2 / 4
2
しおりを挟む
「お疲れさま!これ持って帰ってね」
仕事終わり、奈子は社長の奥さんから予期せぬご褒美を貰った。
渡された包みには名嘉川のお菓子が入っている。
嬉しさのあまり“きゃあ~”と叫びそうになったが、ここは店内さすがに堪えた。
「お疲れ様です!いいんですか?」
一応のいいんですか?を聞くものの、顔からは喜びが溢れ出していて貰う気満々なのは見てと取れる。
おかしそうに笑う奥さんは「残り物だけどね」と付け加えた。
残り物だろうと何だろうと、名嘉川のお菓子には違いない。
「ありがとうございます」
奈子はペコリと頭を下げるとスキップさながらに店を出た。
(今日はなんて良い日なんだろう)
奈子は創業100年になる老舗和菓子屋“名嘉川”で事務の仕事をしている。
事務といっても奥さんの助手のようなもので、簡単なデータ入力や伝票整理、電話対応におつかいが主な仕事だ。事務員は他に勤続40年以上で大ベテランの男の人が一人いるが、無口でお世辞にも愛想が良いとはいえない。奈子からすると正体不明の怪しいおじさんという印象だ。
名嘉川は奈子の好きな和菓子屋の一つで、味もさることながら、昭和のレトロな感じも残しつつ、流行りを取り入れた可愛くて繊細なデザインのお菓子が魅力的で奈子もよく買いに来ていた。ちょっとした縁で名嘉川で働かせて貰うようになりだいぶ経つが。
そこのお菓子がタダ……お金を払わずに食べることができるのだ。こんな嬉しいことはない。
社割りで従来より安く買えるだけでも有難いと思っていただけに、初めてお菓子を貰ったときは泣いて喜んだ。
「そんな大げさな」と奥さんは少し呆れていたが。
「お菓子~何だろう~~」
早く帰って開けたいっとわかるくらいに奈子の声はウキウキと弾んでいた。
中身が気になって、つい包みの一部を剥がしてしまうと豆大福が2つ仲良く並んでいた。
「大福~!!」
厚めの白い餅に艶やかな黒豆がふんだんに練り込まれたキラキラと輝く大福に、奈子の食べたい欲求が刺激され、これはのんびり帰ってる場合ではない!!
と、奈子は橙色に染まる土手を全速力で帰って行った。むふむふふと怪しげな喜びの声を発しながら。
そして家に着いた早々、大福を一つ頬張ったのは言うまでもなくである。
「う~ん!おいしい~~ぃぃ!!」
弾力のある白餅と程よい食感の黒豆に包まれた上品な甘さの餡子に、頬っぺが落ちるとはまさにこのこと。と奈子は今日一番の笑みを浮かべた。
ついでに、晩ごはん前にもかかわらず口の回りを白い粉だらけにした奈子が母親に怒られたのも言うまでもなくである。
仕事終わり、奈子は社長の奥さんから予期せぬご褒美を貰った。
渡された包みには名嘉川のお菓子が入っている。
嬉しさのあまり“きゃあ~”と叫びそうになったが、ここは店内さすがに堪えた。
「お疲れ様です!いいんですか?」
一応のいいんですか?を聞くものの、顔からは喜びが溢れ出していて貰う気満々なのは見てと取れる。
おかしそうに笑う奥さんは「残り物だけどね」と付け加えた。
残り物だろうと何だろうと、名嘉川のお菓子には違いない。
「ありがとうございます」
奈子はペコリと頭を下げるとスキップさながらに店を出た。
(今日はなんて良い日なんだろう)
奈子は創業100年になる老舗和菓子屋“名嘉川”で事務の仕事をしている。
事務といっても奥さんの助手のようなもので、簡単なデータ入力や伝票整理、電話対応におつかいが主な仕事だ。事務員は他に勤続40年以上で大ベテランの男の人が一人いるが、無口でお世辞にも愛想が良いとはいえない。奈子からすると正体不明の怪しいおじさんという印象だ。
名嘉川は奈子の好きな和菓子屋の一つで、味もさることながら、昭和のレトロな感じも残しつつ、流行りを取り入れた可愛くて繊細なデザインのお菓子が魅力的で奈子もよく買いに来ていた。ちょっとした縁で名嘉川で働かせて貰うようになりだいぶ経つが。
そこのお菓子がタダ……お金を払わずに食べることができるのだ。こんな嬉しいことはない。
社割りで従来より安く買えるだけでも有難いと思っていただけに、初めてお菓子を貰ったときは泣いて喜んだ。
「そんな大げさな」と奥さんは少し呆れていたが。
「お菓子~何だろう~~」
早く帰って開けたいっとわかるくらいに奈子の声はウキウキと弾んでいた。
中身が気になって、つい包みの一部を剥がしてしまうと豆大福が2つ仲良く並んでいた。
「大福~!!」
厚めの白い餅に艶やかな黒豆がふんだんに練り込まれたキラキラと輝く大福に、奈子の食べたい欲求が刺激され、これはのんびり帰ってる場合ではない!!
と、奈子は橙色に染まる土手を全速力で帰って行った。むふむふふと怪しげな喜びの声を発しながら。
そして家に着いた早々、大福を一つ頬張ったのは言うまでもなくである。
「う~ん!おいしい~~ぃぃ!!」
弾力のある白餅と程よい食感の黒豆に包まれた上品な甘さの餡子に、頬っぺが落ちるとはまさにこのこと。と奈子は今日一番の笑みを浮かべた。
ついでに、晩ごはん前にもかかわらず口の回りを白い粉だらけにした奈子が母親に怒られたのも言うまでもなくである。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる