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発展編
帰郷 32
「宗吾! 瑞樹は? 瑞樹の様子はどうだ? 」
広樹がすぐに俺を見つけ、血相を変えて寄ってきた。
「あぁ……今やっと眠った所だ」
「無事なのか。その……」
「今から主治医の先生の話を聞く所だ。一緒に行こう」
「分かった」
そこで瑞樹の義母と目があったので会釈した。少しだけ決まりが悪いな。きちんと函館に挨拶に行こうと思っていたのに。だがここは正直に俺と瑞樹の関係をはっきり示そう。
「はじめまして。こんな形で挨拶することになるとは……瑞樹くんの恋人の滝沢宗吾です」
「あ……その、あなたのことはここに来る道すがら、広樹からざっと聞いたので大丈夫よ。あの……息子を、瑞樹を助けてくださってありがとうございます」
俺の前で彼女は深々とお辞儀をした。
涙を滲ませた目は、まさに母の目だった。
「お母さんも一緒に診察結果を聞いてあげてください」
「えぇ、あ……潤はどうする?」
母親が後ろに茫然と立っている潤に遠慮がちに話しかけた。
「……オレはいいよ。瑞樹の所で待ってる」
「そうね、瑞樹のことを看てあげていて」
潤の左頬がどす黒く腫れていた。あの若社長の部下にこっぴどく殴られたようだ。
あいつらのことは警察に任せている。幸いその部下が全部今回の最低な計画を白状したのでスムーズに処理されるだろうが……俺の瑞樹にしたことは必ず償って欲しい。そしてもう二度と近寄らないでくれ。
とにかく今、俺がすべきことは、心に深手を負った瑞樹のケアだ。
実家の母には芽生の幼稚園の迎えを頼んだ時に、ざっと事情を話した。母も瑞樹のことが大好きなので、かなりショックを受けていた。そして俺を励ましてくれた。
『宗吾、しっかりしなさい。あなたの所に戻ろうと瑞樹くんは必死だったはずよ。あなたが包んであげなさい。傘となって周りからしっかり守ってあげて。芽生のことは暫くうちで預かるので大丈夫よ』
心強い母の言葉に感動した。
事前に瑞樹のことを紹介する機会があって本当によかった。
瑞樹、君はこんなにも周りの人から愛されている。
※※※※
「葉山瑞樹さんのご家族で間違いないですか」
「はい」
医師の診察室に大人三人がぞろぞろ入り込んで来たので、医師の方が少々面食らった様子だった。
「えっとお母様と……」
「瑞樹の兄と恋人です」
「あっ……そうですか」
広樹自らが俺のことを『恋人』だと紹介してくれた。俺はこの家族に認められている。そのことが心強く心の底から嬉しかった。
「瑞樹さんの容体ですが、命に関わるような傷はなかったのですが、全身打撲をされている上に、指先は鏡の硝子片による切創で、五本の指腹部分をそれぞれ2cm程縫合しています。両手でしたので、暫く介助も必要になります。糸による創縫合のため麻酔・鎮静剤を使っていますし、打撲も酷いので数日入院してもらいます」
医師の説明を皆無言で聞いていた。瑞樹の両手の傷はそんなに酷かったのか。助け出した時両手から血を流していて、どんなに彼が嫌がって無我夢中で暴れたのかを物語っているようで胸が塞がるよ。
「それで……その他の部位は」
一番気になっていることを思い切って訊ねた。医師も事件の状況を警察から聞いて把握しているので、今聞かねば……
緊迫した雰囲気に診察室が包まれた。
「治療の際……その部分の検査も念入りにしましたが……挿入された痕跡は残っていませんでした。何とか未遂で済んだようです」
皆、ほっと胸を撫でおろした。
だが窓から飛び降りた時の……瑞樹の悲惨な状況を知っている俺は、苦虫を噛み潰したような顔になってしまった。
瑞樹の心の傷は、皆が想像するよりも、ずっと深いだろう。
