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21 結婚式
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今日はついにファビアンとアイラの結婚式。
ほぼ婚約と結婚が同時だった。貴族でそんなことはかなりのレアケースだったが、ロッシュ子爵家への支援を急ぎたいからという理由で国から正式に受理された。
今回の結婚でアンブロス公爵家は、社交界でものすごく評判が上がっている。ファビアンは家格が下にも関わらず『真実の愛』を貫き、アイラの生家を助けた『ヒーロー』だと騒がれているからだ。
「ああ、アイラ。ものすごく可愛いよ」
「ありがとうございます」
アイラはものすごく豪華で煌びやかなウェディングドレスに身を包んでいた。既製品ではなく、一点物の特注品だ。こんな短期間でどうやってこの素晴らしいドレスを作らせたのかと、正直アイラは驚いた。
「良かった。デザイナーと長い間相談した甲斐があった」
「長い間?」
アイラは首を傾げた。二人の結婚が正式に決まって、まだ一ヶ月ほどしか経っていないからだ。
「……いや、なんでもないよ。本当にアイラは、天使が地上に舞い降りたようだ。ではまた結婚式でね」
「はい」
アイラは心が重たかった。この式が終われば、ついに正式な夫婦になる。考えただけで、胸が苦しかった。
「お嬢様……うっ、ううっ……」
「リラ、泣かないで」
「でも、お嬢様と一緒にいられるのも最後かと思うと……悲しくて……ううぅっ……」
結婚後もアイラについて来ると言っていたリラだったが、実はアンブロス公爵家から拒否された。アイラには新たな侍女を公爵家から用意するため、リラは連れて来ないようにと言われてしまった。理由は、義母が子爵家の人間が入ることを嫌がったからだ。
アイラの父親から再度お願いをしてもらったが叶わず、立場はロッシュ子爵家の方がかなり弱いため結局話は白紙になった。ファビアンからも謝罪を受けたが、決定は覆ることはなかった。
「今までありがとう。誰よりもリラと過ごした時間が長かったわ」
「どこにいても私はお嬢様の味方ですからね」
「ありがとう」
アイラはリラを抱き締めて、式場に向かった。もう両親とカミルには、昨夜のうちに挨拶を済ませている。
カミルはこの結婚にまだ納得できないようで、かなり不機嫌で宥めるのが大変だった。
『カミル、お願い。最後だから笑ってちょうだい』
『嫌だ。どうして……どうして……姉様が犠牲にならないといけないんだ』
『いいのよ。私は私のできることをするだけ。あなたはお父様から学び、皆を守り愛される領主になりなさい』
『姉様、何もできなくてごめんなさい。そして……今までありがとう。大好きだよ』
『私もカミルが大好きよ』
できればこんな結婚を、弟に見せたくはなかったが隠し通せる話ではない。
「行ってきます」
リラに心配をかけないように、アイラはニコリと微笑んだ。しかし、付き合いの長いリラにはそれが『作り笑顔』だとわかっていた。だって本当のアイラの笑顔は、今の表情とは比べものにならない程とびきり可愛らしいのだから。
「……アイラ」
「お父様、お願いしますね」
「ああ」
アイラは父親からエスコートを受け、教会のバージンロードをゆっくりと歩き出した。
ここはこの国で一番大きくて、有名な教会だ。たくさんの参列者がきているが、少し見渡しただけでも有力な貴族ばかりが座っている。
アイラは失敗しないようにゆっくりと足取りを進め、祭壇の前で待っているファビアンの元に辿り着いた。
「アイラ、愛してるよ。嫁いでも君は私の自慢の娘だ」
「お父様、今までありがとうございました。私も愛しています」
そっと父親の手を離し、アイラはファビアンの手を取った。
「アイラのことはお任せください」
「……お願いします」
二人で神父の前に立ち、誓いの言葉の宣誓になった。
