奈子のおかしな日常

小牧タミ

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ショーケースにところ狭しと並べられたきらきらと輝く宝石みたいなケーキたち。
定番の苺のショートケーキに艶やかなチョコレートケーキ。ふわふわロールケーキにカスタードクリームたっぷりのシュークリーム。季節の果物をふんだんに使ったゼリーや卵が濃厚なプリンなど。一つ一つ挙げていたら両手では足りない。何十種類とあるスイーツを前に奈子の幸せと興奮はMAXを迎えていた。

お菓子が三度の飯より大好きで、寝ても覚めてもお菓子のことを考えている奈子にとって、この場所は天国そのもの。
お菓子といっても本当にいっぱいありすぎて、一言では語れないが。
今日は近所(自転車で15分の所)にオープンした話題の洋菓子店に足を運んでいた。
休みの日は家で過ごすがモットーの奈子だが、前々から気になっていた店ゆえに、頑張って自転車をこいで来たのだ。

ケーキたちが買って買ってと言っているように見える。
(ああ~どうしよう!決まらない~~)
ショーケースの前で苦悶していると、少し苦笑いした店員さんの顔が見える。心の中で待たせてごめんなさい!と謝るものの、簡単には一つに決められない……。
でも待てよ!と、ふとあることを思いついた。
この店にはカフェスペースがある。そこでケーキを食べて、あと一つはテイクアウトすればいいんだ。無理に一つに決めなくていいんだ!と、ナイスアイデアのように店員さんにドヤ顔を向ける奈子。
誰でも考え付きそうなことだが、本人が満足ならそれでいい。そっとしておいてあげよう。
そんな周囲の生温かい笑みに、気づかないのは本人ばかりなりである。

「おいしい!!」
カフェスペースで食べるのは定番の苺のショートケーキと飲み物はアイスコーヒー。いつもはストレートのアイスティを飲む奈子だが、今日は気分を変えてアイスコーヒーにした。
コーヒーの苦味と生クリームの甘さがとても合う。クリームは甘いといってもしつこくなくて上品な味だ。スポンジはふわふわで食感もよく、苺の酸味も程よく口の中に広がり、奈子はついついおいしいを連発してしまう。

こんなおいしいケーキが食べられるなんて、自転車で15分かけて来た甲斐があったというもの。ケーキを頬張りながら奈子はうんうんと何度も頷いた。
そして食べながら考えるのはテイクアウトするケーキのこと。本当は全種類買って帰りたいが、今のお財布事情では無理がある。財布事情がなくてもさすがに全種類は無理だが……。
今日は2つまでにしておくか……奈子はガックリ肩を落とした。
「シュークリーム2つください!持ち帰りで」
悩んだ末にシュークリームにしたのは母親が好きだから。あと一つはもちろん自分が食べる為。

ドライアイスを多めに入れて貰い帰りはこれで安心だ。と奈子は自転車を走らせた。
(今日の私は機嫌が良い、たまには甘いものでも買ってってあげよう~~むふ)
おいしいケーキに心も胃袋も満たされた奈子の帰り道は幸せなものになった。

自転車の籠の中でシュークリームの入った袋が静かに揺れていた。

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