133 / 1,871
発展編
深まる秋・深まる恋 16
見たいような、見たくないような大幅に揺れ動く感情だった。
「瑞樹くん……俺は怖いよ。あの丈が本当に魔女の仮装をするなんて、本気か」
「僕も怖いな。あの図体の大きなガサツな流にドレスなんて無理だろう」
「おにいちゃん、パパどうなっちゃうの? おばけになるの? こわいよぉ~」
三人に縋るように見つめられ、僕だって困ってしまう。宗吾さんのイメージがガラガラと崩れて『百年の恋も一時に冷める』状態になったらどうしよう!
勇気を振り絞り、襖の向こうに声を掛けてみる。
「あの……そろそろいいですか」
「よーし、いいぞ!」
ガラッと扉が開くと、そこには大柄な三人が仁王立ちしていた。
「えっ……あ……?」
驚きのあまり目をパチパチさせてしまった。
あっありえないんですけど!
なっ……なんでパンツ一丁に?
三人とも、さっきの衣装はどこへ?
「なっ……丈!お前、約束破ったのか。魔女の仮装をどこにやった?」
「流、どういうことだ? 何で君たち揃って下着姿なのだ?」
「酷いなぁ。大人って嘘つきだな」と、薙くんもかなりのブーイングだ。
「宗吾さん、僕達は真面目に着たのに……酷いですよ」
「パパ~おへそ出してると、おカゼひいちゃうよ~」
最後の芽生くんの可愛い反応には癒された。でもなぁ……
仁王立ちした三人は、ついでに誰が一番筋肉があるか比べっこする始末だ。
「ふふ、丈よりは俺の方がやっぱり逞しいな」
「はぁ……流兄さんは、また大人げないことを」
「ふーん宗吾もたいしたことないな。お前、最近ジム、サボっているだろう? 」
「なっなんで分かる? 」
「筋肉たるんでいるぞ。俺の腹筋はどうだ? いい具合に割れているだろう」
「ムッ」
ちょっとちょっと待って……ハロウィンの仮装は本当にどこに?
「宗吾さん!」
「あっ瑞樹、へぇ白衣姿いいな。似合っているぞ。知的に見えるよ」
「あっありがとうございます、っていうか、それよりナース衣装はどうしたのですか? 着ていたのでは? 」
「あぁちゃんと着たよ」
「どこがですか! 」
ビシッと厳しい口調で問いかけるが宗吾さんは少しも悪びれることなく、畳の上を指差した。そこに何が?
「あっ!」
ビリビリに破れた残骸が、見えた。
「俺たちさ、着たことは着たよ。だが一歩歩けばスカートは破れるし、ボタンは吹っ飛ぶしで……自然とズルズル脱げてしまったのさ」
「あ──マジ? オレの制服は無事?」
「あぁあれは誰も着なかった」
「良かった!」
「宗吾が後でどうしても貸してくれって騒いでいたからな」
それってまた僕に着せたいって言う話か……はぁ宗吾さんは、全くどこまでもシツコイ・ヘンタイだ。
「流……だが物を粗末にしてはいけないよ」
「兄さん、これは不可抗力だ。俺たちは悪くない。そうだ……でも兄さんたちなら、まだ着られそうだな」
「え……そうかな。でもどういうこと? 」
翠さんが意外な様子で、流さんの意見を促した。
「衣装が泣いているって話だよ。せっかく買ったのに日の目も見ずに破れ果てていくなんて悲しいって」
「そんな……」
翠さんが破れてしまった衣装を見て、悲し気な表情で振り向いた。
「洋くん、瑞樹くん……君たちと一緒にこれを供養したい」
「くっ供養って?」
「せめて一度ちゃんと着てあげてから廃棄しよう」
「ええぇ……」
なんでそうなるのか……せっかく僕たちはドラキュラにタキシード。医師と決まっているのに。
「瑞樹くん……申し訳ないけれども、この寺の流儀に従ってもらえるかな」
「はっハイ」
そんな風にご住職から頼まれたら断れない。なんだかパンツの男たちが期待に満ちた目をしているような気もするが、見ないことにしよう。
「じゃあ一度向こうで着替えよう。さぁ洋くんもおいで」
「あっ……はい」
「薙と芽生くんは、そのまま待っていていいよ」
「はーい!」
「はぁ……父さんってやっぱりどこか達観してるなぁ」
どうやらこの寺の住職である翠さんのいう事には、皆、逆らえないようだ。
僕も頭の中でこれは供養だ。供養……供養と必死に唱えながら、宗吾さんが脱いだ(破いた)衣装を着た。
