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第2章
君と僕、俺と君 9
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「瑠衣、これはどうだ?」
紳士服売り場で、海里があれこれ手にとって見せてくれる。
でも……眩しいほどカラフルな色に目まいがする。
「……服の事はよく分からないから、海里に任せるよ」
「なんだよ? 張り合いがないな。せめて好きな色とか言えよ」
「……えっと……白かな」
「白ー? そんなありきたりの色でいいのか」
「うん、僕は白が好きになった」
母さんがよく、僕を白うさぎみたいだと言ってくれた。一時期は白が怖かったが、今は違う。
白い世界は君と出会った霧の世界の色。
そして昨日貸してもらった白いシャツの色だ。
「ふぅん、瑠衣らしいな。確かにお前には白が似合う。よし、じゃあシャツの素材に拘ろう」
「ありがとう。海里」
「シャツはこれとこれ、ズボンはこれにしよう。よし、全部試着してみろよ」
「こんなに?」
「いいから」
「……うん、分かった」
シャツとズボンを試着室で試していると、カーテンの向こうに立っていた海里が、誰かに呼ばれたようだ。
「おーい、海里じゃないか。こんな所でデート?」
「ピーターか。馬鹿、弟と買い物だ」
「弟? ……全然似てないな。ってか、さっきの子、本当に男の子だった?」
「見ていたのか」
「遠目だけど、お前が誰かと楽しそうに話しているなって。」
「何言ってんだか。ほらもう行けよ。買い物の邪魔すんな」
「ボーイッシュでキュートな女の子と話しているように見えたのに……怪しいなぁ」
またそんなことを……
英国で日本人はとても若く見られるのは理解出来たが、どうして何度もボーイッシュな女の子と間違えられるのか。公園で会った君と初めて会った時も同じように思われていたようだし……
とにかく海里に変な迷惑をかけて恥ずかしい。
もっと男らしくなりたいのに。
試着室の姿見に映る自分の顔を見て、ため息をついた。
成長するにつれて、僕の記憶の中の母さんにますます似て来るようだ。
「あっ!お前」
え? また誰か来たのか。海里の驚いた声が試着室に届いた。再び同じ事を言われるのは、流石に聞いていられない。恥ずかしくて、試着室の中で耳を塞いで蹲ってしまった。
「グレイじゃないか」
「あれ? アーサー、お前も買い物? 海里がデート中みたいで揶揄ってた」
「馬鹿、それは違うって言っているだろう」
「へぇ、モリミヤの恋人ってどんな子? 興味あるな」
「それがさぁ、ボーイッシュな黒髪の女の子だったぜ」
「おい! 余計な事、言うな。違うって」
「へぇ……黒髪か。見たいな」
「もう行けよ」
「はいはい、デートのお邪魔はしませんよー」
「やれやれ」
耳を塞いでいたので会話は聞こえなかったが、無性に恥ずかしく、居たたまれなくなった。
「瑠衣……おーい? 大丈夫か」
「あ、うん。今出るよ。……もう誰もいない?」
「いないよ」
「よかった」
「それより悪い、聞いてた? 口の悪いクラスメイトとその友達に会ったんだ。ごめんな」
「いや、よく聞こえなかったし……僕こそごめん」
「何を謝る?」
結局、海里に数着の洋服を買ってもらった。
こんなに買い物をするのは生まれて初めてなので勝手が分からず、ただ海里の後をついて回った。
情けないな。本当に僕は何も知らないし、一人で何も出来なくなっている。
「ありがとう」
「瑠衣、もう遠慮するなよ。困った事があったら何でも頼れよ」
「うん」
「そうだ。靴も買おう。随分くたびれているしな」
「え、でもこれ以上は」
「いいから!」
****
瑠衣の奴、相変わらず甘えるのに慣れていないな。
だが最近少し変化があったようだ。
あの日、首に巻いていたストールの色のように、瑠衣の心が確実に淡く色づいている。
彼女でも出来たのかと突っ込みたいが、瑠衣の場合そういうノリは駄目だろう。
思いっきり引かれそうだ。
これはそっと見守るのがベストだろうな。
日本で救えなかった瑠衣だから、英国ではせめて執事養成学校に入学するまでは自由に過ごして欲しい。父さんが俺と瑠衣を高校の半ばで留学させ、使用人もいないフラットで二人暮らしをさせてくれた真意を知りたいよ。
なぁ、少しは希望を抱いていいのか。
本当は瑠衣の存在を認めているのか。
聞きたい事があっても、絶対に聞けない。
そんな人だ。父さんは……
****
「アーサー、お前の買い物に付き合うのはいいが、何でこんなファンシーなぬいぐるみショップに? 恥ずかしいよ」
「いいから。手伝え。そうだ、白いぬいぐるみといえば何だ?」
「北極熊?」
「違う、そんな巨大じゃない」
「じゃあ……白アザラシ?」
「違う、そんな重たそうなのじゃなくて……もっと白くてほっそりとして可愛いのだ」
「分かった! 白蛇?」
「……お前……センスないな」
「なんだ、彼女にプレゼントか」
「いや、そういうわけじゃないが、贈り物を選んでいる」
あっ、これだ。
小さな手のひらサイズのsnowshoe rabbit(雪みたいな色の兎)だ。
あの子の雰囲気と似ている!
