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第3章 傲慢な願い
24話 バケモン
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「クーリィ、お願いがあるんだけど」
ハンザをそのまま人型にしたみたいな、それこそ妖精みたいな存在のシュンは、王族でありながら王室には入っていない。
その制度も未だに慣れない。
「どうした?」
国王陛下から金賞を頂いた俺は、銀賞止まりのシュンより身分が上らしい。
この国に来て10年も経っていない、祖国では犯罪者だった俺が、だ。
「これを、使わせて欲しい」
シュンが言うコイツは、まだ未完成で、試作の完成にすら至っていない代物。
試作をひと月後のシュンの成人の式で披露する予定だった。
一時期前倒すだ何だ言っていたが、やはりひと月後の予定に戻り、その仕上げを行っているところだった。
「この状態でか?」
「うん」
コイツが仕上がれば、シュンは間違いなく陛下から金賞を頂ける。その褒美として王位の継承権も頂ける算段で、その為に金と時間を十分につぎ込んで来たはずだが。
何か考えがあるのか……?
暗い中では暗く光るシュンの瞳からは何も読み取れない。
尤も、ハンザ生まれの人間の考えを読もうだなんて、到底無理だろうがな。
「公開を早めんのか?」
「いや、公開はしない。僕の私情で使うから」
「はぁ?!」
このデカブツを作る為に、毎年木工省と製鉄省の予算のおおよそ半分が使われている。
いや、植物省の方からも出ていたはずだ。シュンの、各省で頂いた銀賞の権限で。
大抵の常人が一生をかけて手に入れる銀賞は通常ひとつのみ。
俺や養父のように天才と囃されても、得意分野でようやく金賞をひとつ得る程度。
それをこいつは、3つの道で銀賞を取り、かつコイツが完成すれば木工省と製鉄省両方の金賞を得ることも確実だというのに。
それを捨てて?私情で使う?
ジョークにしてはたちが悪すぎる。意味が分からねぇ。
「お前……継承権は……」
他国では兄弟で殺し合いすらするほどに尊ばれる王位の継承権を、それを得るためのコイツだと誰しもが思っている。
それ以外に、こんなモンを作る意味が分からない。常人には。
「それなんだけどさ、君にお願い出来ないかな?」
意味が分からない。
継承権を欲しがらねぇのも、他人に譲るのも。
他人に……え、俺に???
「はぁぁぁぁぁ?」
「クーリィなら適任なんだよね。ガンダーも金賞持ってるから」
「いやいやいやいや!俺そもそもこの国の人間じゃねぇぞ???」
「あ、血はねあんまり重要じゃないんだ。それにクーリィ、子ども4人もいるから安心だしね」
イカれてるとしか思えねぇ発想と提案で、その上それをしてきたのが本気としか思えねぇヤツで。
確かにミキはこの国生まれだが、子ども達はミキ似だが、それであっても王族との血の繋がりなんか皆無で。
あ、血は重要じゃねぇのか。なら問題ないわけないだろ馬鹿か。
「親父にぶん殴られて頭イカれたか?」
「ううん、前から計画してた」
「前?」
「クーリィが銀賞取ってくれた辺り」
「7年前?」
「うん」
俺を受け入れてくれた恩義があり、今まではおかしいなんて上品な表現を使ってきたが、撤回だ。
イカれてる。
11歳のシュンが俺に近付いてきたのは、今この時の為にだったなんてぬかしてやがるんだから。
「心配しなくても、マナーとかは教えてもらえるよ?」
「いや、ちげえだろ……」
「あ、お父様には許可貰ってるし、ガンダーにはそれとなく伝えてあるから」
「はぁぁぁ?!」
シュンだけかと思ったイカれ野郎は、他にもいんのかクソが。
このイカれ具合も国民性ってか?有り得ねぇ……。悪夢だろもう。
「嫌?」
「嫌っつったらどうする気だ?」
「その時はまず」
「待て待て待て。やっぱいい。聞きたくねぇ」
シュンの計算高さは仕事中に嫌っつうほど見てきた。見通しを立てるセンスも、努力を続けるガッツも、目標をキッチリと達成させる実行力も見て来た。
仕事に対してだけかと思っていたあれを、もし他でも使えるのなら?
それなら3つも銀賞を持つのも頷ける。
いや、継承権を得ない為にあえて銀賞に留めていたと考える方がしっくりくるくらいだ。
妖精っつうか、もうバケモンだなこうなってくると。
「返事の期限は?」
「今すぐに」
「相談もさせねぇ気か」
「ごめんね」
謝って済むならケーサツは要らねぇよ。
なんて冗談を、普段なら言えてたんだがな。
人の皮をかぶったバケモンに、恐らく交渉は通用しない。
断ったところでどんな手を使ってでも実現させるのだろう。こいつはそういう奴だから。
「何でそんな事になんのか、理由くらいは教えてくれんだろうな」
はるか昔に吸っていたタバコの味が無性に恋しくなり、手にしていた鉛筆を代わりに咥えた。
美味しくもねぇ古い木材の味。
ほんのり磯の香りもして、口に含むだけで体に悪そうだ。
「えー、恥ずかしいなぁ……」
バケモンが一丁前に人間様のフリをして、照れて見せてやがる。ウケる。
擬態の腕も一流かよ。
「あの、ね、僕約束したんだ。レーカの事を守るって」
急にガキみてぇな話で、思わず鉛筆を噛んじまった。
慌てて口から出したが、やっぱクソマジぃな古木ってやつは。
ハンザをそのまま人型にしたみたいな、それこそ妖精みたいな存在のシュンは、王族でありながら王室には入っていない。
その制度も未だに慣れない。
「どうした?」
国王陛下から金賞を頂いた俺は、銀賞止まりのシュンより身分が上らしい。
この国に来て10年も経っていない、祖国では犯罪者だった俺が、だ。
「これを、使わせて欲しい」
シュンが言うコイツは、まだ未完成で、試作の完成にすら至っていない代物。
試作をひと月後のシュンの成人の式で披露する予定だった。
一時期前倒すだ何だ言っていたが、やはりひと月後の予定に戻り、その仕上げを行っているところだった。
「この状態でか?」
「うん」
コイツが仕上がれば、シュンは間違いなく陛下から金賞を頂ける。その褒美として王位の継承権も頂ける算段で、その為に金と時間を十分につぎ込んで来たはずだが。
何か考えがあるのか……?
