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第七章 重たい荷物
第五十三話 背負いながら生きるという事
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浮かない顔の一松をよそに、楠木は普通に食べてるから、これって精神力の差なのだろうか?
あの智久さんだって箸の進みが遅いというのに、この人私より食べるペース速いしね。
媚薬の効果を一番まともに食らったであろう玄さんは戻ってない。多分誰かしらの、女の人の家にでも転がり込んでるんだろうけど、まぁあの人は放っておいても自分でどうにかできそうだから問題ないだろう。
昨日と同じお肉なのに、昨日と少し違う香辛料の味。香辛料って確か薬にもなるんだっけ?
媚薬っていうのも、元々薬として使ってたらしいし、ジビエは栄養あるから調理方法が広まれば害獣問題も緩和されそう・・・。
というか、猪養殖して豚生み出しちゃう?
安定的に確保できるお肉は凄い助かるよなぁ・・・。
ご飯が炊き込みご飯なのは、多分稲作をあまりしていなくて白ご飯が貴重だからだ。
メニューに工夫が見られるのは凄く勉強になる。郷土料理ってこうやってその土地で採れる物をいかにおいしく食べるかを考えた末に生み出されたものだしね。
・・・あれ?これって思っていた以上に収穫は大きかったかも?
なんて、考え事をしながら食べていると、あっという間にお腹いっぱいになる。
出された料理はまだ半分は残っている。幸い日持ちしそうなものばかりなので、お弁当にでもしてもらおう。
箸を置いて「ご馳走様でした」と手を合わせて。そしたら妙に静かな事に気づいた。
周りを見ると、みんな食べ終わっていたみたいで、そして全員、何かを待つように私に顔を向けていた。
考え事はしてたけど、ご飯中だったから独り言は洩れていないはず。
けれどこちらに注がれる三対の眼差しは、確実に何かを私に求めていた。
「小瑠璃様」
そう楠木が口火を切ったことで、求められている物の正体が分かる。
そうか、そうだ。私だ。
彼らを裁くのは、聖女でなくてはいけない。
河入のように被害が明確だったり相手が庄屋であれば、前回のように城主様経由でお役人に罰則を与えてもらうこともできるだろう。
けれども、この村での被害は不透明だ。一次被害者は名乗り出ないだろうし、二次の被害は調査が不可能に近い。
その上、彼らは一般人。不満を持っているお上に罰なんて与えられたら、更なる不満が膨れ上がるだろう。
だから、聖女が裁かなければならないのだ。
非公式の、どこにも属さない存在の私が、この為に必要なのだ。
「ご判断を」
「お前の力量を見てやる」と言わんばかりの楠木の視線。彼の挑発のお陰で、一歩踏み出すのにためらいは生まれなかった。
また背負うものが増える。
増えるけど、辛くはない。
「うん、分かった」
これも、道明様と共に背負う業のうちの一つでしかないのだから。
「じゃあ、まずは村長への制裁だけど・・・」
------
その日、朝から胸騒ぎがしていて、その胸騒ぎは日が一番高くなった時には気づかない振りできないほどになっていた。
雨が降るという感じではない。山が火を噴くにしては穏やか過ぎる。
それに何だか、胸騒ぎの原因が近づいてきているような気がする。
だから、側仕えを押しのけるようにして縁側に出た。
斜面に広がるおかげで、館の縁側から一望することができる私の村。
近頃は調味料を求めて商人が来る事もあるし、占いや呪いを求めてわざわざ遠くから来る人もいるから、お客さんが訪れるのは珍しいことでは無い。
そのお客さんも、お坊さん三人と男の人が二人という少し珍しい組み合わせという事以外は特におかしなことは無くて。
でも、私の視線に気づいたかのようにこちらを見たお坊さんは、違った。
一瞬で、違うと分かった。
あの人は普通の人じゃない。
そこだけ浮き出るような存在感は、初めて見るのに特別な人であると分かって、胸騒ぎは最高潮に達して。
その後は、多分倒れたんだと思う。
いつもそうだから。
この不自由な体は、感情が高ぶってしまった程度でいつも気を失ってしまうのだから。
あの智久さんだって箸の進みが遅いというのに、この人私より食べるペース速いしね。
媚薬の効果を一番まともに食らったであろう玄さんは戻ってない。多分誰かしらの、女の人の家にでも転がり込んでるんだろうけど、まぁあの人は放っておいても自分でどうにかできそうだから問題ないだろう。
昨日と同じお肉なのに、昨日と少し違う香辛料の味。香辛料って確か薬にもなるんだっけ?
媚薬っていうのも、元々薬として使ってたらしいし、ジビエは栄養あるから調理方法が広まれば害獣問題も緩和されそう・・・。
というか、猪養殖して豚生み出しちゃう?
安定的に確保できるお肉は凄い助かるよなぁ・・・。
ご飯が炊き込みご飯なのは、多分稲作をあまりしていなくて白ご飯が貴重だからだ。
メニューに工夫が見られるのは凄く勉強になる。郷土料理ってこうやってその土地で採れる物をいかにおいしく食べるかを考えた末に生み出されたものだしね。
・・・あれ?これって思っていた以上に収穫は大きかったかも?
なんて、考え事をしながら食べていると、あっという間にお腹いっぱいになる。
出された料理はまだ半分は残っている。幸い日持ちしそうなものばかりなので、お弁当にでもしてもらおう。
箸を置いて「ご馳走様でした」と手を合わせて。そしたら妙に静かな事に気づいた。
周りを見ると、みんな食べ終わっていたみたいで、そして全員、何かを待つように私に顔を向けていた。
考え事はしてたけど、ご飯中だったから独り言は洩れていないはず。
けれどこちらに注がれる三対の眼差しは、確実に何かを私に求めていた。
「小瑠璃様」
そう楠木が口火を切ったことで、求められている物の正体が分かる。
そうか、そうだ。私だ。
彼らを裁くのは、聖女でなくてはいけない。
河入のように被害が明確だったり相手が庄屋であれば、前回のように城主様経由でお役人に罰則を与えてもらうこともできるだろう。
けれども、この村での被害は不透明だ。一次被害者は名乗り出ないだろうし、二次の被害は調査が不可能に近い。
その上、彼らは一般人。不満を持っているお上に罰なんて与えられたら、更なる不満が膨れ上がるだろう。
だから、聖女が裁かなければならないのだ。
非公式の、どこにも属さない存在の私が、この為に必要なのだ。
「ご判断を」
「お前の力量を見てやる」と言わんばかりの楠木の視線。彼の挑発のお陰で、一歩踏み出すのにためらいは生まれなかった。
また背負うものが増える。
増えるけど、辛くはない。
「うん、分かった」
これも、道明様と共に背負う業のうちの一つでしかないのだから。
「じゃあ、まずは村長への制裁だけど・・・」
------
その日、朝から胸騒ぎがしていて、その胸騒ぎは日が一番高くなった時には気づかない振りできないほどになっていた。
雨が降るという感じではない。山が火を噴くにしては穏やか過ぎる。
それに何だか、胸騒ぎの原因が近づいてきているような気がする。
だから、側仕えを押しのけるようにして縁側に出た。
斜面に広がるおかげで、館の縁側から一望することができる私の村。
近頃は調味料を求めて商人が来る事もあるし、占いや呪いを求めてわざわざ遠くから来る人もいるから、お客さんが訪れるのは珍しいことでは無い。
そのお客さんも、お坊さん三人と男の人が二人という少し珍しい組み合わせという事以外は特におかしなことは無くて。
でも、私の視線に気づいたかのようにこちらを見たお坊さんは、違った。
一瞬で、違うと分かった。
あの人は普通の人じゃない。
そこだけ浮き出るような存在感は、初めて見るのに特別な人であると分かって、胸騒ぎは最高潮に達して。
その後は、多分倒れたんだと思う。
いつもそうだから。
この不自由な体は、感情が高ぶってしまった程度でいつも気を失ってしまうのだから。
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