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第一章 江戸城にて
第三話 はじめての江戸城
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「調べて欲しかったです?」
一応聞いてみると、玄さんは不貞腐れたように唇を尖らせた。
いい歳した大人で、かつ恐らく家紋入りの服を着ているくせに。
「いいけどさ、別に」
なんて口にしてたけど、絶対いいとは思ってないし。この人こういうところはちょっと面倒くさいんだよな。
「お詫びにお寿司でも奢りましょうか?」
「いいって。それよりほら江戸城行くなら並ばないと、ぼやぼやしてると日が暮れちまうよ」
お詫びと言う名目でこの場から離れて、できれば登城の話も有耶無耶になんて思っていたけれど、そうは問屋が卸さないらしい。
少し強引に玄さんに手を引かれ、登城待ちの列に並ばされてしまう。
運命の力恐るべしというか、ありがた迷惑というか・・・。
「一個貸しだからね」
なんて玄さんが言うので「やっぱり晩ご飯にお寿司でも奢るか」なんて現実逃避しながら、徐々に近くなる門をぼんやりと眺め続けていた。
正直に言うと、私もすんなり帰れるとは思ってはいなかった。
門の警備をなぜか顔パスで通してもらった玄さんに続いて足を踏み入れた、江戸城のお堀の内。
と言っても、江戸城の敷地ってめちゃくちゃ広くて、いわゆる江戸城である本丸まではなかなかに距離がある。
敷地内には重役の方々の家もあれば、確かお役所もあったはずだから、言うなればオフィス街みたいなものだ。
オフィス街との違いは、歩いている人の半数以上がちょっといかつい感じのお侍様なことくらい。
顔パスなのも驚いたけど、玄さんは何度もここに来たことがあるらしく、迷わずにどんどん歩いて行く。
その後を追いかけながら、しばらく歩く。てっきり、お役所の一つにでも向かって行っているかと思ったのに、玄さんはまっすぐに歩いて行った。
まっすぐに、江戸城へ向かって。
流石に三つ目の門をくぐった時に「あれ?」とは思ったんだけどね。
まさか思いもしないじゃん?玄さんが直接江戸城に行くなんてさ。
要所要所にいる警備の人も、なぜか「お前か」みたいな感じで通すしさ。玄さんが「よっ」って手を上げて挨拶すると、みんな何とも言えない表情でスルーするしさ。
彼が何者か、少しでも調べとけばよかったなんて後悔しながら、到着してしまった江戸城。
「克信様に玄徳が来たって伝えとくれよ」
玄さんがそう言うと、警備の一人が「分かった」と城の中に引っ込んでいった。
でもここまで来ても、諦め悪く追い返される可能性を考えていた。
もしくは次に来るであろう人に信書を渡せばおしまいじゃない?なんて、考えていた。
けど比較的直ぐに戻ってきた警備の人が「いつもの部屋で待っておれとの事だ」なんて言うし、玄さんは「あいよ!」って言って行っちゃうしさ。
そうなって来ると、私も行くしかない。
智久さんも気持ち困惑気味だったけど、着いて来てくれるだろうし。行くしかない。
行くしかない、のかぁ・・・。
玄さんが我が物顔で向かったのは、ちょっとした庭が見える来賓用らしき部屋だった。
今まで見てきたどのお城の部屋よりも明らかに豪華な部屋と庭で、でも恐縮してるのは私と智久さんだけ。
玄さんは知った顔でリラックスしてるし、侍女が持ってきたお茶も普通に飲んでいた。
「玄さん」
「ん?何だい?」
「克信様ってどなたです?」
今から会うはずの相手。かなり身分が高い人であることは確定していたけど、全く知らないまま合うのは流石に怖すぎた。
玄さんのこの感じが許されるなら粗相はしないと思うけど、それでもこんな格式が高すぎるところ、できれば一生来たくなかったくらいなのに。
「克信様はね、人を見る目がある上に懐の広い偉大なお方だよ。なんたってあたしを重用してくれてんだから」
どや顔の玄さんは、克信様に気に入られているんだろう。ということは、何かあった時は玄さん頼みだな。
「身分とか、役職とかは・・・?」
「あぁ、小瑠璃は知らないのか。あの方は幕臣で、上様の側近を務めてらっしゃるよ」
「側、近・・・」
一瞬で体に力が入ったのが分かった。
でも、「大丈夫」だと。きっとその人に信書を渡せばそれで終わりだと、飽きもせずあがきながら自分を落ち着かせる。
