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ⅩⅦ
しおりを挟む「それが急に連絡が取れなくなってしまったんです……」
新垣仁志は小さな体を更に縮こませて弱々しい声で言う。うん、若いだけで全く可愛くないわ。ミカも同じ事を考えている様で徐々に表情が険しくなっていく。
「振られたんじゃないんですか?それくらい察したら如何です?」
うん、そう思うけどコイツにはちょっと酷なんじゃないかなぁ~と思う私、だって馬鹿そうなんだもの。
「それならそれで連絡くらいくれても……」
言い分は分かるが、同居人と言うだけの理由で泣きつかれても知ったこっちゃない。恋愛は当事者以外の人間ではどうする事も出来ないのだ、自分で何とかしやがれ。
「兎に角ここには居ませんのでどうぞお引き取りください」
ミカはピシャリと言い切って玄関を閉めようとしたが、新垣仁志は事もあろうに腕力でそれを阻止した。例えちびっこくても男なので腕力はそれなりにあるらしい。私は慌てて玄関に駆け寄り、新垣仁志の顔面に殺虫剤を吹っ掛けた。
「うぎゃあーっ!!!」
新垣仁志が仰け反って手を離した隙にミカが玄関を閉めて鍵をかける。一先ずはホッとしたが、ミカが罰悪そうにゴメンと言ってきた。
「まぁ怪我が無かっただけ良しにしましょ、それよりも野球中継終わったんじゃない?」
「そうだ!始まっちゃう!」
私たちは慌ててリビングに入ると間に放送されてる五分番組が始まっていた。間に合った……と腰を落ち着けていると私のケータイがブンブンと震えている。この震え方は出版社関係だ、画面をチェックすると檜山からの着信だ。よりにも寄ってこんな時に……と泣きたくなるが、大事な仕事の電話の可能性も高いから出ない訳にもいかない。これで酔っ払ってのノロケ話だったら今度会った時絶対締め上げてやる!
「はい」
『居るならさっさと出やがれ、原稿持ってきてやるから今日中に直せ』
「はぁ!?今になってですか?」
『しょうがねぇだろ、今回の原稿笑いごっちゃなくなってきたんだよ』
「何で?何があったの?」
『おいニュース見てないのか?あの御曹司隠し子五人の親権を取ったんだよ。どうもそれがきな臭いらしくてこのまま出すと洒落にならん』
「母親から子供取り上げちゃったの?今更?それ法律上問題あるんじゃないの?」
『その辺のカラクリは俺にも詳しく分からん。そのせいでこっちもバタバタしてんだよ』
え~そのまま出しても良いじゃな~い、とは思ったが出版社にも事情があるのだろう。元々風刺的なコラムとは言え、やり過ぎると報道倫理とやらに引っ掛って出版そのものが危ぶまれてしまう。まぁそれを避けたいのは分かるが、このところあのハリボテ御曹司に振り回されているようで何とも腹立たしい気分になる。ってか隠し子五人もいたんだね、お盛んにしても五人の女に種蒔いた挙句別の女性と結婚なんて駄目でしょ?どうせなら上辺だけでも独身でいるのがマナーだと思うのは私だけなのか?世が世なら“光源氏”だが、時代が変われば高身分と器量良しで許されるほど二十一世紀は甘くないはずだ。くたばりやがれ御曹司……恨み言にしかならないがそう思わずにはいられなかった。
「どうしたの?麻帆」
檜山との通話を切った私は茫然自失状態に陥っていた。折角楽しみにしてたのに……ささやかな幸せを奪ってこっちの死活問題に関わるスキャンダルを撒き散らす御曹司が憎くてたまらなくなる。
「原稿の修正が必要になっちゃった。檜山さんもうじきここに来る」
「仕事ならしょうがないよ、録画しておくから明日一緒に観よう」
うん……こういう時のミカは本当に優しい、ササッとDVDをセットして録画設定をしてくれていた。本来なら彼女一人で先に観ていても何の問題も無いのに、二人で楽しみにしていたと言う理由だけで一緒に我慢してくれるのだ。しかもこの映画、ぶっちゃけ何度も観ているのに、テレビで放送される度に観たくなってしまう。
私たちは檜山が来るまでテレビを見ながら待つことにする。それから約二十分後、ケータイが動きを見せて檜山の到着を報せてきた。
来やがったか……私は仕方無くテレビ観賞を中断し、部屋に篭って原稿の直しに取り掛かった。
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