ランドマーク ~そこに君がいてくれるから~

志生帆 海

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第2章

君と僕、俺と君 10

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「瑠衣、帰るぞ」
「あ、ちょっと待って」
 海里とショッピングモールを出ようとしたら、メインストリート沿いの露店で、気になるものを見つけた。
「これ……」
 ワゴンの上には小さなキーホルダーが所狭しと並んでいて、犬、猫、キリン……いろんな動物が、みんなミニチュアサイズで可愛かった。
「へぇ、瑠衣はこういうの好きなのか。欲しいのなら買ってやるよ」
「いや……これは僕のお小遣いで買うよ」
 日本にいた時は、屋敷に置いてもらうだけでも有り難いのに、学校にも特別に通わせてもらったので、どんなに下校後や休日、汗水たらして働いても無給だった。そんな僕を見かねて、執事の田村さんがたまにお駄賃をくれた。それを大切に貯めていたんだ。

……
『瑠衣はもう高校生だ。たまには友達と遊びに行ってもいいよ。放課後や休日に誘いもあるだろう。上には私が上手く言っておくから、そういう時は事前に相談しなさい』
『……ですが』
『いいから、ほら、これはお小遣いだよ』
『いけません。もらうわけには……』
『これは君が昨日、私の手伝いをしてくれた対価だ。いつか使いたくなる時がやって来るはずだ。さあ持っていなさい』
『……ありがとうございます』
 貯めたといっても、大した額ではない。でもこのキーホルダーを買うには十分だ。
「海里、これを両替してくれるか」
「いいけど、もしかして大切な人への贈り物なのか」
「……その、よくしてもらったので、お礼をしたくて」
「そうか。よかったよ。瑠衣にもそんな人が出来て。お前は本当に外の世界に無関心で、世捨て人みたいだったから心配していたんだぞ」
「……」
 そうだった。日本では何をされても、そういう運命だと諦めている節があったから……自分から何かを欲しい、何かを買いたいと思うのは初めてだ。
「で、どれを買うんだ?」
「これだよ」
 指さしたのは、小さな獅子のぬいぐるみのキーホルダーだった。
 獅子のたてがみの毛の色が、彼の髪色と似ている。
「これって、何色だろう?」
「うーん、アッシュブロンドじゃないか」
「そういう名前なのか。素敵だね」
「金髪のように華やかだけど、アンニュイな雰囲気もあって洒落ているよな。こういう髪色の奴、見たことあるよ。それにしても俺の髪色も、この国では浮かないから気楽だぜ」
「あ……」

 海里は……やはり髪色のこと気にしていたのか。先祖返りで外国の血が濃いのか……海里の明るい髪色と彫りの深い顔立ちは、日本では浮いてしまっていたのかも。海里は海里なりに悩んでいたのだ。

 でもね、華やかな明るいハニーミルクのような茶髪が、とても綺麗だよ。 
 朝日が似合う男だよ。海里は……


****

「えー、そんなちっこいウサギのぬいぐるみを買うのか」
「変か」
「うーむ、だめというか、そうだ、せっかく大事な人に贈るなら、その小さなウサギを包みこむようなサイズがいいぜ、アピールしろよ! 俺を見てってさ」
「ははっお前、センスないけど、案外いい事を言うんだな」
「包容力が肝心だぜ」
 包容力か。ピーターのアドバイスも、確かに一理ある。
 迷いに迷って、結局、最初に手に取った手のひらサイズではなく、もう二回りほど大きなものを選んだ。



 というわけで、俺は日曜日にリュックにウサギをぬいぐるみをぎゅうぎゅうに詰めて、公園にやってきた。

 早く来い。
 早く来てくれ。
 早く会いたいよ。
 君に──

 約束の時間よりずっと早く着いてしまったので、胸が高鳴りっ放しだ。
 あーもう変になる。

 濡烏ぬれがらす色の黒髪が美しい君に会いたいよ。
 夜の雰囲気を纏う、青みを帯びた黒い瞳も、艶があって綺麗だ。
 まさに日本語の『大和撫子やまとなでしこ』という言葉がぴったりだ。
(あれ? これって女性への形容詞か。まぁいいか)

 奥ゆかしさだけでなく、内に秘めた強さを兼ね備えている君は……
 俺にとって、今一番気になる存在だ。


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