カゼショーグン

スエット02

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レッドカード

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あともう少し、丘を越えれば館がある。

途中、誰かいた。
「おじいちゃんは、だれ?」
「ワシがビンテージレッドカードじゃ。知らんのか?」
「知らんよ。寅之助は知ってるか?」
「名前は知っています。有名な方ですね」
「ワシがビートルズを追い返してやったんじゃ」
「いつの話だよ。つーか、デタラメだろ」
「ワシが帰れと言ったら、その内帰って行きおったわ」
「来日前は噂レベルで不良グループとも言われていたようですね。その不良グループが武道館を数日貸しきるとなると、騒動にもなるでしょうね。でも、その後音楽関係でも武道館はひとつの聖地になっていったようですね。どこかに置いてあった雑誌で読んだんですが、彼らはこれ迄と比べて武道館があまりにも静かだったので、自分たちのその頃の演奏を改めて知る事が出来たと語っていたようです」
レッドカードは違う話しを始めた。
「アップルには気をつけた方がよい。円盤で楽しむのはまだいいが、近頃はいつもアップルばかりみておるではないか。歩いておってもアップル、立ち止まってアップル、座ってアップル。なんなんじゃ、いったい。アップルには、おぬしら気をつけた方がよいぞ。しかしまあ、アップルやらウインドウやらフウエイやら国産はひとつもないじゃないか。大丈夫なのか? これが政治家たち、マスコミ、有識者の成果なのか」

「それで、何者なの?」
「ワシは昔、国会議員じゃった。その頃、世界中は醜い争いをやっておった。ワシはそんな争いに巻き込まれないよう主張したが、大勢は推進の流れで、マスコミも煽るばっかり。ワシは村八分状態じゃった。 そして争いは悲惨な結果で終わった」
「これから、復興しようという時、ワシは先頭に立たねばならんと思った。 しかし、とある日の事じゃった。いつものように階段を降り、新聞をみたのじゃ。そしたら何とワシが公職追放じゃと? 馬鹿げてる。いったい誰がワシを追放出来るんじゃ」
「そして多くの信念なき者が公職に復職し、信念なきマスコミが押し付けの正義を振りかざす。馬鹿げてる」
「ワシの信念は決して間違ってはおらん。その場しのぎしか出来ない今の政治家、いや、その場しのぎも出来ておらん。薄っぺらいうわべしかナゾれないマスコミ。ワシは間違ってはおらん。 しかしワシも、いつの間にか醜い騒動の渦中におった。嘗ての仲間、そして無関係の人までも巻き込み犠牲者まで出してしまった。とんでもない間違いだが、これは仕方のない事なんだと思った。しかし、何故だ」



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