わっ……ナース服の胸のボタンが吹っ飛んでいるから、胸元がスースーヒラヒラする。それに何でこんなにミニスカートなんだよ! 困る……
洋くんを見ると今度は魔女姿になっていた。心を無にしているようだが、かなり色っぽい。ドラキュラ姿も色気があったが魔女もいいな。胸元が派手に破れてしまった衣装を懸命に手で押さえて……スカート丈の短かさにも戸惑っている。「丈の奴、こんなに破いて……」
翠さんはどうだろう? 水色のシンデレラのようなレースのドレスは清楚なのに、所々ビリビリに破れて退廃的な色気が滲み出ている。
これって……結局、僕達が女装する羽目になったってことかと苦笑してしまう。
「翠さん、さっさと終わらせましょう」
洋くんがスッと立って申し出る。彼は意外と潔く男らしい所があるようだ。
「そうだね。これ以上じらしてもしょうがない」
なるほど翠さんは大人の嗜みを知っている人だ。
「おーい! もういいか~い」
宗吾さん……あのぉ隠れん坊ではないのですが……と突っ込みたくなる。
「よし、じゃあ三人並んで一気に登場しよう」
襖を明けた途端、丈さん、流さん、宗吾さんが大きく息を呑んだ。続いてゴックンっと……唾を呑み込む音が響く。
「あっ……流!また鼻血!」
「あ……兄さん、すまん」
「洋……それセクシー過ぎるぞ」
「うっうるさい。あんまり見るなよ」
「瑞樹……駄目だ! そんなエロい姿を皆に見せては駄目だ! 」
「宗吾さん……ちょっとお静かに……」
三者三様の反応に、結局、場が盛り上がる。
こんなバカげたことが出来るのも、心から信頼している人たちだからだと思う。
今まで僕の周りに、こんな人たちはいなかった。
開き直って、僕から宗吾さんに声を掛けてみた。
「宗吾さん……あの、僕の女装どうですか。さっき見たいって言っていたから……満足しましたか」
「あぁ最高だ! 想像以上にいいぞ! あっじゃあ……次は猫耳と尻尾、ついでに学ランもよろしく」
「ちょっ、もう調子に乗らないで下さいよーそれより、早く何か着てください!」
「瑞樹くん……俺は怖いよ。あの丈が本当に魔女の仮装をするなんて、本気か」
「僕も怖いな。あの図体の大きなガサツな流にドレスなんて無理だろう」
「おにいちゃん、パパどうなっちゃうの? おばけになるの? こわいよぉ~」
三人に縋るように見つめられ、僕だって困ってしまう。宗吾さんのイメージがガラガラと崩れて『百年の恋も一時に冷める』状態になったらどうしよう!
勇気を振り絞り、襖の向こうに声を掛けてみる。
「あの……そろそろいいですか」
「よーし、いいぞ!」
ガラッと扉が開くと、そこには大柄な三人が仁王立ちしていた。
「えっ……あ……?」
驚きのあまり目をパチパチさせてしまった。
あっありえないんですけど!
なっ……なんでパンツ一丁に?
三人とも、さっきの衣装はどこへ?
「なっ……丈!お前、約束破ったのか。魔女の仮装をどこにやった?」
「流、どういうことだ? 何で君たち揃って下着姿なのだ?」
「酷いなぁ。大人って嘘つきだな」と、薙くんもかなりのブーイングだ。
「宗吾さん、僕達は真面目に着たのに……酷いですよ」
「パパ~おへそ出してると、おカゼひいちゃうよ~」
最後の芽生くんの可愛い反応には癒された。でもなぁ……
仁王立ちした三人は、ついでに誰が一番筋肉があるか比べっこする始末だ。
「ふふ、丈よりは俺の方がやっぱり逞しいな」
「はぁ……流兄さんは、また大人げないことを」
「ふーん宗吾もたいしたことないな。お前、最近ジム、サボっているだろう? 」
「なっなんで分かる? 」
「筋肉たるんでいるぞ。俺の腹筋はどうだ? いい具合に割れているだろう」
「ムッ」
ちょっとちょっと待って……ハロウィンの仮装は本当にどこに?
「宗吾さん!」
「あっ瑞樹、へぇ白衣姿いいな。似合っているぞ。知的に見えるよ」
「あっありがとうございます、っていうか、それよりナース衣装はどうしたのですか? 着ていたのでは? 」
「あぁちゃんと着たよ」
「どこがですか! 」
ビシッと厳しい口調で問いかけるが宗吾さんは少しも悪びれることなく、畳の上を指差した。そこに何が?
