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プロローグ
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黒で染め上げられた謁見の間。その王座の前で魔王と勇者が対峙していた。
ひび割れた異形の面をつけ、片膝を付いている黒衣を纏う魔王。
そして白と紺のローブを纏い、銀色に輝く大きな魔玉のついた杖を油断なく掲げる勇者。
戦いは決していた。
「―お前の敗けだ、魔王。」
柔らかなアルトが謁見の間に響く。勇者ルシアはカツカツと音を立てながら、荒い息を吐きながらいまだこちらを鋭く睨み付ける魔王の前に立った。
「黙れ、勇者。例え俺が死のうともまた次の魔王が―」
「殺さない。お前には私の《人形使い》で呪いを埋め込んだ。私を殺すまでは死ぬことも、人間を殺すこともできない呪いだ。
いくら魔王とはいえ、王は王。今お前を殺してもやって来るのは一時の安寧と魔族の争いと混乱だ。そんなもののために、また駆り出されるのはごめんだ。
それに、『勇者に負けた魔王』のほうが、新しい魔王サマに出てこられるよりはこちらは何かとやり易いんでね。」
そう言い捨てると、唐突に魔王のつけていた面を剥ぎ取った。
「これはお前を倒した証しに持っていく。
じゃあ頑張れよ、魔王サマ?」
そう言ってくすりと笑った《人形使い》勇者ルシアはくるりと背を向けて歩き去って行った。
それが、およそ200年前のこと。
ひび割れた異形の面をつけ、片膝を付いている黒衣を纏う魔王。
そして白と紺のローブを纏い、銀色に輝く大きな魔玉のついた杖を油断なく掲げる勇者。
戦いは決していた。
「―お前の敗けだ、魔王。」
柔らかなアルトが謁見の間に響く。勇者ルシアはカツカツと音を立てながら、荒い息を吐きながらいまだこちらを鋭く睨み付ける魔王の前に立った。
「黙れ、勇者。例え俺が死のうともまた次の魔王が―」
「殺さない。お前には私の《人形使い》で呪いを埋め込んだ。私を殺すまでは死ぬことも、人間を殺すこともできない呪いだ。
いくら魔王とはいえ、王は王。今お前を殺してもやって来るのは一時の安寧と魔族の争いと混乱だ。そんなもののために、また駆り出されるのはごめんだ。
それに、『勇者に負けた魔王』のほうが、新しい魔王サマに出てこられるよりはこちらは何かとやり易いんでね。」
そう言い捨てると、唐突に魔王のつけていた面を剥ぎ取った。
「これはお前を倒した証しに持っていく。
じゃあ頑張れよ、魔王サマ?」
そう言ってくすりと笑った《人形使い》勇者ルシアはくるりと背を向けて歩き去って行った。
それが、およそ200年前のこと。
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2025/06/22
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