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第2章 成人祝いのパーティ
16話 魂胆
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煩雑な思考を抱えながら朝食をとり、お客人方の対応に加わろうと思っていた。が、更なる面倒が重なる事になる。
何でもシモン様が「我がロッツランドの船」をご紹介くださるとの事で、私をご指名くださったのだ。
あの船の情報は是非とも欲しい。だが引き換えに何かしらを要求される事は目に見えている。
そして、それはきっと……。
「お待たせいたしました」
何食わぬ顔で庭園に行くと、シモン様は庭木を鑑賞されておいでだった。
頂いたばかりのあの植物は、ロッツランド王国の隣国の、キリガン王国より贈られたもの。
当然見知った植物であられるはずだが、それがここにある意味でも考えておいでだったのだろうか?
「おはようございますレーカ様。本日はドレスはお召しになられなかったのですね」
「おはようございますシモン様。船上でドレスは無作法でございますでしょう?」
王族としての品格はありつつ動きやすい服を選んだが、シモン様は話題に出しこそすれご興味はなさそうで。
社交辞令と言うやつなのだろうと、理解した。
「確かに。では早速ご案内させていただきます」
港の方を向いたシモン様に並び立つと、腕を差し出された。
おそらくエスコートしてくださるつもりなのだろうが、気づかないフリで無視をした。
港にて存在感を露わにするロッツランド王国の船。
その甲板を踏むことが許されたのは、案の定私1人。
代わりに、シモン様の護衛も下がり、2人きりで船上を巡る事になった。
「砲台の数が少し少ないのですね」
「えぇ、機動力を上げる代わりに減らしました。砲台ばかりが多いノロマな亀では困りますので」
「あれは?」
「狼煙です。緊急時は口頭伝達より早い事もあるので」
会話が漏れることもない船上で、人目もほとんどない船上で、シモン様は機密にも当たりそうな船の構造をある程度教えてくださった。
「操船に必要な最小人数は?」
「それは流石に話せません」
最重要と思われる質問は却下されたが、であっても気分を害されることもなく、私がどれほど聞いてくるかを試しているようでもあられた。
「補給無しでの最長航海日数は?」
「それも話せません」
「ロッツランド王国の港からここまでの所要時間は?」
「それは……」
歩きながらの会話が止まり、案内されたのは操舵室。
正気か?この男。
ハリボテの操舵室ではなさそうだが……。
用心しつつ足を踏み入れると、見た事のない装置がいくつも並んでいた。その上、操舵室からの見晴らしはあまり良いものとは言えなかった。
「今回は慎重に進んだので31時間かかってしまいました。ですが想定では24時間を切る事も可能です」
シモン様を振り返ると、試すような、計るような目が私を捉えていて。
多少数字を誤魔化していたところで我が国にとっては障壁でしかない問題に、私がどう対処するのかを品定めしているのだと分かった。
「想定とは?」
「ノイマン公国の操船技術を持つ貴女が舵を握った場合の想定です」
「私……?」
「えぇ、レーカ姫。貴女が、です」
「お話の意図が分かりませんわ」
「貴女にご協力頂き、ノイマン公国の操船のデータを取らせていただきたいのです。もちろん見返りはご用意いたします」
「ご冗談を」
「私は冗談は言いませんよ、レーカ姫」
表情を変えず淡々と喋るシモン様の姿に、あの白薔薇が思い出される。
そうか、「相応しい」とはこの事か。
「見返りとは?」
「我がロッツランド王国の第一友好国としてノイマン公国の名を刻みましょう。その証として私が貴女の王婿となる事も検討しています」
王婿。つまり女王の婿。
私がノイマン王となった暁にはその婿になってやると宣ってらっしゃるらしい。この方は。
「操船技術の代わりにご自身を?」
「当面はそうですが、ゆくゆくはあのリーガ海峡を両国で管理するつもりです」
喋り続けるシモン様は、私の予想を遥かに超えた情報を口にされ続けていて。
驚きもあり、疲れもあり、そのせいで思考が追いつかない。
追いつけない。
「リーガ海峡と言うのは貴女方が『死の海』と仰るあの、海です。ご存知ではないかと思いますが、あの海峡は地理上南北を結ぶのにとても良い位置にあるので、あと10年もすれば各国の船が航路として利用するようになるでしょう。それまでにリーガ海峡を独占しておきたいのです」
断片的にしか頭に入らない情報。
けれどシモン様の意図だけは確かに伝わってきた。
「通行料を取ると?」
「まさか。護衛のための、水先案内の手数料ですよ」
何でもシモン様が「我がロッツランドの船」をご紹介くださるとの事で、私をご指名くださったのだ。
あの船の情報は是非とも欲しい。だが引き換えに何かしらを要求される事は目に見えている。
そして、それはきっと……。
「お待たせいたしました」
何食わぬ顔で庭園に行くと、シモン様は庭木を鑑賞されておいでだった。
頂いたばかりのあの植物は、ロッツランド王国の隣国の、キリガン王国より贈られたもの。
当然見知った植物であられるはずだが、それがここにある意味でも考えておいでだったのだろうか?
