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第七章 愛するという事
第五十話 愛の伝え方
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「あれの事は、半ば脅すようにして弟子に取ったのです。そうせねばならぬと、身勝手ながらに判断し強引にでもと引き取りました。しかし、それが誠に最善であったのかと、考える時がございます」
ここで道明様が急に私の方を見た。
見て、フッと優しく笑った。
「尤も、昨今の一松を見るに、これで良かったのであろうと思うてはおりまするが」
すぐにお美代さんに視線を戻したけど、あれってもっと一松を甘やかして良いって事だろうか?
良いと言われなくてもそのつもりだったけど、お師匠様の許可が出たなら大手を振って甘やかせるな。
「それ故に、あれは愛の何たるかを知りませぬ。お美代様に恋をしておっても、その先へは容易と進めぬのでございます」
「そう、でございましたのですね・・・」
「重ねて申し上げるのであらば、あれは恐れておるのでしょう。己の心のままに動く事で、貴方様を傷つけてしまう事を」
畳み掛けるような道明様の言葉に、お美代さんは口を閉じて考え込んでしまった。
お美代さんはまだ十六歳で、恋に恋するような、うら若き乙女だ。
彼女にこの話をするのはどう考えても難しすぎる。なのに何故、道明様はこんな無茶な事をしたのか。
分からなくて、彼を見た。すると優しい眼差しと目が合った。
私に、託してくれる。という事だろうか?
心の声が聞こえたかのように、小さく頷いて見せる道明様。
本当に託してくれるのか。
なら、頑張らないとな。一松の為にも、お美代さんの為にも。
「お美代さん」
安心できるように、優しく微笑みながら彼女の手を握った。
少し冷たいけど、強ばっても汗もかいてもいないみたいで、ただ初めて聞く事実を上手く飲み込めないだけみたいだ。
「お美代さんは、一松の事どう思ってる?」
お美代さんは心が真っ直ぐで、気は遣えるけど、嘘は言わない。
そういう所が、好きなんだ。
「お慕いしていると、言えるかは分かりません。・・・ですが、深い仲になりたいとは思っております」
真面目な顔で、彼女は答えた。
そしてそれは、そこそこ私の予想通りだった。
お美代さんって、結構恋愛に前のめりなタイプで、私が道明様と結ばれたのだって彼女のこの前のめりさがあったおかげなのだ。
普段は仕事第一だから恋愛なんてしてる暇はないだろうけど、職場恋愛なら逆にチャンスみたいなものだ。
相手も一松なら信頼できる。あの子はいい子だから。
「じゃあさ、一松が逃げたら捕まえればいいよ」
「え?」
「嫌なら『嫌』って言うようにさせるからさ。捕まえて、『好きだよ』って伝えてあげて。今は嘘でもいいから」
実は、一松がお美代さんから逃げた時の気持ちが、私には分かってた。
私も、昔はそうだった。
優翔君からの愛に逃げ腰で、彼が捕まえてくれなければ向き合うことも出来なかった。
だから一松にも、無理やり愛の何たるかを教えてやらなければなのだ。
「嘘でもいいのですか??」
「うん。人ってずっと一緒にいるとちゃんと愛着は湧くから。だから最初は嘘でも良いよ」
恋に恋してて、告白されたから何となく付き合い始めたんだとしても、互いに尊重する気持ちがあれば親愛は湧く。
特別なオンリーワンじゃなくても、愛の重さが釣り合わなくても、愛し合いながら一緒に生きることはできる。
一松に必要なのは「愛される経験」だ。
そしてそれを、お美代さんなら与えてあげれると思う。
そう考えると相性ぴったしな二人なんだなぁ。
「という事で、一松捕まえて来ますね」
「あぁ」
お美代さんの表情は晴れてたから、一応道明様に断ってから立ち上がった。
さて、一松の向かいそうな所は・・・。
一松探しは晴彦に聞いたらすぐに終わった。
この子、空き部屋で隠れるように立ち尽くしてた。反省してるようにも、絶望しているようにも見える姿で。
私に気づいて目を伏せる姿も酷く悲しげで、だから思わずハグしてあげた。
ハグして、極力優しく話しかけた。
「一松が逃げるとこ初めて見たよ」
「申し訳もございませぬ・・・」
「私に謝る必要は無いけど、逃げなくてもお美代さんは『嫌』って言えば聞いてくれるから大丈夫なんだよ」
「・・・はい」
背が伸びたせいで、一松を抱きしめてあげてるのに、抱きしめられてる感が凄い。
成長期の男児恐るべし。でも、こんなハグでも落ち着いてくれたみたいだからいっか。
最後に頭をなでなでしてから体を離すと、一松は半分くらいいつも通りな顔に戻っていて。
だから、大丈夫だと、判断した。
「じゃあおいで」
言いつつ彼の手を引く。
喧嘩相手に「ごめんなさい」をしに行くみたいな感じで、一松を引っ張って行った。
一松は、どこに連れて行かれるか分かってただろうに、大人しく着いてきた。
人目につかないように、一松と晴彦の部屋を横切って行って。
そして、道明様の部屋へ続く襖を開けると、先程と変わらない位置に道明様もお美代さんも待っていてくれた。
ここで道明様が急に私の方を見た。
見て、フッと優しく笑った。
「尤も、昨今の一松を見るに、これで良かったのであろうと思うてはおりまするが」
すぐにお美代さんに視線を戻したけど、あれってもっと一松を甘やかして良いって事だろうか?
