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第二章 心が向かう先
第十一話 心地よい懐かしさ
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勝手に親しみを覚えていたけど、目の前のこの方は将軍様であらせられるのだ。
相手から情報を引き出すやり取りは、私の何倍も上手くて当然なのだ。
「何があった」
よくよく考えれば、吉家様は「件の船員」としか言ってない。
その前に「内容を読んだか?」と確認して、私が信書の中身を知らない事を確かめた上で、カマをかけたのだ。
私が何か知っているであろうと見越して。
だったら木村先生は起こったことの詳細は書かずに、「少し治療した」くらいに書いたのだろうか?
分からない。
ここ最近は上手くいく交渉事しかしてなかったから、ピンチなのは久しぶりで。
玄さんはおしゃべりすぎるから、迂闊に頼る訳にはいかないし、かと言って全て正直に話して良い確証は無いし。
私の発言で、木村先生に迷惑がかかるかもしれない。
そう思うと、何も言えなくて。
俯く私を、克信様の怖い声が責め立てる。
「上様が尋ねられているのだ、答えよ」
聖女の仮面を被っていれば良かった。そうしていれば、こんな醜態を晒すこと無かったのに。
ただの私はこんなにも弱いと、思い知ることもなかったのに・・・。
「克信、よい」
「ですが上様」
「お前の顔が怖いせいで怯えておるのじゃ。下がれ」
克信様は正しいんだと思う。けれど吉家様は何故か私を庇ってくれて。
思わず、顔を上げていた。
「上様?!」
「下がれ」
驚く克信様に、今度はさっきより強い口調で吉家様が言う。
庇ってくれた。庇って、助けてくれたんだ。
優翔君、みたいに。
「御意に」
渋々とだったけど将軍様の命令だけあって、克信様は席を外してくれた。
彼の姿が見えなくなると、ホッと気が抜ける。そんな私を見て、吉家様はフッと笑った。
「玄徳は外させずとも良いか?」
「・・・はい」
チラリと伺うと、玄さんはあんぐりと口を開けたまま吉家様と私を見ていた。
あの様子じゃ、きっと勘違いしてるかも。
勘違い、なのに。
「話してくれるな?」
先程より重々しさが消えた気がするのは、気のせいだろうか?
それとも、私が喋りやすいようにしてくれてる?
「話す前に、お願いがあります」
「聞こう」
「全て私の責任です。だから・・・」
きっと本来であれば恐れ多いことを言っているだろうに、彼であれば聞き入れてくれる気がしたのは、何故だろうか。
これじゃあまるで、特別親しいみたいだ。
勘違い、なのに。
「そなたが望むのであらば誰も処罰はせぬ。それで良いな?」
「ありがとう、ございます・・・」
この優しさが、特別なものだときっと気付いていた。
気付いているけど、気付かないふりをしないといけないの。
そうしないと、取り返しのつかない事を、してしまいそうだから。
結局、木村先生の信書に何が書かれていたかは分からなかった。
けれど、起きた事を洗いざらい吉家様には話した。
木村先生の開腹手術についても、私が外国人に聖女の業を使ったことも、吉家様は一切咎めなかった。
玄さんが慌てるのと対照的に、彼は静かに私の話を聞いてくれた。
聞いて、ただ「良い」と言ってくれた。
それが予想以上に嬉しくて、そのせいでその後の密貿易船についての話では喋り過ぎてしまって。
晩ご飯の時間になって吉家様の正面に座るのが、少し恥ずかしくなってしまったんだ。
昨日より少し距離が近い気もして、そのせいもあってソワソワしちゃう。
「酌を」
「はい」
お酒をついで差し上げた後、誤魔化すように「いただきます」をして箸を手に取った。
そんな私を、吉家様はやはりずっと見ていた。
「小瑠璃」
「・・・はい」
「そなたのその知識、何処で身につけた?」
完全に喋り過ぎて完全に墓穴を掘った事には気付いていたけど、そんな風に素が出てしまうほどに吉家様に親しみを感じてしまっていて。
嘘をついてはいけないというより、嘘をつきたくないと、思ってしまっていて。
どこまでなら、彼を受け入れても許されるだろうかと、考えてしまいそうになる。
「大方、記憶が定かではないというのも法螺であろう?」
「そう、思いますか・・・?」
「そなたの顔に全て書いておるわ」
思ってる事が顔に出やすいと、初めて指摘されたのは優翔君にだった。
それがプライベートな時間だけなんだと、気付いてくれたのも優翔君だった。
親しい人の前では、外面を保てない。それが、そういう所が好きだと言ってくれたのも、優翔君だった。
「聞きたい、ですか?」
「あぁ、知りたい。そなたに関わる事であればどのような事柄であろうと」
相手から情報を引き出すやり取りは、私の何倍も上手くて当然なのだ。
「何があった」
よくよく考えれば、吉家様は「件の船員」としか言ってない。
その前に「内容を読んだか?」と確認して、私が信書の中身を知らない事を確かめた上で、カマをかけたのだ。
私が何か知っているであろうと見越して。
だったら木村先生は起こったことの詳細は書かずに、「少し治療した」くらいに書いたのだろうか?
