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第二章 お喋りな情報提供者
第十七話 黒幕からのお呼び出し
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お昼ご飯を挟みつつまばらに訪れる怪我人病人を治し、食料が増えたり減ったりしていた夕方頃。患者が途切れたタイミングで身なりの良いお侍様が現れた。
警戒したのは数秒だけ。智久さんは私の傍に来てくれたけど、そのお侍様は刀を抜くでもなくただ礼儀正しく頭を下げたから。
「そこもとが小瑠璃殿でござるか?」
「はい」
「某は庄屋の遣いの者。明日の正午過ぎにお招きしたく参じた次第。お請けいただけますな?」
悩むふりをして、少しだけお侍様の心を読んだ。
見えてきた映像に、一松の作戦が上手く進んでいる事を確信する。
「お請けいたします」
「ではまた明日迎えに上がりまする」
端的に用件だけを告げて帰っていく姿に、お侍様ってみんなこうなんだろうかと少し笑ってしまった。智久さんも口数が少ないというか、必要最小限しか喋らないよね。
「ねねね!今のまずいんじゃないの?いいのかいあんなにすんなりと請けちゃって??」
逆にこの人は口数が多すぎるよね。
「玄さん、庄屋って何でしたっけ?」
「えー!庄屋ってったら、この河入を取り仕切るお役人だろうよ。そんな事も知らずに請けちまったのかい?あーもー何てこったい!」
河入を取り仕切るお役人か。黒峰城城主様が知事的な感じだから、庄屋は町長とかそこら辺かな?
河入はそこそこの大きさの町だから、庄屋もそこそこ権力を持っていそうだ。意外と大物が釣れたな。
「小瑠璃様」
確認のために近くに来てくれた一松に頷いて見せる。
何か言っている玄さんはとりあえず放っておこう。
「うん、庄屋が黒幕みたい。細くて背が低めのおじいちゃんって感じの人」
「庄屋・・・」
一松の顔は曇っていた。
そんな私たちの雰囲気を察してくれたのか、智久さんは窓を閉め始めてくれる。
「行かぬ方が良いです」
「何で?」
「ちょっと小瑠璃!あんたあたしの話聞いてなかったろ!」
しまった。玄さんへ相槌打つのを忘れて無視してたのを気づかれてしまった。
目も合わないのにずっとしゃべり続けていた玄さんも玄さんだが、適当な扱いをしてしまった私も私だ。
ここは、愛想笑いでも浮かべておくか。
「ごめんなさい?」
「もう!いいけどさ!女の身勝手を許すのも男の甲斐性だからね!」
「で、庄屋について何か知ってるんですか?」
「あーもー!本当に悪い女だこと・・・」
急に声のトーンを落とした玄さんに釣られて視線をさ迷わすと、ちょうど治療所の施錠も終わったところだった。
締め切ったお陰で夕ご飯のいい匂いが漂ってくる。草順が作ってくれてるのは・・・親子丼だろうか?
「いいかい、よく聞きなよ」
声を潜めた玄さんに少しだけ顔を寄せた。
「庄屋の嶋原様は、ここ鹿谷以外の土地の商人とも繋がりがあるんだよ。噂では御所の方とも親しいとか」
「御所」の言葉に、皇后様のお手紙に書かれていた内容が思い起こされる。これってもしかして大物どころじゃないレベルの相手なんじゃないだろうか。
「以前から怪しい事してるんじゃないかって言われてたけど、庄屋としての警備だけじゃなくて個人的に浪人も雇ってるから探るのも容易じゃないんだよ。分かるだろ?」
一松は頷いたけど、これってもしかして正規の手段で面会しても殺されちゃうかもしれないって事?
町長なのに?明らかに怪しいのに?上の立場の人はそんな人物を放っておいてるってこと?
上の人物・・・って、黒峰城城主様か!
