幸せな存在 ~歩み寄る恋をしよう~

志生帆 海

文字の大きさ
77 / 1,865
発展編

Let's go to the beach 7

しおりを挟む
「あれ?おにいちゃん……ねちゃったの?」

 おにいちゃんの背中が真っ赤でヒリヒリいたそう。それに泣いているの?

「ん………お城……僕達の……」

 その言葉を聞いた時、急にさっき作ったお城を見たくなったんだ。どうしようかな。パパにはここにいるように言われたけど……すこしならいいかな。

「お城をちょっとだけ見てくるね。おにいちゃんのお城をメイがまもってくるね!」

 砂浜に戻ると、お城はまだちゃんとあった。

「よかった~お兄ちゃんにはやく知らせないと」

 でも、えっと……ボクどこから来たのかな。

 キョロキョロと見回すと、かき氷やさんの前にお兄ちゃんの背中が見えた。お兄ちゃんはキョロキョロしながら歩いている。

「わ、もしかしてメイのこと探しているのかも。いそがなくっちゃ!」

 走って、おにいちゃんの足元にギュッと抱きついた。

「おにいちゃん~もう起きてだいじょうぶなの?あーよかったぁ」
「えっわっ!」

 かえってきた声が、おにいちゃんのものじゃないので、びっくりした。

「え……なんで?だって……この水着おにいちゃんのだよね?」

 おそるおそる上を見ると、ボクのことを困った顔で見下ろしている顔は、お兄ちゃんじゃなかった。でもとってもとってもキレイな人だった。ボクのおにいちゃんと同じくらいキレイだったので、ぼーっと見上げてしまった。

「あの……えっと……君、大丈夫?もしかして迷子かなぁ」
「えっと……あの……えっと……ううっ……パパぁ……どこぉ」

 どうしよう。おにいちゃんに会えないとおもうと悲しくて、涙が出てきちゃった。

「わっ泣いちゃった。どうしたの?」
「パパぁ……」
「そうか、パパとはぐれちゃったんだね。大丈夫だよ。一緒に探してあげるから」

 この人も、メイのおにいちゃんと同じくらいにやさしいおいにちゃんだ。なんだかホッとして、ますます泣いちゃった。

「エーンエーンっ」
「わっ……困ったな」

 おにいちゃんは、メイみたいなちいさな子に慣れていないみたいで、オロオロしだしちゃったので、こころぼそくなって、またいっぱい泣いちゃった。

 そこにパパみたいにかっこいいヒーローが登場した。

「洋、どうした?一体この子は誰だ?」
「あっ丈、よかった。その……迷子みたいで」
「なるほど、それなら向こうの救護室に行って呼び出してもらえばいい」
「そうか」

****

「芽生っ、どこだ?」

 呼びかけながら砂浜を走っていると、海水浴場に町営放送が届いた。

「迷子のお知らせです。四歳の……赤い水着に青いビーチサンダルの男の子を救護室でお預かりしています。お心あたりの方は、至急お迎えにいらしてください」

 芽生だ!間違いない。

 ほっと安堵しそうになったが、その前にこの目で確かめないと!
 
 慌てて救護室に駆け込むと、椅子に座らされている芽生をすぐに見つけた。

「パパぁ……」
「芽生!このバカ!じっとしてろって言っただろう!」
「ごっごめんなさい。エーンエーン」

 まずい!人前で怒鳴ってしまった!だがその位心配したんだぞ!俺も瑞樹も……瑞樹なんて真っ青になって震えていた。自分を責めていないといいが……

 今度は泣きながら抱きついてきた芽生のことを、しゃがんで労わるように抱きしめてやった。

「芽生、よかったよ。無事で」
「あの……メイくんのお父様ですか」
「はいそうです。」
「よかったね~メイくん。パパが来てくれて」
「あのこちらの方が芽生くんを届けてくれまして……」
「すいません、ご迷惑を……あっ……」

 そう言いかけて、言葉がピタッと停止してしまった。

 しゃがんで芽生を抱きしめる俺から、迷子の芽生を届けてくれたという男性の下半身が目に入ったのだが、その水着に目が点になった。

 瑞樹……?

 いやまさかそんなはずはない。

 慌てて顔まで見上げてホッとした。瑞樹じゃなかった。偶然にも俺が買ってあげた水着とまったく同じものを着用している男性だった。しかもすごい美形だ……あれ?この男性どこかで見たような。あぁそうだ、水着のモデルをしていた涼と似ている。

「メイくん、パパと会えて本当によかったね」
「うん、おにいちゃんありがとう」
「あの、芽生が世話になって、本当にありがとうございました」

 俺からも重ねて礼を言った。本当に何事もなくてよかった。ひやひやしたぞ……

「とんでもない。お役に立てて良かったです。じゃあ……」
「ありがとうございます。芽生もお礼を。さぁもう戻ろう。瑞樹がすごく心配していたぞ」

 その言葉に、瑞樹と同じ水着の彼が振り返った。

「ミズキ……?あっそうか、ママにも心配かけちゃったんだね。もうひとりで出歩いたら駄目だよ」

 芽生の顔が、ぱっと嬉しそうに輝いた。

「うん!わかった!そうか……ママなんだ!ボク……ママに悪いことしちゃったから早く戻らないと」
「クスっ可愛いですね」

 うーん、何か盛大な誤解を生んでいるような気がした。

 っとそこに当の本人の瑞樹が飛び込んできた。

 そうか……君も迷子の放送を聞いたんだな。

「芽生くん!」

 瑞樹はひどく焦燥していて、芽生を抱きしめるなりぽろぽろと涙を流した。その泣き顔が切なすぎてズキっと胸が痛んだ。

 何かを失うことを、君は極端に怖がり恐れているようだ。

「おにいちゃん……ママ……」

 芽生はさっき言われた「ママ」という言葉をそっと口に出し、瑞樹に甘えるように抱きついていた。瑞樹にはその言葉は聞こえなかったようだが、芽生にとって瑞樹がとても大事な存在になっていることが分かった瞬間だった。

 一方の瑞樹は芽生をしっかり抱きしめて、まだ興奮していた。

「よかった……よかった……本当に生きていて……すごく怖かった」

 切なさの込み上げる言葉を漏らしながら……しくしくと泣き続けていた。

 

しおりを挟む
感想 85

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

【完結】言えない言葉

未希かずは(Miki)
BL
 双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。  同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。  ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。  兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。  すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。 第1回青春BLカップ参加作品です。 1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。 2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)

処理中です...