道端の花にだって、人生はある。

保科ゆみ

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むかしむかし、小さい頃によく聞いた御伽話。辛い思いをしていた女の子が、ある日魔法使いに出会って、素敵な王子様と出会う。でも、魔法は12時には解けてしまう。魔法が解けてしまう前に、王子様の前からいなくなる女の子。でも、王子様は、女の子の忘れていった物を手掛かりに、女の子を見つけ、幸せになる素敵な御伽話。


そんな風にいつか私にも王子様がと夢見ていた頃がありました。


ええ、ありました。



大人になるにつれて、そんな御伽話が、自分の身に起こるわけないって現実を知っていくのですから。



あの出来事から数ヶ月後



年に一度の花祭りがやってきました!
花祭りは、豊かな水源によってもたらされた穀物と色鮮やかな花で、実りある日々に感謝をする日です。豊穣祭りと似ているかもしれませんね。花祭りと言われる由縁は、この国を作った神様が花の神様であったという言い伝えからきています。その為、町中に色とりどりの花を飾り、花祭り当日は参加者全員が身体のどこかに花を付けて祝いの気持ちを示すのです。


そうです。花祭りです。花が大好きな私にとってこれ以上ないくらい幸せな日になるのですが。察しのいい方ならもうわかると思います。

花祭りは花が大量に注文される日。つまり、私の働いている花屋も例外ではなく、年に一度の繁忙期です。
ええ、それはもう、こんな田舎町の花屋も都会に駆り出される位なんです。
花束を作る。切花の手入れ。花の仕入れから、当日の出店準備に至るまで。この前の出来事を振り返る暇がないくらい大忙しでした。


都会の大きな噴水のある広場が、花祭りの会場となります。
今年もいつもの場所に出店をして、オーナーと交代で店番です。

花が散りばめられた噴水の周りには、たくさんの人で溢れかえっています。
お店も多く出店し、時々いい香りが鼻をくすぐります。お腹すいてきたなぁ。なんて考えていると、


「ミアー!!」


「クレア!」

クレアがマイケル様と一緒にお店に来てくれました。

「花屋さんも大変よね。あ、お腹空いてると思ってさっき買ったサンドイッチ、良ければ食べてね。」

「クレア良くわかってるーー!!ありがとうーー!!」


あの出来事があってからもずっとクレアは、私と仲良くしてくれて、気の合う親友というものは、出会った時間の長さなんて関係ないものなんですね。


「今日はマイケル様とデートなのね!」

「そうなの!ようやくよ!」

「仕事が忙しかったんだ。今日はきちんとその埋め合わせをさせてもらうよ。」


恋仲の2人は誰が見ても幸せそうで、少しだけ、ほんの少しだけ、あの時、彼ともう少しお話しが出来ていたらと妄想を膨らませてしまいます。いやいや、だめですね!今は仕事中!気合いを入れなくては!

「差し入れありがとう!楽しんできてね!」


「楽しんでくるわ!ミアも!今日は、貴族も一般市民も関係ないわ。素敵な出会いがあったら今度こそ逃しちゃだめよ!そして、私に1番に教えてね!」


「あははっ、そうだね!がんばりまーす!」


「じゃあ、またねー!」


優しく寄り添い合うクレアとマイケル様。ちょっと羨ましいその背中を見送り、花の手入れを再開し始めた時でした。


「すみません。この赤い薔薇を一本下さい。」


『この意味、わかるよな?』


似ている。あの時の彼の声に。
反射的にお客様の顔を見ます。ですが、あの時は仮面越し、彼の顔も名前さえも知らないのです。突然私が顔を上げたので、お客さんもびっくりした表情です。


「す、すみません!びっくりしてしまって!赤い薔薇を一本ですね!用意しますので、少しお待ちください。」


慌てて、薔薇の手入れに集中し、完成させて、彼に代金と引き換えに薔薇を渡します。


「ありがとうございました!良い一日を!」


「君は、もしかして、あの時の。」


「え?」


今、あの時のって言いましたか?え、本当にこの人があの仮面の男性だったのでしょうか?
確かに声色と背格好は似ていますが、瞳の色が違う気がするんです。彼は綺麗な漆黒だったのに、この方はグレーの瞳。でも、あの時のってことは、あの会場にいたということなのでしょうか?
色々な思考が頭の中で忙しなくよぎり、少し固まっていると、


「いや、あそこには貴族しかいなかったはずだ。このお嬢さんなわけがない。」


はい、そうです。聞こえてますー!一般市民が入れる場所ではなかったですからね!!なんかもう、ここまでハッキリ言われると悲しさを乗り越えてどうでも良くなってきますね!!
と心の中でツッコミを入れていると。


「花、買えたのか?」



この声は。


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