確かにあの決断力が低くて頼りない感じ、あの方なら放っておくかもしれない・・・。
「陳述書を送っても、お国はなんにもしてくりゃあしないんだよ。あたしも動いちゃいたけど、さすがに嶋原様相手にバレずに探るのは限界があってね」
陳述書なんて話、黒峰城城主様からは聞いていない。
握りつぶされて届かなかったのか、それともあの方がスルーしていただけか・・・。どちらの可能性もあるのが自分事のように申し訳なくなってくる。
「あの智久さんってお侍の腕がめっぽう強いのはあたしにも分かるけど、多勢に無勢だろ?どうしても嶋原様に目にもの見せてやりたいってんならもっと数を集めて来なきゃ無理だよ」
「数、ですか・・・」
玄さんには話していなかったけど、私には権力の後ろ盾はあっても力でごり押しできるほどの武力はない。
護衛は智久さん一人。光来寺には僧兵はいないから、武力でどうにかするには皇后様にお願いして派遣してもらうしかない。
皇后様からは典侍としての立場をいただいていて、必要な人員物資を要請しても良いという権限を持ってはいるが、要請してもすぐに来れないだろうし、このためだけに何人ものお侍様を雇うのは現実的ではない気がする。
警戒したのは数秒だけ。智久さんは私の傍に来てくれたけど、そのお侍様は刀を抜くでもなくただ礼儀正しく頭を下げたから。
「そこもとが小瑠璃殿でござるか?」
「はい」
「某は庄屋の遣いの者。明日の正午過ぎにお招きしたく参じた次第。お請けいただけますな?」
悩むふりをして、少しだけお侍様の心を読んだ。
見えてきた映像に、一松の作戦が上手く進んでいる事を確信する。
「お請けいたします」
「ではまた明日迎えに上がりまする」
端的に用件だけを告げて帰っていく姿に、お侍様ってみんなこうなんだろうかと少し笑ってしまった。智久さんも口数が少ないというか、必要最小限しか喋らないよね。
「ねねね!今のまずいんじゃないの?いいのかいあんなにすんなりと請けちゃって??」
逆にこの人は口数が多すぎるよね。
「玄さん、庄屋って何でしたっけ?」
「えー!庄屋ってったら、この河入を取り仕切るお役人だろうよ。そんな事も知らずに請けちまったのかい?あーもー何てこったい!」
河入を取り仕切るお役人か。黒峰城城主様が知事的な感じだから、庄屋は町長とかそこら辺かな?
河入はそこそこの大きさの町だから、庄屋もそこそこ権力を持っていそうだ。意外と大物が釣れたな。
「小瑠璃様」
確認のために近くに来てくれた一松に頷いて見せる。
何か言っている玄さんはとりあえず放っておこう。
「うん、庄屋が黒幕みたい。細くて背が低めのおじいちゃんって感じの人」
「庄屋・・・」
一松の顔は曇っていた。
そんな私たちの雰囲気を察してくれたのか、智久さんは窓を閉め始めてくれる。
「行かぬ方が良いです」
「何で?」
「ちょっと小瑠璃!あんたあたしの話聞いてなかったろ!」
しまった。玄さんへ相槌打つのを忘れて無視してたのを気づかれてしまった。
目も合わないのにずっとしゃべり続けていた玄さんも玄さんだが、適当な扱いをしてしまった私も私だ。
ここは、愛想笑いでも浮かべておくか。
「ごめんなさい?」
「もう!いいけどさ!女の身勝手を許すのも男の甲斐性だからね!」
「で、庄屋について何か知ってるんですか?」
「あーもー!本当に悪い女だこと・・・」
急に声のトーンを落とした玄さんに釣られて視線をさ迷わすと、ちょうど治療所の施錠も終わったところだった。
締め切ったお陰で夕ご飯のいい匂いが漂ってくる。草順が作ってくれてるのは・・・親子丼だろうか?
「いいかい、よく聞きなよ」
声を潜めた玄さんに少しだけ顔を寄せた。
「庄屋の嶋原様は、ここ鹿谷以外の土地の商人とも繋がりがあるんだよ。噂では御所の方とも親しいとか」
「御所」の言葉に、皇后様のお手紙に書かれていた内容が思い起こされる。これってもしかして大物どころじゃないレベルの相手なんじゃないだろうか。
「以前から怪しい事してるんじゃないかって言われてたけど、庄屋としての警備だけじゃなくて個人的に浪人も雇ってるから探るのも容易じゃないんだよ。分かるだろ?」
一松は頷いたけど、これってもしかして正規の手段で面会しても殺されちゃうかもしれないって事?
町長なのに?明らかに怪しいのに?上の立場の人はそんな人物を放っておいてるってこと?
上の人物・・・って、黒峰城城主様か!
確かにあの決断力が低くて頼りない感じ、あの方なら放っておくかもしれない・・・。
「陳述書を送っても、お国はなんにもしてくりゃあしないんだよ。あたしも動いちゃいたけど、さすがに嶋原様相手にバレずに探るのは限界があってね」
陳述書なんて話、黒峰城城主様からは聞いていない。
握りつぶされて届かなかったのか、それともあの方がスルーしていただけか・・・。どちらの可能性もあるのが自分事のように申し訳なくなってくる。
「あの智久さんってお侍の腕がめっぽう強いのはあたしにも分かるけど、多勢に無勢だろ?どうしても嶋原様に目にもの見せてやりたいってんならもっと数を集めて来なきゃ無理だよ」
「数、ですか・・・」
玄さんには話していなかったけど、私には権力の後ろ盾はあっても力でごり押しできるほどの武力はない。
護衛は智久さん一人。光来寺には僧兵はいないから、武力でどうにかするには皇后様にお願いして派遣してもらうしかない。
皇后様からは典侍としての立場をいただいていて、必要な人員物資を要請しても良いという権限を持ってはいるが、要請してもすぐに来れないだろうし、このためだけに何人ものお侍様を雇うのは現実的ではない気がする。
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