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第3章 傲慢な願い
25話 流れ着いた先
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「勝負でね、勝たないと駄目だって言われちゃったんだけど、でも諦められなくて」
「は?あの姫さん手に入れる為の勝負じゃなかったのかよ……!」
「えー!そんな!そんなのレーカに失礼だよ!!」
思わずツッコミを入れると、普段通りのぽやぽやした返事が帰って来る。
このバケモン、変なとこでウブかよ。ウケる。
でも、「勝ったら相手に何でも要求できる」なんて、フツーそういう意味だと思うだろ。
真剣使って、ガチ勝負で、しかも勝つためにあんなに努力して。
叶えたかったのが「守らせてくれ」ぇ?ウブさもバケモンかよ。
「で、んで、負けたけど守らせてくださいってダサくお願いに行くのか?」
「守れなくても、役には立ちたいんだ……」
声が妙に重くて、改めてシュンの方を見ると泣きそうにも見えた。
普段の泣き言言う時のヤツじゃない、えらく大人びた、鋭ささえ感じる切ない顔。
そんな顔で、未完成の努力の証を見上げていた。
「僕の全てを捧げれば少しは役に立つだろうから。だから、行く」
片思いが重すぎるし、普通の人間相手にするにはどう考えても迷惑だし。
散々フラれ続けてるくせに、またフラれるかもなんて、考えてもねぇみてぇだし。
ウブで真っ直ぐ過ぎてウケる。
でも、そんな馬鹿みてぇな理由のせいで即位すんのも逆に面白ぇかもな。
失敗したら全部シュンのせいにすれば良いだけだしな。
------
時期外れにも少し荒れた海のお陰で、思いの外渡航には時間を要し、ロッツランドの港が見えてきたのは出航から丸二日後。
断じてお父様の腕が鈍ったわけではない。
船員達も満身創痍になるほどに努力してくれたが、これほど荒れるとは想定外だったのだ。
「海の疾風」の船体にもダメージがあり、帰国する程度なら問題ないだろうが早めに修理が必要だろう。
3ヶ月後には新しい船をハンザ公国から受け入れる予定ではある。それまでの間であれば、他の船で代用する事もできるだろう。
だがこの損傷した船でロッツランド王国を尋ねる事になるとは。幸先が悪いな。
入港するまでに船員の疲れは誤魔化す事が出来るだろうが、満身創痍となられたお父様に無理をさせることは出来ない。
それ故、私が甲板に立った。
揺れる甲板。ドレスでは直立も容易ではなかったが、気合を入れて踏ん張った。
風が髪を解き、巻き上げても不動を貫いた。
ただこの国には侮られたくないという、その一心で。
孤島の我が国とは違い、大陸に属する国は流石とお忙しいらしい。
ロッツランド国王は隣国へ赴かれているとの事で、会談は翌日という事になった。
そしてそれまでの間、我らは迎賓としてのもてなしを受けることとなった。
国王のお住いであるムーント宮殿の目前、迎賓館にて一息つくと、すぐに外務省の方々との昼食。
また一息ついた後、今度はロッツランド王国屈指の商業地区の案内を受けた。
いくつもの馬車。見慣れない異国の品々。それらが、目まぐるしい速度で取引きされていき、我が国の国家予算ほどの金額が1日もあれば動いていそうだ。
あれらを海路に置き換える事ができるのであれば、確かにハンザ公国のような小国と手を組もうというのも頷ける。
この政略結婚で、両国にとって理想的な関係を築けるのだろう。
喜ぶべきだ。祖国の事を思うのであれば。
客人をもてなす時のみ使われる迎賓館であっても、その設備は流石の強国と言うべきか。
廊下や扉だけでも細かな装飾であったし、並んだ絵画も見事であったが、浴室の規模も絢爛さも、用意されていた着替えも上質なものであった。
淡い水色のドレス。それも酷く動き辛い形の。
「良くお似合いです」
「ありがとう」
見え透いた世辞に愛想笑いを返すと、その侍女は下がって行った。
着替えを手伝う為だけの侍女だったようで、入れ替わりに別の侍女らが入室してくる。
「こちらに座られてくださいませ」
「あぁ」
どうやら髪をまとめるのも化粧をするのも専用の侍女がいるようで、何人もの手で弄り回されるのを平気な顔で耐え続けた。
侍女を誰も連れずに来てしまったがこれであればユキノくらいは連れて来れば良かったと、腰に括り付けた重さにすら慰めを感じる程度には弱気になってしまっていた。
そして、やけに手の込んだ髪型にされたかと思っていたが、その原因はすぐに判明した。
