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第一章 聖女としての生活
第十話 下手な作り笑い
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息が、止まりそうになった。
幸太郎先生の言葉に驚いたからというものあるが、それよりもその表情が似ていたのだ。
道明僧正様。その人に。
蓋をしていた感情が零れてしまう。涙が数滴だけ頬を伝った。
好き。好きだった。もう会えないかもしれないあの人が。
聖女でいればいつかは会えると思っていた。けれど、本当は今すぐに全てを投げ捨てて彼の元へ行きたかった。
「聖女ちゃん?!大丈夫?!」
幸太郎先生が焦っているのが分かる。
返事をしなきゃと思う。でも、口を開いたらもっと泣いてしまいそうで、唇をぎゅっと噛み締めた。
道明様に会いたかった。触れたかった。名前を呼んで欲しかった。
愛しているから我慢した。けど愛しているから我慢したくなかった。
胸の中で嵐のように暴れる感情をグッと抑える。
駄目だ。私は聖女で、聖女はこんな風には泣かない。泣いてはいけない。
息を吸って吐いて無理やり整える。
大丈夫。大丈夫。まだ、大丈夫だ。
オロオロと焦る幸太郎先生に下手な作り笑いを浮かべて見せた。
「私、好きな人がいるんです」
どうしようもないくらい、彼のことが、彼のことだけが好きだった。
離れていても、他の人など考えられないほどに、彼だけを想っていた。
「だから、幸太郎先生とは良い同僚としてこれからもよろしくお願いしますね!」
もう少しだけ空元気で頑張るために、溢れだしそうになった感情を無理やりに心の奥に閉じ込め直す。それが、聖女としての正しい選択なのだから。
私の日課に治療所通いが加わって1週間。相変わらず医療所は患者も少なめで、元々治療所での患者は多くないため、おやつの時間には手が空いてしまった。
告白の後、幸太郎先生は何事も無かったように接してくれるので、気を使わなくていいのがとてもありがたい。
チャラチャラしていても無駄に歳を重ねていないということか。
いつもの若手4人で、この後何をしようかと取り留めもなく話をする。
そんな平和な日常は1人の乱入者によって崩されることになる。
「木村殿はおられるかー!火急の用でござるー!!」
1人のお侍さんが叫びながら飛び込んできた。
「火急の用」という言葉に心臓が飛び跳ねる。この言葉には悪い思い出しかない。
すぐに部屋から出てきた木村先生とお侍さんが二言ほど話をして、先生が振り返った。
「先生方!お集まりください!!」
鋭くて、今まで聞いたことの無い大きな声だった。医療所にいた先生方がすぐに木村先生の元へ走ってくる。
私も跳ねる心臓を抑えながらその中に加わった。
「川平にて大規模な火災があったとのことです」
木村先生が険しい顔で全員の顔を見渡す。
ごくりと誰かが唾を飲む音が聞こえた。
「殿より医師団派遣のご下命がありました。殿へご挨拶の後速やかに川平へ向かいます」
医師団派遣。木村先生に聞いたことがある。この八ツ笠以外の領地で震災などがあった際に駆けつけることがあると。今回がその時と言うことか。
「派遣する医師は私が選びます。無理だと思う先生は断ってください」
怖いくらい真剣な木村先生の表情の理由を、この時の私はちゃんと理解出来ていなかったと、後になって思う。
幸太郎先生の言葉に驚いたからというものあるが、それよりもその表情が似ていたのだ。
道明僧正様。その人に。
蓋をしていた感情が零れてしまう。涙が数滴だけ頬を伝った。
好き。好きだった。もう会えないかもしれないあの人が。
聖女でいればいつかは会えると思っていた。けれど、本当は今すぐに全てを投げ捨てて彼の元へ行きたかった。
「聖女ちゃん?!大丈夫?!」
幸太郎先生が焦っているのが分かる。
返事をしなきゃと思う。でも、口を開いたらもっと泣いてしまいそうで、唇をぎゅっと噛み締めた。
道明様に会いたかった。触れたかった。名前を呼んで欲しかった。
愛しているから我慢した。けど愛しているから我慢したくなかった。
胸の中で嵐のように暴れる感情をグッと抑える。
駄目だ。私は聖女で、聖女はこんな風には泣かない。泣いてはいけない。
息を吸って吐いて無理やり整える。
大丈夫。大丈夫。まだ、大丈夫だ。
オロオロと焦る幸太郎先生に下手な作り笑いを浮かべて見せた。
「私、好きな人がいるんです」
どうしようもないくらい、彼のことが、彼のことだけが好きだった。
離れていても、他の人など考えられないほどに、彼だけを想っていた。
「だから、幸太郎先生とは良い同僚としてこれからもよろしくお願いしますね!」
もう少しだけ空元気で頑張るために、溢れだしそうになった感情を無理やりに心の奥に閉じ込め直す。それが、聖女としての正しい選択なのだから。
私の日課に治療所通いが加わって1週間。相変わらず医療所は患者も少なめで、元々治療所での患者は多くないため、おやつの時間には手が空いてしまった。
告白の後、幸太郎先生は何事も無かったように接してくれるので、気を使わなくていいのがとてもありがたい。
チャラチャラしていても無駄に歳を重ねていないということか。
いつもの若手4人で、この後何をしようかと取り留めもなく話をする。
そんな平和な日常は1人の乱入者によって崩されることになる。
「木村殿はおられるかー!火急の用でござるー!!」
1人のお侍さんが叫びながら飛び込んできた。
「火急の用」という言葉に心臓が飛び跳ねる。この言葉には悪い思い出しかない。
すぐに部屋から出てきた木村先生とお侍さんが二言ほど話をして、先生が振り返った。
「先生方!お集まりください!!」
鋭くて、今まで聞いたことの無い大きな声だった。医療所にいた先生方がすぐに木村先生の元へ走ってくる。
私も跳ねる心臓を抑えながらその中に加わった。
「川平にて大規模な火災があったとのことです」
木村先生が険しい顔で全員の顔を見渡す。
ごくりと誰かが唾を飲む音が聞こえた。
「殿より医師団派遣のご下命がありました。殿へご挨拶の後速やかに川平へ向かいます」
医師団派遣。木村先生に聞いたことがある。この八ツ笠以外の領地で震災などがあった際に駆けつけることがあると。今回がその時と言うことか。
「派遣する医師は私が選びます。無理だと思う先生は断ってください」
怖いくらい真剣な木村先生の表情の理由を、この時の私はちゃんと理解出来ていなかったと、後になって思う。
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