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ゆっくりと、声がする方に顔を向けます。その視線の先には、

「え、レオ?」


「あ。」


私の花屋の常連であるレオでした。


「レオ、知り合い?」

「あ、いや、まぁ、な。」


そういえば、あの出来事から今日まで、レオに会っていませんでしたね。
いや、それより、レオの声が彼の声だとなぜか直感でそう思ったのです。でも本当に、彼がレオだった?と疑問は深まるばかりです。私が考え込んでいる間も2人の会話は進みます。


「それよりも、レオって、この子に名前を教える程、仲が良いの?」


「いや、仕事でこの花屋を使うことがあっただけだ。」


「そんなに僕らの仕事では、花を何回も使わないでしょう。いつものレオならもう少し考えて発言してるはずですよ。何動揺してるんですか。」


「いや。」


「まぁ、一瞬僕もあの例の人なのかな?って思いましたけど。失礼ですけど、お嬢さんは一般市民の方ですよね?」


「・・・はい。そうです。」


私が元貴族だとしても、今現在は、一般市民なのだから、そう答える他ないです。


「・・・・」


レオは何か考え込んでいるようでした。
弟さんは、それには気付かず話続けます。


「そうですよね。失礼な質問をしてしまい、申し訳ありません。」


「いえいえ、大丈夫です。」


「それにしても、僕の直感よく当たる方なんだけどなぁ。今回は違ったみたいだ。」


今更かもしれませんが、もし、この方の言う通り、私があの日あの会場にいたとバレてしまえば、私は不法侵入に問われるし、何よりクレアに迷惑が掛かってしまう。それは困りますね!!
と、とにかく、今は状況の整理をして、1人で考える時間が欲しいですー!


「とりあえず、花は買えたし、レオ、行こうか。」


「ああ。」


良かった。これで1人の時間が持てると安心した瞬間。


ガシッと腕を掴まれました。
あれ?なんかこれデジャヴを感じちゃいますね。


「ミア、後で話したいことがある。噴水広場のベンチで待っててくれ。」


レオは私だけに聞こえるように耳元にそう言い残して、先程花を買った彼の後をゆっくり着いて行ったのでした。



残された恋愛経験のない私は、数秒遅れて、顔を真っ赤にしたのを、店先に並んでいる花達だけが目撃したのでした。
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