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4章 優しい勘違い
21話 恋人のような時間
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「あの、さ・・・」
画面に表示される、翻訳された私の言葉。
見えないけれど、きっと彼もこの画面を見てくれている。
私の話す言葉を。
「あの儀式って、夜もするの・・・?」
伝わらないかもしれなくて、でも伝わるかもしれなくて。
そんな言葉をあえて選んだ。
彼が嫌なら断りやすいように。そうなった時に傷つかなくて済むように。
直ぐに返事がなくて、その間にドキドキと心臓の音が大きくなってきて。
「Motome-a shi-luan-ka?(したいですか?)」
アズー君の返事に、心臓がギュッとなった。
ギュッとしてドキドキで、息苦しいのに嬉しくて。
ただ小さく、頷いてみせた。
「Sia Te Wali Tani-o Azuu Sie-a shi-luan.(じゃあ服を脱いで)」
そう言ってから、彼はベッドから下りた。下りて、服を脱ぎ始めた。
気持ちが伝わった嬉しさと、受け入れてくれた嬉しさと、今から訪れるであろう時間への期待でもう羞恥心は吹き飛んでいって。
私も、服を脱いだ。
下着も全て、邪魔なものを脱ぎ捨てるように脱いだ。
ベッドに戻ってきたアズー君は当然のように裸で、裸のまま私の隣に足を投げ出して座る。
「Wa Laka-ni kiran-a shi-te Rakia-ma.」
促されるままに彼の足の間に座る。迎えてくれたのは背中を包むアズー君の体温。
「Yuma Warina-a shi-te, Raama-o Sia Sie-a shi-luan.」
耳の後から聞こえる、好きな人の囁き声。
服を脱いだ時にスマホがどこかに行ってしまった事に気づいたけど、もうどうでも良かった。
だってアズー君が、私に触れてくれたから。
腕を、撫でられる感触だけで息が震える。
彼がくれる心地良さに、体が悦んでいるのが分かった。
腕の次は、お腹。お腹の次は腰。
腰の次は、胸を、優しく揉まれて、でもその手つきがえっちな気がして。
儀式だって分かってる。
アズー君は儀式をしてくれているだけだって、分かってる。
分かってるんだよ・・・。
人の体って意外と丈夫で、「もう駄目」って思っても意外と大丈夫なんだなって言うのが、新しい発見。
ゆっくりのえっちって、何時間もかかるんだっていうのも、新しい発見。
あ、違うか。
アズー君がしてくれるのはえっちじゃなくて儀式だから。
ただの儀式だから。
だから、彼があんな目で私を見るのも、あんな声で私を呼ぶのも、私の事が好きだからってわけじゃないって知ってるの。
知ってて、勘違いしているの。
とても幸せな勘違いを、しているの。
まだ辺りが薄暗い中、隣に寝ていたアズー君の温もりがない事に気づいて、ぼんやりとした目で辺りを見渡した。
仕切り布の向こうで、彼はムワキになっていた。
あの綺麗なムワキになって佇んでいた。
私の方を見ていた気がしたけど、暗いし瞼が重いしでよく分からなくて。
やわらかな布団に吸い込まれるようにして、私の意識は眠りの中に落ちて行った。
もう一度目が覚めた時、なんだか不思議な感じだった。
窓から朝日が差し込んで、外から聞き取れない言語の、何人かが喋る声が聞こえて来て。
むき出しの木の柱と土壁でできた内装は、どこか秘密基地を連想させた。
調度品の質が良いせいで、グランピングという言葉も浮かんだ。
熱帯の気候だから裸で寝ていてもそこまで寒くはなかったようで、シーツが一枚掛けられていたのは、きっとアズー君が掛けてくれたからで。
汗の匂いと彼の匂いが混ざって、自分の体から香って来る。
体のあちこち、彼に触れられたところに彼の感触が残っていて、彼の吐息すらも鮮明に思い出せる。
こんなに穏やかな気持ちなのに、満たされているのに、彼を求める欲はしっかりとあって。
なんだか、新婚の初夜の翌朝みたいな、そんな不思議な感じ。
自分で思いついた自分の突拍子もない考えにくすぐったい気持ちになりながら服を着た。
肌が隠れると寂しいような気もしたけど、キターニ族は露出する文化はないから服を着ていないと不審者だ。
服を着てからスマホを探すと、ベッド脇に転がっていた。
起動したままだったはずの翻訳アプリは、自動で省エネモードにでもなるのか、まだ充電が残っていて、急ぎのメールが来ていない事だけを確認して・・・。
嫌な人からのメールはいったん放っておこう。
ベッドから下りて仕切り布の向こうに移動する。充電器を荷物から引っ張り出そうと思ってそちらに向かっていると、机の上に私のノートが広げてあるのに気付いた。
昨日は閉じて寝たはずなのに、開いてた。
しかも、アズー君の姿を描いた、あのページだった。
