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発展編
Let's go to the beach 15
風呂から上がると、いい時間だった。夕食は保養所二階の大食堂で、一斉に19時からだとチェックイン時に言われていた。
「パパーおなかすいたよ」
「わかったわかった。もう19時だから早く行こう。しかし旅行の醍醐味だよな。風呂の後食事が用意されているなんて、ありがたい。なっ瑞樹もそう思うだろう?」
「……はい」
宗吾さんの言うことは、もっともだ。 宗吾さんは離婚した後その苦労を知ったのだろうが、僕の方はどうだろう?
引き取られた当初から、兄がいつも食事の準備をしてくれた。もちろん義母も仕事の合間の細切れ時間を活かして、いつも手作りの美味しい食事を作ってくれた。本当に思い返せば返すほど、僕は恵まれていた。
上京してからも大学では寮生活だったので、食事は寮母さんに任せっきりだった。だから一番困ったのは一馬と二人暮らしを始めた時だった。
(瑞樹はいいよ。食事は俺が担当するから)
(でも悪いよ、僕も手伝う)
(いや正直瑞樹が料理を作っているのを見ているとヒヤヒヤする。いつ包丁で指を切るかとさ)
(酷いなぁ)
だから一馬に頼りっきりだった。仕事から疲れて帰って来ても朝寝坊しても……いつも美味しい食事が準備されていた。
僕は皆にちゃんと愛されていた。一馬とは別れることになったが、付き合っている間は優しさで包まれていた。そして義母からも兄からも惜しみない愛を注がれて育った。
そして今の僕は……宗吾さんの愛に包まれている。
いつも何かあったら真っ先に僕が引けばいい、僕が謝ればいいと思って生きてきたが、宗吾さんには貪欲になってしまうみたいだ。
僕が僕ではなくなっていくようで正直戸惑っている。でも今までとは違う新しい世界が開けていくことが新鮮でもあった。僕も……僕だって何か新しいことをしてみたい。
「宗吾さん、僕にも料理を教えてください。あなたに協力したいです」
思い切って聞いてみた。 一馬の時にも申し出たことはあるが、あっさり断られてしまった。だから今回も同じ反応かなと期待はしていなかった。
だが……
「嬉しいことを言ってくれるな。不得意なのに頑張ろうという意欲がいいね。俺も瑞樹の手料理を食べてみたいよ」
予期せぬ返事に心が躍った。
「いいんですか。僕……かなり危なっかしいですよ」
「いや、そこがまたいい。俺がつきっきりで手取り足取りさーへへっ」
「宗吾さん、なんかやらしいおじさんみたいですよ」
「えっそんな! 下心なんてないぞ。瑞樹の色っぽいエプロン姿を見たい以外はね、おっと」
「え……まさか裸エプロンなんていいませんよね?」
「え? 瑞樹、今なんて?」
うわ! 今僕……一体何を口走った?もう消えたい……恥ずかしくて死にそうだ。
すると優しい宗吾さんは僕の気持ちを推し量って、話をそらしてくれた。
「えっとじゃあさ、俺が瑞樹に料理を教える代わりに、瑞樹は俺に掃除のレクチャーを頼むよ。それでどうだ?」
「はっはい、それなら」
****
「パパたちごはんがきたよー」
「おー芽生のうまそうだな」
「おこさまランチだいすき!」
「よし! いっぱい食えよ」
芽生の料理が先に来たので、瑞樹とふたりで食べる様子を眺めていた。
「あっ芽生くん、ちょっと待って、それじゃ食べにくいだろう」
やはり彼はとても気がつく青年だ。大きなハンバーグを小さく切ってやったり、エビの殻を剥いてやったりと、母親なら気づくような細やかな心遣いを自然にしてくれる。所作も美しく優しい雰囲気なものだから、芽生も嬉しそうにじっと見つめていた。
「おにいちゃんって、ママみたいだね」
「え?そんな……そうかな?ありがとう」
芽生の子供らしい素直な感想を、瑞樹も素直に受け取っていた。
あぁ彼のこういう所が好きだ。
大人になると余計なことまで考えすぎてしまうだろう。疑い深くもなるだろう。人の言葉にも裏があるのではと変に勘ぐったりして、毎日窮屈だった。
玲子と俺が駄目になった理由のひとつがそれだ。お互いがお互いの言葉を信じられなくなったから。
瑞樹を見ていると、そんなに難しいことではなかったんだなと思うよ。
瑞樹の言葉を……俺は素直に受け止めるよ。
本当に可愛い俺の恋人だ。
「宗吾さん……そんなにじっと見ないでください。あの…… 恥ずかしいです」
瑞樹を穴が開くほど見つめていたら注意されてしまった。だが君を知れば知るほど好きになるから、目が離せないのは仕方がないだろう。
すると男ばかりの四人組が俺たちのテーブルに近づいてきた。
見れば、先ほど風呂場で散々大騒ぎした面子だ。なるほど夕食のテーブルも隣同士なのか。部屋のプレートを確認すると、どうやら客室もお隣さんのようだ。
彼らとは本当に縁があるな。
そうか……きっと強い縁があるから、こうやってどんどん繋がっていくのだろう。
「パパーおなかすいたよ」
「わかったわかった。もう19時だから早く行こう。しかし旅行の醍醐味だよな。風呂の後食事が用意されているなんて、ありがたい。なっ瑞樹もそう思うだろう?」
「……はい」
宗吾さんの言うことは、もっともだ。 宗吾さんは離婚した後その苦労を知ったのだろうが、僕の方はどうだろう?