「おはようございますレーカ様。本日はドレスはお召しになられなかったのですね」
「おはようございますシモン様。船上でドレスは無作法でございますでしょう?」
王族としての品格はありつつ動きやすい服を選んだが、シモン様は話題に出しこそすれご興味はなさそうで。
社交辞令と言うやつなのだろうと、理解した。
「確かに。では早速ご案内させていただきます」
港の方を向いたシモン様に並び立つと、腕を差し出された。
おそらくエスコートしてくださるつもりなのだろうが、気づかないフリで無視をした。
港にて存在感を露わにするロッツランド王国の船。
その甲板を踏むことが許されたのは、案の定私1人。
代わりに、シモン様の護衛も下がり、2人きりで船上を巡る事になった。
「砲台の数が少し少ないのですね」
「えぇ、機動力を上げる代わりに減らしました。砲台ばかりが多いノロマな亀では困りますので」
「あれは?」
「狼煙です。緊急時は口頭伝達より早い事もあるので」
会話が漏れることもない船上で、人目もほとんどない船上で、シモン様は機密にも当たりそうな船の構造をある程度教えてくださった。
「操船に必要な最小人数は?」
「それは流石に話せません」
最重要と思われる質問は却下されたが、であっても気分を害されることもなく、私がどれほど聞いてくるかを試しているようでもあられた。
「補給無しでの最長航海日数は?」
「それも話せません」
「ロッツランド王国の港からここまでの所要時間は?」
「それは……」
歩きながらの会話が止まり、案内されたのは操舵室。
正気か?この男。
ハリボテの操舵室ではなさそうだが……。
用心しつつ足を踏み入れると、見た事のない装置がいくつも並んでいた。その上、操舵室からの見晴らしはあまり良いものとは言えなかった。
「今回は慎重に進んだので31時間かかってしまいました。ですが想定では24時間を切る事も可能です」
シモン様を振り返ると、試すような、計るような目が私を捉えていて。
多少数字を誤魔化していたところで我が国にとっては障壁でしかない問題に、私がどう対処するのかを品定めしているのだと分かった。
「想定とは?」
「ノイマン公国の操船技術を持つ貴女が舵を握った場合の想定です」
「私……?」
「えぇ、レーカ姫。貴女が、です」
「お話の意図が分かりませんわ」
「貴女にご協力頂き、ノイマン公国の操船のデータを取らせていただきたいのです。もちろん見返りはご用意いたします」
「ご冗談を」
「私は冗談は言いませんよ、レーカ姫」
表情を変えず淡々と喋るシモン様の姿に、あの白薔薇が思い出される。
そうか、「相応しい」とはこの事か。
「見返りとは?」
「我がロッツランド王国の第一友好国としてノイマン公国の名を刻みましょう。その証として私が貴女の王婿となる事も検討しています」
王婿。つまり女王の婿。
私がノイマン王となった暁にはその婿になってやると宣ってらっしゃるらしい。この方は。
「操船技術の代わりにご自身を?」
「当面はそうですが、ゆくゆくはあのリーガ海峡を両国で管理するつもりです」
喋り続けるシモン様は、私の予想を遥かに超えた情報を口にされ続けていて。
驚きもあり、疲れもあり、そのせいで思考が追いつかない。
追いつけない。
「リーガ海峡と言うのは貴女方が『死の海』と仰るあの、海です。ご存知ではないかと思いますが、あの海峡は地理上南北を結ぶのにとても良い位置にあるので、あと10年もすれば各国の船が航路として利用するようになるでしょう。それまでにリーガ海峡を独占しておきたいのです」
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