アズー君が見てたのだろうか?まだこれラフ画だし、ちゃんと見てくれるならちゃんと描くのにな。
画面に表示される、翻訳された私の言葉。
見えないけれど、きっと彼もこの画面を見てくれている。
私の話す言葉を。
「あの儀式って、夜もするの・・・?」
伝わらないかもしれなくて、でも伝わるかもしれなくて。
そんな言葉をあえて選んだ。
彼が嫌なら断りやすいように。そうなった時に傷つかなくて済むように。
直ぐに返事がなくて、その間にドキドキと心臓の音が大きくなってきて。
「Motome-a shi-luan-ka?(したいですか?)」
アズー君の返事に、心臓がギュッとなった。
ギュッとしてドキドキで、息苦しいのに嬉しくて。
ただ小さく、頷いてみせた。
「Sia Te Wali Tani-o Azuu Sie-a shi-luan.(じゃあ服を脱いで)」
そう言ってから、彼はベッドから下りた。下りて、服を脱ぎ始めた。
気持ちが伝わった嬉しさと、受け入れてくれた嬉しさと、今から訪れるであろう時間への期待でもう羞恥心は吹き飛んでいって。
私も、服を脱いだ。
下着も全て、邪魔なものを脱ぎ捨てるように脱いだ。
ベッドに戻ってきたアズー君は当然のように裸で、裸のまま私の隣に足を投げ出して座る。
「Wa Laka-ni kiran-a shi-te Rakia-ma.」
促されるままに彼の足の間に座る。迎えてくれたのは背中を包むアズー君の体温。
「Yuma Warina-a shi-te, Raama-o Sia Sie-a shi-luan.」
耳の後から聞こえる、好きな人の囁き声。
服を脱いだ時にスマホがどこかに行ってしまった事に気づいたけど、もうどうでも良かった。
だってアズー君が、私に触れてくれたから。
腕を、撫でられる感触だけで息が震える。
彼がくれる心地良さに、体が悦んでいるのが分かった。
腕の次は、お腹。お腹の次は腰。
腰の次は、胸を、優しく揉まれて、でもその手つきがえっちな気がして。
儀式だって分かってる。
アズー君は儀式をしてくれているだけだって、分かってる。
分かってるんだよ・・・。
人の体って意外と丈夫で、「もう駄目」って思っても意外と大丈夫なんだなって言うのが、新しい発見。
ゆっくりのえっちって、何時間もかかるんだっていうのも、新しい発見。
あ、違うか。
アズー君がしてくれるのはえっちじゃなくて儀式だから。
ただの儀式だから。
だから、彼があんな目で私を見るのも、あんな声で私を呼ぶのも、私の事が好きだからってわけじゃないって知ってるの。
知ってて、勘違いしているの。
とても幸せな勘違いを、しているの。
まだ辺りが薄暗い中、隣に寝ていたアズー君の温もりがない事に気づいて、ぼんやりとした目で辺りを見渡した。
仕切り布の向こうで、彼はムワキになっていた。
あの綺麗なムワキになって佇んでいた。
私の方を見ていた気がしたけど、暗いし瞼が重いしでよく分からなくて。
やわらかな布団に吸い込まれるようにして、私の意識は眠りの中に落ちて行った。
もう一度目が覚めた時、なんだか不思議な感じだった。
窓から朝日が差し込んで、外から聞き取れない言語の、何人かが喋る声が聞こえて来て。
むき出しの木の柱と土壁でできた内装は、どこか秘密基地を連想させた。
調度品の質が良いせいで、グランピングという言葉も浮かんだ。
熱帯の気候だから裸で寝ていてもそこまで寒くはなかったようで、シーツが一枚掛けられていたのは、きっとアズー君が掛けてくれたからで。
汗の匂いと彼の匂いが混ざって、自分の体から香って来る。
体のあちこち、彼に触れられたところに彼の感触が残っていて、彼の吐息すらも鮮明に思い出せる。
こんなに穏やかな気持ちなのに、満たされているのに、彼を求める欲はしっかりとあって。
なんだか、新婚の初夜の翌朝みたいな、そんな不思議な感じ。
自分で思いついた自分の突拍子もない考えにくすぐったい気持ちになりながら服を着た。
肌が隠れると寂しいような気もしたけど、キターニ族は露出する文化はないから服を着ていないと不審者だ。
服を着てからスマホを探すと、ベッド脇に転がっていた。
起動したままだったはずの翻訳アプリは、自動で省エネモードにでもなるのか、まだ充電が残っていて、急ぎのメールが来ていない事だけを確認して・・・。
嫌な人からのメールはいったん放っておこう。
ベッドから下りて仕切り布の向こうに移動する。充電器を荷物から引っ張り出そうと思ってそちらに向かっていると、机の上に私のノートが広げてあるのに気付いた。
昨日は閉じて寝たはずなのに、開いてた。
しかも、アズー君の姿を描いた、あのページだった。
アズー君が見てたのだろうか?まだこれラフ画だし、ちゃんと見てくれるならちゃんと描くのにな。
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