良いと言われなくてもそのつもりだったけど、お師匠様の許可が出たなら大手を振って甘やかせるな。
「それ故に、あれは愛の何たるかを知りませぬ。お美代様に恋をしておっても、その先へは容易と進めぬのでございます」
「そう、でございましたのですね・・・」
「重ねて申し上げるのであらば、あれは恐れておるのでしょう。己の心のままに動く事で、貴方様を傷つけてしまう事を」
畳み掛けるような道明様の言葉に、お美代さんは口を閉じて考え込んでしまった。
お美代さんはまだ十六歳で、恋に恋するような、うら若き乙女だ。
彼女にこの話をするのはどう考えても難しすぎる。なのに何故、道明様はこんな無茶な事をしたのか。
分からなくて、彼を見た。すると優しい眼差しと目が合った。
私に、託してくれる。という事だろうか?
心の声が聞こえたかのように、小さく頷いて見せる道明様。
本当に託してくれるのか。
なら、頑張らないとな。一松の為にも、お美代さんの為にも。
「お美代さん」
安心できるように、優しく微笑みながら彼女の手を握った。
少し冷たいけど、強ばっても汗もかいてもいないみたいで、ただ初めて聞く事実を上手く飲み込めないだけみたいだ。
「お美代さんは、一松の事どう思ってる?」
お美代さんは心が真っ直ぐで、気は遣えるけど、嘘は言わない。
そういう所が、好きなんだ。
「お慕いしていると、言えるかは分かりません。・・・ですが、深い仲になりたいとは思っております」
真面目な顔で、彼女は答えた。
そしてそれは、そこそこ私の予想通りだった。
お美代さんって、結構恋愛に前のめりなタイプで、私が道明様と結ばれたのだって彼女のこの前のめりさがあったおかげなのだ。
普段は仕事第一だから恋愛なんてしてる暇はないだろうけど、職場恋愛なら逆にチャンスみたいなものだ。
相手も一松なら信頼できる。あの子はいい子だから。
「じゃあさ、一松が逃げたら捕まえればいいよ」
「え?」
「嫌なら『嫌』って言うようにさせるからさ。捕まえて、『好きだよ』って伝えてあげて。今は嘘でもいいから」
実は、一松がお美代さんから逃げた時の気持ちが、私には分かってた。
私も、昔はそうだった。
優翔君からの愛に逃げ腰で、彼が捕まえてくれなければ向き合うことも出来なかった。
だから一松にも、無理やり愛の何たるかを教えてやらなければなのだ。
「嘘でもいいのですか??」
「うん。人ってずっと一緒にいるとちゃんと愛着は湧くから。だから最初は嘘でも良いよ」
恋に恋してて、告白されたから何となく付き合い始めたんだとしても、互いに尊重する気持ちがあれば親愛は湧く。
特別なオンリーワンじゃなくても、愛の重さが釣り合わなくても、愛し合いながら一緒に生きることはできる。
一松に必要なのは「愛される経験」だ。
そしてそれを、お美代さんなら与えてあげれると思う。
そう考えると相性ぴったしな二人なんだなぁ。
「という事で、一松捕まえて来ますね」
「あぁ」
お美代さんの表情は晴れてたから、一応道明様に断ってから立ち上がった。
さて、一松の向かいそうな所は・・・。
一松探しは晴彦に聞いたらすぐに終わった。
この子、空き部屋で隠れるように立ち尽くしてた。反省してるようにも、絶望しているようにも見える姿で。
私に気づいて目を伏せる姿も酷く悲しげで、だから思わずハグしてあげた。
ハグして、極力優しく話しかけた。
「一松が逃げるとこ初めて見たよ」
「申し訳もございませぬ・・・」
「私に謝る必要は無いけど、逃げなくてもお美代さんは『嫌』って言えば聞いてくれるから大丈夫なんだよ」
「・・・はい」
背が伸びたせいで、一松を抱きしめてあげてるのに、抱きしめられてる感が凄い。
成長期の男児恐るべし。でも、こんなハグでも落ち着いてくれたみたいだからいっか。
最後に頭をなでなでしてから体を離すと、一松は半分くらいいつも通りな顔に戻っていて。
だから、大丈夫だと、判断した。
「じゃあおいで」
言いつつ彼の手を引く。
喧嘩相手に「ごめんなさい」をしに行くみたいな感じで、一松を引っ張って行った。
一松は、どこに連れて行かれるか分かってただろうに、大人しく着いてきた。
人目につかないように、一松と晴彦の部屋を横切って行って。
そして、道明様の部屋へ続く襖を開けると、先程と変わらない位置に道明様もお美代さんも待っていてくれた。
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