかと物色してるところにてつこがやって来た。そう言えばアンタさっきからどこほっつき歩いてたの?
「……何してんの?肝心なとこで抜け出して」
「ん?取引先からの通話に出てた」
「今日くらい断わんなさいよ」
「仕事してる方がいいわ」
……今言うんじゃないよそんな事。
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