2 / 31
母の妹、見参!
しおりを挟む
「はるな、葬儀会場は押さえてんのか?」
「まだ」
「姉さんのことだ、どっかの会館で積立してる可能性があるね」
叔母は勝手知らぬはずの母の書斎に入り、隠していたらしき鍵をあっさり見つけて引き出しをあさり始める。時々リョウを顎で使い、ものの数分で葬儀会場の会員カードを探し当てていた。
彼女はそれを見ながら電話をしていた。その間リョウはキッチンに入って食器棚を開閉している。今はさほど気にならないが、他所の男が人ん家《ち》の物を勝手に触るのは止めて頂きたい。そもそも一体何を探しているのか?
「客用の湯呑と急須、何処だ?」
「はぁ?」
探すのを止めた時見つかることもよくある話で……って考えてる場合じゃなかった、何故そんな物が要るんだ?
「相手は仕事だが呼び立ててる以上客だろ、茶の一つも出さねぇつもりかよ?」
彼は見た目に似合わぬ低い声でぶっきらぼうに言い捨てた。その上早口でぼそぼそとした喋り口調で、控えめに申し上げて印象は一気に悪くなった。
こっちは親が死んだってのにそんなことにいちいち構ってられる余裕なんかある訳ない……私は心の中で舌打ちをしてそこ、と指差した。リョウは自分でしろよと言わんばかりの視線を向けてくるが知るか、気持ちよく動いてほしいのならその口の聞き方どうにかしろ。
「喪服どうすんだ? あんたの学校私服だったろ?」
書斎から叔母の声が聞こえてきたのをいいことにさっさとキッチンを出る。
「一応制服はある」
「あっそう、数珠は持ってんの?」
「持ってない」
叔母は書斎を物まみれにして足の踏み場も無いほどにしていた。母は几帳面な性格で折り目正しく整理整頓していたが、叔母は雑な性分で大体どこかは散らかっている。それでも物を探すのは得意と見え、必要な物をぽんぽんと見つけだしている。
「まぁざっとこんなもんだろ」
要りそうなものだけを机の上に並べ、散らかした分は適当、正にテキトーに収納スペースにぶち込んでいた。何から何までさせてるところアレなんだが、いくら死んでる人間の持ち物とはいえもう少し丁重に扱え。
「数珠はこれ使いな、丁度いい形見くらいにはなるだろ」
叔母は見たことの無い木箱を差し出した。
「まだ」
「姉さんのことだ、どっかの会館で積立してる可能性があるね」
叔母は勝手知らぬはずの母の書斎に入り、隠していたらしき鍵をあっさり見つけて引き出しをあさり始める。時々リョウを顎で使い、ものの数分で葬儀会場の会員カードを探し当てていた。
彼女はそれを見ながら電話をしていた。その間リョウはキッチンに入って食器棚を開閉している。今はさほど気にならないが、他所の男が人ん家《ち》の物を勝手に触るのは止めて頂きたい。そもそも一体何を探しているのか?
「客用の湯呑と急須、何処だ?」
「はぁ?」
探すのを止めた時見つかることもよくある話で……って考えてる場合じゃなかった、何故そんな物が要るんだ?
「相手は仕事だが呼び立ててる以上客だろ、茶の一つも出さねぇつもりかよ?」
彼は見た目に似合わぬ低い声でぶっきらぼうに言い捨てた。その上早口でぼそぼそとした喋り口調で、控えめに申し上げて印象は一気に悪くなった。
こっちは親が死んだってのにそんなことにいちいち構ってられる余裕なんかある訳ない……私は心の中で舌打ちをしてそこ、と指差した。リョウは自分でしろよと言わんばかりの視線を向けてくるが知るか、気持ちよく動いてほしいのならその口の聞き方どうにかしろ。
「喪服どうすんだ? あんたの学校私服だったろ?」
書斎から叔母の声が聞こえてきたのをいいことにさっさとキッチンを出る。
「一応制服はある」
「あっそう、数珠は持ってんの?」
「持ってない」
叔母は書斎を物まみれにして足の踏み場も無いほどにしていた。母は几帳面な性格で折り目正しく整理整頓していたが、叔母は雑な性分で大体どこかは散らかっている。それでも物を探すのは得意と見え、必要な物をぽんぽんと見つけだしている。
「まぁざっとこんなもんだろ」
要りそうなものだけを机の上に並べ、散らかした分は適当、正にテキトーに収納スペースにぶち込んでいた。何から何までさせてるところアレなんだが、いくら死んでる人間の持ち物とはいえもう少し丁重に扱え。
「数珠はこれ使いな、丁度いい形見くらいにはなるだろ」
叔母は見たことの無い木箱を差し出した。
0
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
☘ 累計ポイント/ 180万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる