聖女の私にできること第四巻

藤ノ千里

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第六章 二度目の視察

第五十二話 夢と現実と苦界と

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 ちょっとインモラルな夢を見た。
 ・・・いや、ちょっとじゃないか。
 そこそこインモラルな夢を見た。
 まぁ、私も成人女性だしね。エッチな夢を見ることくらいはたまにはあるよね。
 でもまさか、現夫とイチャついてる時に前夫が登場するなんて。その上まさかそういう展開になるなんて。
 前夫の、優翔ヨシト君を受け入れてしまうなんて・・・。
 彼の強引な所が、嫌じゃなかった。
 肌を重ねる時にいつも「愛してる」と囁いてくれるのが、好きだった。
 優翔君が、ヨシ君が好きで、でも今の私には道明様がいて。
 だから駄目なのに、忘れかけていた優君の温もりに、私は確かに悦びを感じてしまったんだ。


 ゆっくりと意識が覚醒して行くに連れて、先ほどまでの破廉恥過ぎる体験が夢だったという事に気づいた。
 でも、夢であったとしても妙に生々しくて、しかも非現実的だと馬鹿にできなくらいにはあの感覚が胸の内にまだ残っていて。
 ふーっと吐き出す息にも、行為の余韻が残っているような気すらした。
 記憶ではなく実感としてまだ体が覚えているような変な感覚。
 そういえば昨晩媚薬を盛られたんだった。そのせいか、あんな夢を見てしまったのは。
 夢は本人の願望をそのまま見せるものではないし、夢の中の行動も本人の欲求そのままではない。
 と言う事は、知っている。
 知っていても、恥ずかしい。誰にも言えなくらいめちゃくちゃ恥ずかしい。
 え、だってあれっていわゆる三人でってやつでしょ・・・?
 え、しかもお尻を、優君にだって許したことないお尻を使ってたよね??
 いや、優君にだって許してないどころじゃない。そういう事に使った事なんて一度たりともないよ???
 知識としては知っていたけど、したこともなければ見たこともないんだよ?!
 なのに、なのにあんな夢を見てしまうなんて・・・!!!
 恥ずかしすぎて布団の中で悶えてしまう。
 そんな私に声をかけてきたのは、クールと言う言葉がぴったりの楠木だったのであった。
「小太郎、疾く支度をせよ」
「・・・はい」


 夜通し被害者を集計していたらしい村長は、一睡も許されないまま私が起きるのを待たされていたらしい。
 服を整えて昨晩と同じように楠木の隣に座ると、襖の近くに控えていた智久さんが襖を開けてくれて、その向こうには昨晩よりやつれた様子の村長と店主が座っていた。
 やつれていても、お行儀よく座っていたし、目がちょっとバキバキだった。
 正直ちょっと気持ち悪かった。だって、楠木がニコリとしただけで明らかに彼らのテンションが急上昇したから。
「私が昨晩言いつけた事をきちと覚えておるか?」
「はい!もちろんです!」
「聞こう」
 忠犬みたいに嬉々として犯行詳細を語る村長と店主。
 それを、爽やかスマイルで優しく聞いてあげる楠木。
 嘘を言わないか確認するためおじいちゃんたちの心を読んだんだけど、一瞬でもう気持ち悪くなって止めたよね。
 カルト教団の信者ってあんな感じの心境なのかも。知らないけど。
 で、楠木教のお陰で分かった事実としては、元々この村では鹿や猪肉を食べるために香辛料を使う文化があったらしい。
 媚薬に使う薬草は、向精神薬の様な感じで民間療法として使われてきたようで、気疲れした旅人に使ったところ女の人を求められたという経験から、旅人に媚薬を盛ったりお酒を飲ませて女の人を買わせるという手法を思いついたんだとか。
 でも、立地的にそんなに頻繁に旅人も来ない。それに昨年の夏の飢饉のせいで、冬になる頃にはお金も食料も底を尽きかけたんだとか。
 そこで思いついたのが、お札詐欺だったらしい。
 被害者は四人。でも、そのうちの一人である商人が手広く売って回っているらしく、聞く限りは私たちが立ち寄った集落でお札を売ったのもその商人のようだ。
 貧困からの犯罪。
 冷血漢にも見える楠木はどう裁くのだろうと伺っていると、意外にも従順な人にはお優しいらしく、いったん帰っていいと仰られていた。
 犯人代表二人を返した後、昨晩と同じくらい豪華な朝ご飯を出されて。それにはさすがに苦笑が漏れた。
 でも念のためお茶の味を確かめてみると、今日のはちゃんと緑茶だった。
 お酒もなかったし、ってことは精が付きそうな料理はこの村では普段通りなのかもしれない。
「いただきます」
 出されたからには美味しくいただこうと、炒めた猪肉から口に入れる。咀嚼しながらふと横を見ると、一松と目が合う。
 可愛そうに、食べても大丈夫なのか分からず困っているようだ。
「媚薬盛られてたの昨日のお茶だけだったみたいだから今日のご飯は食べても大丈夫だよ」
「そう、か・・・」
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