今から俺がすべきことが見えて来る。
広樹がすぐに俺を見つけ、血相を変えて寄ってきた。
「あぁ……今やっと眠った所だ」
「無事なのか。その……」
「今から主治医の先生の話を聞く所だ。一緒に行こう」
「分かった」
そこで瑞樹の義母と目があったので会釈した。少しだけ決まりが悪いな。きちんと函館に挨拶に行こうと思っていたのに。だがここは正直に俺と瑞樹の関係をはっきり示そう。
「はじめまして。こんな形で挨拶することになるとは……瑞樹くんの恋人の滝沢宗吾です」
「あ……その、あなたのことはここに来る道すがら、広樹からざっと聞いたので大丈夫よ。あの……息子を、瑞樹を助けてくださってありがとうございます」
俺の前で彼女は深々とお辞儀をした。
涙を滲ませた目は、まさに母の目だった。
「お母さんも一緒に診察結果を聞いてあげてください」
「えぇ、あ……潤はどうする?」
母親が後ろに茫然と立っている潤に遠慮がちに話しかけた。
「……オレはいいよ。瑞樹の所で待ってる」
「そうね、瑞樹のことを看てあげていて」
潤の左頬がどす黒く腫れていた。あの若社長の部下にこっぴどく殴られたようだ。
あいつらのことは警察に任せている。幸いその部下が全部今回の最低な計画を白状したのでスムーズに処理されるだろうが……俺の瑞樹にしたことは必ず償って欲しい。そしてもう二度と近寄らないでくれ。
とにかく今、俺がすべきことは、心に深手を負った瑞樹のケアだ。
実家の母には芽生の幼稚園の迎えを頼んだ時に、ざっと事情を話した。母も瑞樹のことが大好きなので、かなりショックを受けていた。そして俺を励ましてくれた。
『宗吾、しっかりしなさい。あなたの所に戻ろうと瑞樹くんは必死だったはずよ。あなたが包んであげなさい。傘となって周りからしっかり守ってあげて。芽生のことは暫くうちで預かるので大丈夫よ』
心強い母の言葉に感動した。
事前に瑞樹のことを紹介する機会があって本当によかった。
瑞樹、君はこんなにも周りの人から愛されている。
※※※※
「葉山瑞樹さんのご家族で間違いないですか」
「はい」
医師の診察室に大人三人がぞろぞろ入り込んで来たので、医師の方が少々面食らった様子だった。
「えっとお母様と……」
「瑞樹の兄と恋人です」
「あっ……そうですか」
広樹自らが俺のことを『恋人』だと紹介してくれた。俺はこの家族に認められている。そのことが心強く心の底から嬉しかった。
「瑞樹さんの容体ですが、命に関わるような傷はなかったのですが、全身打撲をされている上に、指先は鏡の硝子片による切創で、五本の指腹部分をそれぞれ2cm程縫合しています。両手でしたので、暫く介助も必要になります。糸による創縫合のため麻酔・鎮静剤を使っていますし、打撲も酷いので数日入院してもらいます」
医師の説明を皆無言で聞いていた。瑞樹の両手の傷はそんなに酷かったのか。助け出した時両手から血を流していて、どんなに彼が嫌がって無我夢中で暴れたのかを物語っているようで胸が塞がるよ。
「それで……その他の部位は」
一番気になっていることを思い切って訊ねた。医師も事件の状況を警察から聞いて把握しているので、今聞かねば……
緊迫した雰囲気に診察室が包まれた。
「治療の際……その部分の検査も念入りにしましたが……挿入された痕跡は残っていませんでした。何とか未遂で済んだようです」
皆、ほっと胸を撫でおろした。
だが窓から飛び降りた時の……瑞樹の悲惨な状況を知っている俺は、苦虫を噛み潰したような顔になってしまった。
瑞樹の心の傷は、皆が想像するよりも、ずっと深いだろう。
今から俺がすべきことが見えて来る。
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