分からない。
ここ最近は上手くいく交渉事しかしてなかったから、ピンチなのは久しぶりで。
玄さんはおしゃべりすぎるから、迂闊に頼る訳にはいかないし、かと言って全て正直に話して良い確証は無いし。
私の発言で、木村先生に迷惑がかかるかもしれない。
そう思うと、何も言えなくて。
俯く私を、克信様の怖い声が責め立てる。
「上様が尋ねられているのだ、答えよ」
聖女の仮面を被っていれば良かった。そうしていれば、こんな醜態を晒すこと無かったのに。
ただの私はこんなにも弱いと、思い知ることもなかったのに・・・。
「克信、よい」
「ですが上様」
「お前の顔が怖いせいで怯えておるのじゃ。下がれ」
克信様は正しいんだと思う。けれど吉家様は何故か私を庇ってくれて。
思わず、顔を上げていた。
「上様?!」
「下がれ」
驚く克信様に、今度はさっきより強い口調で吉家様が言う。
庇ってくれた。庇って、助けてくれたんだ。
優翔君、みたいに。
「御意に」
渋々とだったけど将軍様の命令だけあって、克信様は席を外してくれた。
彼の姿が見えなくなると、ホッと気が抜ける。そんな私を見て、吉家様はフッと笑った。
「玄徳は外させずとも良いか?」
「・・・はい」
チラリと伺うと、玄さんはあんぐりと口を開けたまま吉家様と私を見ていた。
あの様子じゃ、きっと勘違いしてるかも。
勘違い、なのに。
「話してくれるな?」
先程より重々しさが消えた気がするのは、気のせいだろうか?
それとも、私が喋りやすいようにしてくれてる?
「話す前に、お願いがあります」
「聞こう」
「全て私の責任です。だから・・・」
きっと本来であれば恐れ多いことを言っているだろうに、彼であれば聞き入れてくれる気がしたのは、何故だろうか。
これじゃあまるで、特別親しいみたいだ。
勘違い、なのに。
「そなたが望むのであらば誰も処罰はせぬ。それで良いな?」
「ありがとう、ございます・・・」
この優しさが、特別なものだときっと気付いていた。
気付いているけど、気付かないふりをしないといけないの。
そうしないと、取り返しのつかない事を、してしまいそうだから。
結局、木村先生の信書に何が書かれていたかは分からなかった。
けれど、起きた事を洗いざらい吉家様には話した。
木村先生の開腹手術についても、私が外国人に聖女の業を使ったことも、吉家様は一切咎めなかった。
玄さんが慌てるのと対照的に、彼は静かに私の話を聞いてくれた。
聞いて、ただ「良い」と言ってくれた。
それが予想以上に嬉しくて、そのせいでその後の密貿易船についての話では喋り過ぎてしまって。
晩ご飯の時間になって吉家様の正面に座るのが、少し恥ずかしくなってしまったんだ。
昨日より少し距離が近い気もして、そのせいもあってソワソワしちゃう。
「酌を」
「はい」
お酒をついで差し上げた後、誤魔化すように「いただきます」をして箸を手に取った。
そんな私を、吉家様はやはりずっと見ていた。
「小瑠璃」
「・・・はい」
「そなたのその知識、何処で身につけた?」
完全に喋り過ぎて完全に墓穴を掘った事には気付いていたけど、そんな風に素が出てしまうほどに吉家様に親しみを感じてしまっていて。
嘘をついてはいけないというより、嘘をつきたくないと、思ってしまっていて。
どこまでなら、彼を受け入れても許されるだろうかと、考えてしまいそうになる。
「大方、記憶が定かではないというのも法螺であろう?」
「そう、思いますか・・・?」
「そなたの顔に全て書いておるわ」
思ってる事が顔に出やすいと、初めて指摘されたのは優翔君にだった。
それがプライベートな時間だけなんだと、気付いてくれたのも優翔君だった。
親しい人の前では、外面を保てない。それが、そういう所が好きだと言ってくれたのも、優翔君だった。
「聞きたい、ですか?」
「あぁ、知りたい。そなたに関わる事であればどのような事柄であろうと」
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