「あっ!」
ビリビリに破れた残骸が、見えた。
「俺たちさ、着たことは着たよ。だが一歩歩けばスカートは破れるし、ボタンは吹っ飛ぶしで……自然とズルズル脱げてしまったのさ」
「あ──マジ? オレの制服は無事?」
「あぁあれは誰も着なかった」
「良かった!」
「宗吾が後でどうしても貸してくれって騒いでいたからな」
それってまた僕に着せたいって言う話か……はぁ宗吾さんは、全くどこまでもシツコイ・ヘンタイだ。
「流……だが物を粗末にしてはいけないよ」
「兄さん、これは不可抗力だ。俺たちは悪くない。そうだ……でも兄さんたちなら、まだ着られそうだな」
「え……そうかな。でもどういうこと? 」
翠さんが意外な様子で、流さんの意見を促した。
「衣装が泣いているって話だよ。せっかく買ったのに日の目も見ずに破れ果てていくなんて悲しいって」
「そんな……」
翠さんが破れてしまった衣装を見て、悲し気な表情で振り向いた。
「洋くん、瑞樹くん……君たちと一緒にこれを供養したい」
「くっ供養って?」
「せめて一度ちゃんと着てあげてから廃棄しよう」
「ええぇ……」
なんでそうなるのか……せっかく僕たちはドラキュラにタキシード。医師と決まっているのに。
「瑞樹くん……申し訳ないけれども、この寺の流儀に従ってもらえるかな」
「はっハイ」
そんな風にご住職から頼まれたら断れない。なんだかパンツの男たちが期待に満ちた目をしているような気もするが、見ないことにしよう。
「じゃあ一度向こうで着替えよう。さぁ洋くんもおいで」
「あっ……はい」
「薙と芽生くんは、そのまま待っていていいよ」
「はーい!」
「はぁ……父さんってやっぱりどこか達観してるなぁ」
どうやらこの寺の住職である翠さんのいう事には、皆、逆らえないようだ。
僕も頭の中でこれは供養だ。供養……供養と必死に唱えながら、宗吾さんが脱いだ(破いた)衣装を着た。
わっ……ナース服の胸のボタンが吹っ飛んでいるから、胸元がスースーヒラヒラする。それに何でこんなにミニスカートなんだよ! 困る……
洋くんを見ると今度は魔女姿になっていた。心を無にしているようだが、かなり色っぽい。ドラキュラ姿も色気があったが魔女もいいな。胸元が派手に破れてしまった衣装を懸命に手で押さえて……スカート丈の短かさにも戸惑っている。「丈の奴、こんなに破いて……」
翠さんはどうだろう? 水色のシンデレラのようなレースのドレスは清楚なのに、所々ビリビリに破れて退廃的な色気が滲み出ている。
これって……結局、僕達が女装する羽目になったってことかと苦笑してしまう。
「翠さん、さっさと終わらせましょう」
洋くんがスッと立って申し出る。彼は意外と潔く男らしい所があるようだ。
「そうだね。これ以上じらしてもしょうがない」
なるほど翠さんは大人の嗜みを知っている人だ。
「おーい! もういいか~い」
宗吾さん……あのぉ隠れん坊ではないのですが……と突っ込みたくなる。
「よし、じゃあ三人並んで一気に登場しよう」
襖を明けた途端、丈さん、流さん、宗吾さんが大きく息を呑んだ。続いてゴックンっと……唾を呑み込む音が響く。
「あっ……流!また鼻血!」
「あ……兄さん、すまん」
「洋……それセクシー過ぎるぞ」
「うっうるさい。あんまり見るなよ」
「瑞樹……駄目だ! そんなエロい姿を皆に見せては駄目だ! 」
「宗吾さん……ちょっとお静かに……」
三者三様の反応に、結局、場が盛り上がる。
こんなバカげたことが出来るのも、心から信頼している人たちだからだと思う。
今まで僕の周りに、こんな人たちはいなかった。
開き直って、僕から宗吾さんに声を掛けてみた。
「宗吾さん……あの、僕の女装どうですか。さっき見たいって言っていたから……満足しましたか」
「あぁ最高だ! 想像以上にいいぞ! あっじゃあ……次は猫耳と尻尾、ついでに学ランもよろしく」
「ちょっ、もう調子に乗らないで下さいよーそれより、早く何か着てください!」
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。