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嵐の後の大掃除
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これで“事件”はほぼ解決となったのだろうが、そもそも事故死だったはずの母が何故死期を予測してたかのように遺書なんか準備してたんだろう? そんな私の疑問には叔母が答えてくれた。
「五年くらい前、『ちょっと長めの出張』って言って出てった時期があっただろ?」
そうだ、当時中学生だったのであらかたのことは覚えている。『出張』といった割に仕事用のバッグを自宅に置いたまま、着替えと日用品をパンパンに詰めたスーツケースを持って出掛けてた期間があった。
「あん時ガンが見つかってたんだよ、子宮頚ガン」
「えぇっ⁉」
そんなの全然知らなかった。ちょっと元気無いなくらいは感じてたけど、まさかそんな大病だったなんて……。
「でもねぇ、超初期だったからちょっとの入院で摘出手術ができる状態だったんだよ。であればちゃちゃっと取っちまえってことになって、それで一年半ほど通院続けて無事完治したんだ」
「ってことはその時に?」
ガンといえば死に直結する病気だ、几帳面な性分の母であれば遺書の準備くらい考えつくと思う。
「うん。入院中に泣きながら書いてたよ、『中学生の娘を遺して死ぬことになっても路頭に迷わないようにしておかなきゃ』ってさ。不倫の末でのシングルマザーだろ? 実のオヤジはアレだからアテになんないって、自身の遺志をちゃんと汲み取ってくれる人を姉さんなりに選んだのがこの三人だったってワケ」
叔母は父親候補となった三人を順番に見た。
「病気の方は治ったからその時は使わなかったけど、仮にはるなを未成年のうちに遺す事態になった時は速達で送ってくれって事前に頼まれて私がずっと持ってた。それでも思ってたより早く機能しちまったけど」
「だから日付が古かったんだな」
神戸さんは事前に用意していたことは気づいていたらしい。見せてもらっておきながら全然気づかなかった。
「私はその時偶然会ってるから一応は知っていたよ」
「実は僕もなんです、ヘタしたらニアミスしてたかもしれませんね」
千葉さんと長野さんはそう言って笑い合う。元々はライバルと言っていい間柄なはずなのに、この三人は案外気が合って仲良くしてたような気がする。
「五年くらい前、『ちょっと長めの出張』って言って出てった時期があっただろ?」
そうだ、当時中学生だったのであらかたのことは覚えている。『出張』といった割に仕事用のバッグを自宅に置いたまま、着替えと日用品をパンパンに詰めたスーツケースを持って出掛けてた期間があった。
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「えぇっ⁉」
そんなの全然知らなかった。ちょっと元気無いなくらいは感じてたけど、まさかそんな大病だったなんて……。
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「ってことはその時に?」
ガンといえば死に直結する病気だ、几帳面な性分の母であれば遺書の準備くらい考えつくと思う。
「うん。入院中に泣きながら書いてたよ、『中学生の娘を遺して死ぬことになっても路頭に迷わないようにしておかなきゃ』ってさ。不倫の末でのシングルマザーだろ? 実のオヤジはアレだからアテになんないって、自身の遺志をちゃんと汲み取ってくれる人を姉さんなりに選んだのがこの三人だったってワケ」
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