「夫ファビアン・アンブロスはいついかなる時も、妻アイラ・ロッシュを愛することを誓いますか」
「はい、誓います」
迷いのないファビアンのはっきりした声が、教会に響いた。
「妻アイラ・ロッシュはいついかなる時も、夫ファビアン・ロッシュを愛することを誓いますか」
「……」
アイラはグッと唇を噛み締めて、返事をするために大きく息をつい込んだ。
「は……」
バーンッ
その時、教会の扉が大きな音を立てて開けられた。参列者たちは驚き、一気にザワザワと騒がしくなった。
「その結婚、待ってくれ!」
扉の前には、騎士の制服を着たオスカーが立っていた。みんなが一斉に後ろに注目をした。
「アイラを迎えに来た!」
大声でそう叫び、オスカーは一切物怖じすることなくバージンロードを歩きだした。
「オスカー……様」
アイラは驚きすぎて、何も言葉が出てこないままオスカーを見つめていた。
「……チッ、あいつ!」
隣にいたファビアンがギリっと唇を噛み、恐ろしい顔でオスカーを睨みつけた。
「おい、そいつを早くつまみ出せ!」
その声に警備員たちが一斉にオスカーを押さえつけようとしたが、オスカーはびくともしなかった。ドサドサッと警備員たちは、床に一瞬で倒されていく。オスカーはそれほどに強かった。
「俺を止めたければ、こんな奴等じゃ足りねぇよ」
「君は……神聖な結婚式をなんだと思っているんだい? こんなことをして、ただで済むと思うなよ」
「それはこっちの台詞だ。アイラを騙しやがって!」
オスカーは一直線に祭壇の前まで来て、ファビアンと睨み合った。
「何のことだかわからないな。変な言いがかりはよしてくれないか」
アイラはファビアンの隣で不安そうに瞳を揺らしながら、オスカーを見つめていた。
「大丈夫だ。俺に任せてくれ」
アイラに向かってニカッと豪快に笑い、オスカーは大きく息を吸い込んだ。
「みんな聞いてくれ。ロッシュ子爵領への放火は、ファビアン及びアンブロス公爵家の人間によるものだ。アイラ・ロッシュを手に入れるためのこの大罪を、誰が許すことができようか!」
そのオスカーの告発に、式場内は騒然としてしていた。
ほぼ婚約と結婚が同時だった。貴族でそんなことはかなりのレアケースだったが、ロッシュ子爵家への支援を急ぎたいからという理由で国から正式に受理された。
今回の結婚でアンブロス公爵家は、社交界でものすごく評判が上がっている。ファビアンは家格が下にも関わらず『真実の愛』を貫き、アイラの生家を助けた『ヒーロー』だと騒がれているからだ。
「ああ、アイラ。ものすごく可愛いよ」
「ありがとうございます」
アイラはものすごく豪華で煌びやかなウェディングドレスに身を包んでいた。既製品ではなく、一点物の特注品だ。こんな短期間でどうやってこの素晴らしいドレスを作らせたのかと、正直アイラは驚いた。
「良かった。デザイナーと長い間相談した甲斐があった」
「長い間?」
アイラは首を傾げた。二人の結婚が正式に決まって、まだ一ヶ月ほどしか経っていないからだ。
「……いや、なんでもないよ。本当にアイラは、天使が地上に舞い降りたようだ。ではまた結婚式でね」
「はい」
アイラは心が重たかった。この式が終われば、ついに正式な夫婦になる。考えただけで、胸が苦しかった。
「お嬢様……うっ、ううっ……」
「リラ、泣かないで」
「でも、お嬢様と一緒にいられるのも最後かと思うと……悲しくて……ううぅっ……」
結婚後もアイラについて来ると言っていたリラだったが、実はアンブロス公爵家から拒否された。アイラには新たな侍女を公爵家から用意するため、リラは連れて来ないようにと言われてしまった。理由は、義母が子爵家の人間が入ることを嫌がったからだ。
アイラの父親から再度お願いをしてもらったが叶わず、立場はロッシュ子爵家の方がかなり弱いため結局話は白紙になった。ファビアンからも謝罪を受けたが、決定は覆ることはなかった。
「今までありがとう。誰よりもリラと過ごした時間が長かったわ」