暗い中では暗く光るシュンの瞳からは何も読み取れない。
尤も、ハンザ生まれの人間の考えを読もうだなんて、到底無理だろうがな。
「公開を早めんのか?」
「いや、公開はしない。僕の私情で使うから」
「はぁ?!」
このデカブツを作る為に、毎年木工省と製鉄省の予算のおおよそ半分が使われている。
いや、植物省の方からも出ていたはずだ。シュンの、各省で頂いた銀賞の権限で。
大抵の常人が一生をかけて手に入れる銀賞は通常ひとつのみ。
俺や養父のように天才と囃されても、得意分野でようやく金賞をひとつ得る程度。
それをこいつは、3つの道で銀賞を取り、かつコイツが完成すれば木工省と製鉄省両方の金賞を得ることも確実だというのに。
それを捨てて?私情で使う?
ジョークにしてはたちが悪すぎる。意味が分からねぇ。
「お前……継承権は……」
他国では兄弟で殺し合いすらするほどに尊ばれる王位の継承権を、それを得るためのコイツだと誰しもが思っている。
それ以外に、こんなモンを作る意味が分からない。常人には。
「それなんだけどさ、君にお願い出来ないかな?」
意味が分からない。
継承権を欲しがらねぇのも、他人に譲るのも。
他人に……え、俺に???
「はぁぁぁぁぁ?」
「クーリィなら適任なんだよね。ガンダーも金賞持ってるから」
「いやいやいやいや!俺そもそもこの国の人間じゃねぇぞ???」
「あ、血はねあんまり重要じゃないんだ。それにクーリィ、子ども4人もいるから安心だしね」
イカれてるとしか思えねぇ発想と提案で、その上それをしてきたのが本気としか思えねぇヤツで。
確かにミキはこの国生まれだが、子ども達はミキ似だが、それであっても王族との血の繋がりなんか皆無で。
あ、血は重要じゃねぇのか。なら問題ないわけないだろ馬鹿か。
「親父にぶん殴られて頭イカれたか?」
「ううん、前から計画してた」
「前?」
「クーリィが銀賞取ってくれた辺り」
「7年前?」
「うん」
俺を受け入れてくれた恩義があり、今まではおかしいなんて上品な表現を使ってきたが、撤回だ。
イカれてる。
11歳のシュンが俺に近付いてきたのは、今この時の為にだったなんてぬかしてやがるんだから。
「心配しなくても、マナーとかは教えてもらえるよ?」
「いや、ちげえだろ……」
「あ、お父様には許可貰ってるし、ガンダーにはそれとなく伝えてあるから」
「はぁぁぁ?!」
シュンだけかと思ったイカれ野郎は、他にもいんのかクソが。
このイカれ具合も国民性ってか?有り得ねぇ……。悪夢だろもう。
「嫌?」
「嫌っつったらどうする気だ?」
「その時はまず」
「待て待て待て。やっぱいい。聞きたくねぇ」
シュンの計算高さは仕事中に嫌っつうほど見てきた。見通しを立てるセンスも、努力を続けるガッツも、目標をキッチリと達成させる実行力も見て来た。
仕事に対してだけかと思っていたあれを、もし他でも使えるのなら?
それなら3つも銀賞を持つのも頷ける。
いや、継承権を得ない為にあえて銀賞に留めていたと考える方がしっくりくるくらいだ。
妖精っつうか、もうバケモンだなこうなってくると。
「返事の期限は?」
「今すぐに」
「相談もさせねぇ気か」
「ごめんね」
謝って済むならケーサツは要らねぇよ。
なんて冗談を、普段なら言えてたんだがな。
人の皮をかぶったバケモンに、恐らく交渉は通用しない。
断ったところでどんな手を使ってでも実現させるのだろう。こいつはそういう奴だから。
「何でそんな事になんのか、理由くらいは教えてくれんだろうな」
はるか昔に吸っていたタバコの味が無性に恋しくなり、手にしていた鉛筆を代わりに咥えた。
美味しくもねぇ古い木材の味。
ほんのり磯の香りもして、口に含むだけで体に悪そうだ。
「えー、恥ずかしいなぁ……」
バケモンが一丁前に人間様のフリをして、照れて見せてやがる。ウケる。
擬態の腕も一流かよ。
「あの、ね、僕約束したんだ。レーカの事を守るって」
急にガキみてぇな話で、思わず鉛筆を噛んじまった。
慌てて口から出したが、やっぱクソマジぃな古木ってやつは。
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