そして、ちょうど落ち着いてきた頃に聞こえてきた足音はただ一人分だった。
一応聞いてみると、玄さんは不貞腐れたように唇を尖らせた。
いい歳した大人で、かつ恐らく家紋入りの服を着ているくせに。
「いいけどさ、別に」
なんて口にしてたけど、絶対いいとは思ってないし。この人こういうところはちょっと面倒くさいんだよな。
「お詫びにお寿司でも奢りましょうか?」
「いいって。それよりほら江戸城行くなら並ばないと、ぼやぼやしてると日が暮れちまうよ」
お詫びと言う名目でこの場から離れて、できれば登城の話も有耶無耶になんて思っていたけれど、そうは問屋が卸さないらしい。
少し強引に玄さんに手を引かれ、登城待ちの列に並ばされてしまう。
運命の力恐るべしというか、ありがた迷惑というか・・・。
「一個貸しだからね」
なんて玄さんが言うので「やっぱり晩ご飯にお寿司でも奢るか」なんて現実逃避しながら、徐々に近くなる門をぼんやりと眺め続けていた。
正直に言うと、私もすんなり帰れるとは思ってはいなかった。
門の警備をなぜか顔パスで通してもらった玄さんに続いて足を踏み入れた、江戸城のお堀の内。
と言っても、江戸城の敷地ってめちゃくちゃ広くて、いわゆる江戸城である本丸まではなかなかに距離がある。
敷地内には重役の方々の家もあれば、確かお役所もあったはずだから、言うなればオフィス街みたいなものだ。
オフィス街との違いは、歩いている人の半数以上がちょっといかつい感じのお侍様なことくらい。
顔パスなのも驚いたけど、玄さんは何度もここに来たことがあるらしく、迷わずにどんどん歩いて行く。
その後を追いかけながら、しばらく歩く。てっきり、お役所の一つにでも向かって行っているかと思ったのに、玄さんはまっすぐに歩いて行った。
まっすぐに、江戸城へ向かって。
流石に三つ目の門をくぐった時に「あれ?」とは思ったんだけどね。
まさか思いもしないじゃん?玄さんが直接江戸城に行くなんてさ。
要所要所にいる警備の人も、なぜか「お前か」みたいな感じで通すしさ。玄さんが「よっ」って手を上げて挨拶すると、みんな何とも言えない表情でスルーするしさ。
彼が何者か、少しでも調べとけばよかったなんて後悔しながら、到着してしまった江戸城。
「克信様に玄徳が来たって伝えとくれよ」
玄さんがそう言うと、警備の一人が「分かった」と城の中に引っ込んでいった。
でもここまで来ても、諦め悪く追い返される可能性を考えていた。
もしくは次に来るであろう人に信書を渡せばおしまいじゃない?なんて、考えていた。
けど比較的直ぐに戻ってきた警備の人が「いつもの部屋で待っておれとの事だ」なんて言うし、玄さんは「あいよ!」って言って行っちゃうしさ。
そうなって来ると、私も行くしかない。
智久さんも気持ち困惑気味だったけど、着いて来てくれるだろうし。行くしかない。
行くしかない、のかぁ・・・。
玄さんが我が物顔で向かったのは、ちょっとした庭が見える来賓用らしき部屋だった。
今まで見てきたどのお城の部屋よりも明らかに豪華な部屋と庭で、でも恐縮してるのは私と智久さんだけ。
玄さんは知った顔でリラックスしてるし、侍女が持ってきたお茶も普通に飲んでいた。
「玄さん」
「ん?何だい?」
「克信様ってどなたです?」
今から会うはずの相手。かなり身分が高い人であることは確定していたけど、全く知らないまま合うのは流石に怖すぎた。
玄さんのこの感じが許されるなら粗相はしないと思うけど、それでもこんな格式が高すぎるところ、できれば一生来たくなかったくらいなのに。
「克信様はね、人を見る目がある上に懐の広い偉大なお方だよ。なんたってあたしを重用してくれてんだから」
どや顔の玄さんは、克信様に気に入られているんだろう。ということは、何かあった時は玄さん頼みだな。
「身分とか、役職とかは・・・?」
「あぁ、小瑠璃は知らないのか。あの方は幕臣で、上様の側近を務めてらっしゃるよ」
「側、近・・・」
一瞬で体に力が入ったのが分かった。
でも、「大丈夫」だと。きっとその人に信書を渡せばそれで終わりだと、飽きもせずあがきながら自分を落ち着かせる。
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