引き取られた当初から、兄がいつも食事の準備をしてくれた。もちろん義母も仕事の合間の細切れ時間を活かして、いつも手作りの美味しい食事を作ってくれた。本当に思い返せば返すほど、僕は恵まれていた。
上京してからも大学では寮生活だったので、食事は寮母さんに任せっきりだった。だから一番困ったのは一馬と二人暮らしを始めた時だった。
(瑞樹はいいよ。食事は俺が担当するから)
(でも悪いよ、僕も手伝う)
(いや正直瑞樹が料理を作っているのを見ているとヒヤヒヤする。いつ包丁で指を切るかとさ)
(酷いなぁ)
だから一馬に頼りっきりだった。仕事から疲れて帰って来ても朝寝坊しても……いつも美味しい食事が準備されていた。
僕は皆にちゃんと愛されていた。一馬とは別れることになったが、付き合っている間は優しさで包まれていた。そして義母からも兄からも惜しみない愛を注がれて育った。
そして今の僕は……宗吾さんの愛に包まれている。
いつも何かあったら真っ先に僕が引けばいい、僕が謝ればいいと思って生きてきたが、宗吾さんには貪欲になってしまうみたいだ。
僕が僕ではなくなっていくようで正直戸惑っている。でも今までとは違う新しい世界が開けていくことが新鮮でもあった。僕も……僕だって何か新しいことをしてみたい。
「宗吾さん、僕にも料理を教えてください。あなたに協力したいです」
思い切って聞いてみた。 一馬の時にも申し出たことはあるが、あっさり断られてしまった。だから今回も同じ反応かなと期待はしていなかった。
だが……
「嬉しいことを言ってくれるな。不得意なのに頑張ろうという意欲がいいね。俺も瑞樹の手料理を食べてみたいよ」
予期せぬ返事に心が躍った。
「いいんですか。僕……かなり危なっかしいですよ」
「いや、そこがまたいい。俺がつきっきりで手取り足取りさーへへっ」
「宗吾さん、なんかやらしいおじさんみたいですよ」
「えっそんな! 下心なんてないぞ。瑞樹の色っぽいエプロン姿を見たい以外はね、おっと」
「え……まさか裸エプロンなんていいませんよね?」
「え? 瑞樹、今なんて?」
うわ! 今僕……一体何を口走った?もう消えたい……恥ずかしくて死にそうだ。
すると優しい宗吾さんは僕の気持ちを推し量って、話をそらしてくれた。
「えっとじゃあさ、俺が瑞樹に料理を教える代わりに、瑞樹は俺に掃除のレクチャーを頼むよ。それでどうだ?」
「はっはい、それなら」
****
「パパたちごはんがきたよー」
「おー芽生のうまそうだな」
「おこさまランチだいすき!」
「よし! いっぱい食えよ」
芽生の料理が先に来たので、瑞樹とふたりで食べる様子を眺めていた。
「あっ芽生くん、ちょっと待って、それじゃ食べにくいだろう」
やはり彼はとても気がつく青年だ。大きなハンバーグを小さく切ってやったり、エビの殻を剥いてやったりと、母親なら気づくような細やかな心遣いを自然にしてくれる。所作も美しく優しい雰囲気なものだから、芽生も嬉しそうにじっと見つめていた。
「おにいちゃんって、ママみたいだね」
「え?そんな……そうかな?ありがとう」
芽生の子供らしい素直な感想を、瑞樹も素直に受け取っていた。
あぁ彼のこういう所が好きだ。
大人になると余計なことまで考えすぎてしまうだろう。疑い深くもなるだろう。人の言葉にも裏があるのではと変に勘ぐったりして、毎日窮屈だった。
玲子と俺が駄目になった理由のひとつがそれだ。お互いがお互いの言葉を信じられなくなったから。
瑞樹を見ていると、そんなに難しいことではなかったんだなと思うよ。
瑞樹の言葉を……俺は素直に受け止めるよ。
本当に可愛い俺の恋人だ。
「宗吾さん……そんなにじっと見ないでください。あの…… 恥ずかしいです」
瑞樹を穴が開くほど見つめていたら注意されてしまった。だが君を知れば知るほど好きになるから、目が離せないのは仕方がないだろう。
すると男ばかりの四人組が俺たちのテーブルに近づいてきた。
見れば、先ほど風呂場で散々大騒ぎした面子だ。なるほど夕食のテーブルも隣同士なのか。部屋のプレートを確認すると、どうやら客室もお隣さんのようだ。
彼らとは本当に縁があるな。
そうか……きっと強い縁があるから、こうやってどんどん繋がっていくのだろう。
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