お父様と合流し通された部屋で待ち受けていたのは、シモン様であられたのだ。
「は?あの姫さん手に入れる為の勝負じゃなかったのかよ……!」
「えー!そんな!そんなのレーカに失礼だよ!!」
思わずツッコミを入れると、普段通りのぽやぽやした返事が帰って来る。
このバケモン、変なとこでウブかよ。ウケる。
でも、「勝ったら相手に何でも要求できる」なんて、フツーそういう意味だと思うだろ。
真剣使って、ガチ勝負で、しかも勝つためにあんなに努力して。
叶えたかったのが「守らせてくれ」ぇ?ウブさもバケモンかよ。
「で、んで、負けたけど守らせてくださいってダサくお願いに行くのか?」
「守れなくても、役には立ちたいんだ……」
声が妙に重くて、改めてシュンの方を見ると泣きそうにも見えた。
普段の泣き言言う時のヤツじゃない、えらく大人びた、鋭ささえ感じる切ない顔。
そんな顔で、未完成の努力の証を見上げていた。
「僕の全てを捧げれば少しは役に立つだろうから。だから、行く」
片思いが重すぎるし、普通の人間相手にするにはどう考えても迷惑だし。
散々フラれ続けてるくせに、またフラれるかもなんて、考えてもねぇみてぇだし。
ウブで真っ直ぐ過ぎてウケる。
でも、そんな馬鹿みてぇな理由のせいで即位すんのも逆に面白ぇかもな。
失敗したら全部シュンのせいにすれば良いだけだしな。
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時期外れにも少し荒れた海のお陰で、思いの外渡航には時間を要し、ロッツランドの港が見えてきたのは出航から丸二日後。
断じてお父様の腕が鈍ったわけではない。
船員達も満身創痍になるほどに努力してくれたが、これほど荒れるとは想定外だったのだ。
「海の疾風」の船体にもダメージがあり、帰国する程度なら問題ないだろうが早めに修理が必要だろう。
3ヶ月後には新しい船をハンザ公国から受け入れる予定ではある。それまでの間であれば、他の船で代用する事もできるだろう。
だがこの損傷した船でロッツランド王国を尋ねる事になるとは。幸先が悪いな。
入港するまでに船員の疲れは誤魔化す事が出来るだろうが、満身創痍となられたお父様に無理をさせることは出来ない。
それ故、私が甲板に立った。
揺れる甲板。ドレスでは直立も容易ではなかったが、気合を入れて踏ん張った。
風が髪を解き、巻き上げても不動を貫いた。
ただこの国には侮られたくないという、その一心で。
孤島の我が国とは違い、大陸に属する国は流石とお忙しいらしい。
ロッツランド国王は隣国へ赴かれているとの事で、会談は翌日という事になった。
そしてそれまでの間、我らは迎賓としてのもてなしを受けることとなった。
国王のお住いであるムーント宮殿の目前、迎賓館にて一息つくと、すぐに外務省の方々との昼食。
また一息ついた後、今度はロッツランド王国屈指の商業地区の案内を受けた。
いくつもの馬車。見慣れない異国の品々。それらが、目まぐるしい速度で取引きされていき、我が国の国家予算ほどの金額が1日もあれば動いていそうだ。
あれらを海路に置き換える事ができるのであれば、確かにハンザ公国のような小国と手を組もうというのも頷ける。
この政略結婚で、両国にとって理想的な関係を築けるのだろう。
喜ぶべきだ。祖国の事を思うのであれば。
客人をもてなす時のみ使われる迎賓館であっても、その設備は流石の強国と言うべきか。
廊下や扉だけでも細かな装飾であったし、並んだ絵画も見事であったが、浴室の規模も絢爛さも、用意されていた着替えも上質なものであった。
淡い水色のドレス。それも酷く動き辛い形の。
「良くお似合いです」
「ありがとう」
見え透いた世辞に愛想笑いを返すと、その侍女は下がって行った。
着替えを手伝う為だけの侍女だったようで、入れ替わりに別の侍女らが入室してくる。
「こちらに座られてくださいませ」
「あぁ」
どうやら髪をまとめるのも化粧をするのも専用の侍女がいるようで、何人もの手で弄り回されるのを平気な顔で耐え続けた。
侍女を誰も連れずに来てしまったがこれであればユキノくらいは連れて来れば良かったと、腰に括り付けた重さにすら慰めを感じる程度には弱気になってしまっていた。
そして、やけに手の込んだ髪型にされたかと思っていたが、その原因はすぐに判明した。
お父様と合流し通された部屋で待ち受けていたのは、シモン様であられたのだ。
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