世界に彩りを

蒼井 日向

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2. 誠実

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 これで何回目だろう。
 
 僕が彼女と一緒になって、こうやって花を送るのも。
 
 嬉しそうに笑顔で微笑んでくれるのを見るのも。



 
 

 初めては告白の時だった。僕はデート前に花屋に駆け込んだ。
 
「これから告白するんですけど、なにかいい花はあります?」
 
その時はまだ学生でそこまでお金のない僕にとっては、少しだけ背伸びしていた告白だった。
 
 花を買うなんて男の僕にとって初めてだったし、デートをしたのも好きになったのも初めてだった。


 

 当時乗っていた中古の車に彼女を乗せてドライブデートをした。
 その日は晴れていたので、海の方に行ってデートした。
 駐車場で彼女に告白をした。
 花束はトランクに隠していて、まっすぐに目を見て花束を差し出した。
 
「一生幸せにするから付き合ってください」
 
 
 その時の僕は顔も真っ赤だし手も震えていてお世辞にもかっこよくはなかったと思う。
「告白通り越してプロポーズだよ。でもよろしくお願いします」
 なんて言いながら彼女も顔を真っ赤にしながら嬉しそうに笑っていた。
 
 その表情は今でも忘れられない
 

 
 それから毎年、記念日には花を送っている。
 花を贈るときやっぱり彼女は嬉しそうに微笑んでくれる。
 

 彼女は気が付いているだろうか?
 毎年贈る花の本数が増えていることに。

 1年ごとに1本づつ本数を増やしていってる。

 
 初めて花を贈った時、末広がりの八ということで8本の花束だった。
 
 あの時の僕にとってはたったの8本でも背伸びをして、かっこつけていた。
 今では持つのが大変でになってしまった花束。



 
 少し前、僕はなじみの花屋に向かった。
 と言っても僕が花を買うのなんて、年に一回だからなじみと言っていいのかは分からないけれど……。

 ドアを開けると、上についている鈴がチリチリンと鳴った。
 その音ともに店員さんが反応する。
 
「いらっしゃいませ」
 
 奥の方から声が聞こえる。

「すみません。花の予約をお願いします」
「あ、今年もなんですね! ありがとうございます」
 
 店員さんがやってきた、どうやら顔を覚えてくれていたようだった。
 
「今年はフランネルフラワーを使った61本の花束をお願いします。」
「61本ですね。承りました。引渡しの日にちとイメージとかご予算とかありますか?」
 
「日付は6月18日にお願いします。実は今年金婚式でしてね、ウエディングをイメージした感じでお願いします。予算は3万くらいあれば足りますか?」
 
「金婚式ですか! お客様みたいな旦那様と一緒にいられるなんて、奥さまは幸せですね! その予算なら豪華な花束が出来ると思いますよ」

 
 店員さんはニコニコしながら、予約表を書いてくれている。
「花束は配送もございますが、どうなさいますか?」
「当日取りに来ます」
「それでは当日お待ちしていますね」

 
 こうして僕は花屋でウエディングをイメージしたフランネルフラワーの花束を予約した。



 
 僕と彼女が結婚して50年。
 
 告白から53年。
 
 僕は彼女の事をこれからも愛し続けるだろう。




 

 6月18日

 僕は昼食を食べてから花屋へ向かった。
 お店のドアを開けるとやっぱり、ベルが鳴る。

 ベルに反応して店員さんこちらを見た。

「いらっしゃいませ! お待ちしていました。」
 店員さんは花の入っている大きな冷蔵庫の中から一際大きい花束を取り出してくれた。
 
「ウエディングをイメージした花束ということで、フランネルフラワーをベースに白い花を使って作ってみました!」
「おー。ありがとう。素敵な花束を贈れそうだ」
 
 僕は想像以上の出来栄えに笑みをこぼした。
 
「ありがとうございます! 今日は素敵は日にしてくださいね」
 
 お金を支払いお店を後にした。

 花屋の前に駐車場していた車に乗り込んだ。
 大きな花束は後部座席に置いて、車を走らせた。


 しばらく車を走らせ、町外れまで来た。
 そこは木々に囲まれて、少しだけ高い丘の上にある景色のいい場所だ。
 今日は晴れてよかった。

 花束を持ち少し先にある目的の場所へ行った。
 少しするとすぐに着く。

 
 僕はカバンの中からお線香とライターを取り出し火をつけた。
 香炉にお線香を供えて、僕は花束を墓前に置いた。

 


「今年は結婚してから50年の金婚式だよ。気がついたら50年だ」
 
 返ってくるはずもない返事を僕は待った。
 
「僕は君に何も出来なかった、申し訳ない」

 花を贈ると笑顔になるそんな姿を思い出す。

 
「僕が行くまで待っていて欲しい。あの世でも僕は絶対君と出会ってみせるから」 

 
 僕は空を見上げた。
 見上げた空は澄んで綺麗だった。
 

 
 
 フランネルフラワーの花言葉は
 高潔
 いつも愛して
 誠実

 高潔な彼女にふさわしい。
 
 いつも愛しているし
 これからも僕は誠実に彼女だけを愛するだろう



 
 

 帰り際僕はなんとなく振り返って、墓を見た。
 
 そこには見えるはずもない彼女がそこにいた。
 
 彼女はやっぱり嬉しそうに微笑んでいた。








 
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