紳士服売り場で、海里があれこれ手にとって見せてくれる。
でも……眩しいほどカラフルな色に目まいがする。
「……服の事はよく分からないから、海里に任せるよ」
「なんだよ? 張り合いがないな。せめて好きな色とか言えよ」
「……えっと……白かな」
「白ー? そんなありきたりの色でいいのか」
「うん、僕は白が好きになった」
母さんがよく、僕を白うさぎみたいだと言ってくれた。一時期は白が怖かったが、今は違う。
白い世界は君と出会った霧の世界の色。
そして昨日貸してもらった白いシャツの色だ。
「ふぅん、瑠衣らしいな。確かにお前には白が似合う。よし、じゃあシャツの素材に拘ろう」
「ありがとう。海里」
「シャツはこれとこれ、ズボンはこれにしよう。よし、全部試着してみろよ」
「こんなに?」
「いいから」
「……うん、分かった」
シャツとズボンを試着室で試していると、カーテンの向こうに立っていた海里が、誰かに呼ばれたようだ。
「おーい、海里じゃないか。こんな所でデート?」
「ピーターか。馬鹿、弟と買い物だ」
「弟? ……全然似てないな。ってか、さっきの子、本当に男の子だった?」
「見ていたのか」
「遠目だけど、お前が誰かと楽しそうに話しているなって。」
「何言ってんだか。ほらもう行けよ。買い物の邪魔すんな」
「ボーイッシュでキュートな女の子と話しているように見えたのに……怪しいなぁ」
またそんなことを……
英国で日本人はとても若く見られるのは理解出来たが、どうして何度もボーイッシュな女の子と間違えられるのか。公園で会った君と初めて会った時も同じように思われていたようだし……
とにかく海里に変な迷惑をかけて恥ずかしい。
もっと男らしくなりたいのに。
試着室の姿見に映る自分の顔を見て、ため息をついた。
成長するにつれて、僕の記憶の中の母さんにますます似て来るようだ。
「あっ!お前」
え? また誰か来たのか。海里の驚いた声が試着室に届いた。再び同じ事を言われるのは、流石に聞いていられない。恥ずかしくて、試着室の中で耳を塞いで蹲ってしまった。
「グレイじゃないか」
「あれ? アーサー、お前も買い物? 海里がデート中みたいで揶揄ってた」
「馬鹿、それは違うって言っているだろう」
「へぇ、モリミヤの恋人ってどんな子? 興味あるな」
「それがさぁ、ボーイッシュな黒髪の女の子だったぜ」
「おい! 余計な事、言うな。違うって」
「へぇ……黒髪か。見たいな」
「もう行けよ」
「はいはい、デートのお邪魔はしませんよー」
「やれやれ」
耳を塞いでいたので会話は聞こえなかったが、無性に恥ずかしく、居たたまれなくなった。
「瑠衣……おーい? 大丈夫か」
「あ、うん。今出るよ。……もう誰もいない?」
「いないよ」
「よかった」
「それより悪い、聞いてた? 口の悪いクラスメイトとその友達に会ったんだ。ごめんな」
「いや、よく聞こえなかったし……僕こそごめん」
「何を謝る?」
結局、海里に数着の洋服を買ってもらった。
こんなに買い物をするのは生まれて初めてなので勝手が分からず、ただ海里の後をついて回った。
情けないな。本当に僕は何も知らないし、一人で何も出来なくなっている。
「ありがとう」
「瑠衣、もう遠慮するなよ。困った事があったら何でも頼れよ」
「うん」
「そうだ。靴も買おう。随分くたびれているしな」
「え、でもこれ以上は」
「いいから!」
****
瑠衣の奴、相変わらず甘えるのに慣れていないな。
だが最近少し変化があったようだ。
あの日、首に巻いていたストールの色のように、瑠衣の心が確実に淡く色づいている。
彼女でも出来たのかと突っ込みたいが、瑠衣の場合そういうノリは駄目だろう。
思いっきり引かれそうだ。
これはそっと見守るのがベストだろうな。
日本で救えなかった瑠衣だから、英国ではせめて執事養成学校に入学するまでは自由に過ごして欲しい。父さんが俺と瑠衣を高校の半ばで留学させ、使用人もいないフラットで二人暮らしをさせてくれた真意を知りたいよ。
なぁ、少しは希望を抱いていいのか。
本当は瑠衣の存在を認めているのか。
聞きたい事があっても、絶対に聞けない。
そんな人だ。父さんは……
****
「アーサー、お前の買い物に付き合うのはいいが、何でこんなファンシーなぬいぐるみショップに? 恥ずかしいよ」
「いいから。手伝え。そうだ、白いぬいぐるみといえば何だ?」
「北極熊?」
「違う、そんな巨大じゃない」
「じゃあ……白アザラシ?」
「違う、そんな重たそうなのじゃなくて……もっと白くてほっそりとして可愛いのだ」
「分かった! 白蛇?」
「……お前……センスないな」
「なんだ、彼女にプレゼントか」
「いや、そういうわけじゃないが、贈り物を選んでいる」
あっ、これだ。
小さな手のひらサイズのsnowshoe rabbit(雪みたいな色の兎)だ。
あの子の雰囲気と似ている!
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