「どこにいても私はお嬢様の味方ですからね」
「ありがとう」
アイラはリラを抱き締めて、式場に向かった。もう両親とカミルには、昨夜のうちに挨拶を済ませている。
カミルはこの結婚にまだ納得できないようで、かなり不機嫌で宥めるのが大変だった。
『カミル、お願い。最後だから笑ってちょうだい』
『嫌だ。どうして……どうして……姉様が犠牲にならないといけないんだ』
『いいのよ。私は私のできることをするだけ。あなたはお父様から学び、皆を守り愛される領主になりなさい』
『姉様、何もできなくてごめんなさい。そして……今までありがとう。大好きだよ』
『私もカミルが大好きよ』
できればこんな結婚を、弟に見せたくはなかったが隠し通せる話ではない。
「行ってきます」
リラに心配をかけないように、アイラはニコリと微笑んだ。しかし、付き合いの長いリラにはそれが『作り笑顔』だとわかっていた。だって本当のアイラの笑顔は、今の表情とは比べものにならない程とびきり可愛らしいのだから。
「……アイラ」
「お父様、お願いしますね」
「ああ」
アイラは父親からエスコートを受け、教会のバージンロードをゆっくりと歩き出した。
ここはこの国で一番大きくて、有名な教会だ。たくさんの参列者がきているが、少し見渡しただけでも有力な貴族ばかりが座っている。
アイラは失敗しないようにゆっくりと足取りを進め、祭壇の前で待っているファビアンの元に辿り着いた。
「アイラ、愛してるよ。嫁いでも君は私の自慢の娘だ」
「お父様、今までありがとうございました。私も愛しています」
そっと父親の手を離し、アイラはファビアンの手を取った。
「アイラのことはお任せください」
「……お願いします」
二人で神父の前に立ち、誓いの言葉の宣誓になった。
「夫ファビアン・アンブロスはいついかなる時も、妻アイラ・ロッシュを愛することを誓いますか」
「はい、誓います」
迷いのないファビアンのはっきりした声が、教会に響いた。
「妻アイラ・ロッシュはいついかなる時も、夫ファビアン・ロッシュを愛することを誓いますか」
「……」
アイラはグッと唇を噛み締めて、返事をするために大きく息をつい込んだ。
「は……」
バーンッ
その時、教会の扉が大きな音を立てて開けられた。参列者たちは驚き、一気にザワザワと騒がしくなった。
「その結婚、待ってくれ!」
扉の前には、騎士の制服を着たオスカーが立っていた。みんなが一斉に後ろに注目をした。
「アイラを迎えに来た!」
大声でそう叫び、オスカーは一切物怖じすることなくバージンロードを歩きだした。
「オスカー……様」
アイラは驚きすぎて、何も言葉が出てこないままオスカーを見つめていた。
「……チッ、あいつ!」
隣にいたファビアンがギリっと唇を噛み、恐ろしい顔でオスカーを睨みつけた。
「おい、そいつを早くつまみ出せ!」
その声に警備員たちが一斉にオスカーを押さえつけようとしたが、オスカーはびくともしなかった。ドサドサッと警備員たちは、床に一瞬で倒されていく。オスカーはそれほどに強かった。
「俺を止めたければ、こんな奴等じゃ足りねぇよ」
「君は……神聖な結婚式をなんだと思っているんだい? こんなことをして、ただで済むと思うなよ」
「それはこっちの台詞だ。アイラを騙しやがって!」
オスカーは一直線に祭壇の前まで来て、ファビアンと睨み合った。
「何のことだかわからないな。変な言いがかりはよしてくれないか」
アイラはファビアンの隣で不安そうに瞳を揺らしながら、オスカーを見つめていた。
「大丈夫だ。俺に任せてくれ」
アイラに向かってニカッと豪快に笑い、オスカーは大きく息を吸い込んだ。
「みんな聞いてくれ。ロッシュ子爵領への放火は、ファビアン及びアンブロス公爵家の人間によるものだ。アイラ・ロッシュを手に入れるためのこの大罪を、誰が許すことができようか!」
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