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発展編
幸せを呼ぶ 5
夜中にふと目覚めると、自分の視界が明らかに横向きになっていた。
あれ……おかしいな。いつの間に横になったんだ?
えっ……まさかあのまま寝ちゃったのか。
自分の頭の位置を確認して驚いた。
この硬さって、枕でもクッションでもないぞ……
これって、わっ! もしかしてこの温もりは瑞樹の膝なのか。
じゃあ……俺、ずっと瑞樹に膝枕してもらっていたのか。
参ったな……普通は逆だろう、逆!
カッコ悪いな。以前だったら付き合っている相手に絶対にこんなことしてもらわなかったのに、瑞樹になら……俺もこんな風に甘えられるのか。自分がどんどん変わってきていることに、気づかされるよ。
瑞樹は無事かと仰ぎ見ると、ソファにもたれたまま俺の背中に手を置いてぐっすり眠っていた。俺にはすっぽり毛布をかけてくれたのに、君は何もかけていない。いくら春先とはいえ……それは寒いだろう。
だが瑞樹はとても窮屈な姿勢なのに、とても幸せそうな寝顔をしていた。
どうやら、いい夢を見ているようだ。君が幸せそうな顔をしてくれると、俺も嬉しくなるよ。幸せって、こうやって連鎖していくのだと実感するよ。
にしても俺と瑞樹では体格差がありすぎだろ!
悪い、重たかったよな。
そっと身体を起こして、今度は瑞樹の頭を静かに俺の膝に載せてやった。
うん、やっぱりこの方が絵になるだろう。
まどろむ瑞樹の肩を覆うように、モコモコの毛布をすっぽりとかけてやった。
もう明け方なのか。少しずつ窓の外が明るくなっていくにつれて、瑞樹の部屋が明瞭に見えてきた。瑞樹の方は相当疲れていたようで、まだ起きる気配はない。
なので俺はソファに座ったまま、瑞樹が長年住んだ部屋をじっくりと観察した。
今までこの部屋に何度か来たことがあるが、こんなにじっくり眺めるのは始めてだ。
へぇ、壁に棚を付けて花の図鑑を並べているのか。どうやら全部洋書のようだ。花が好きな瑞樹らしいな。ふぅん……キッチンのカウンターの下にはマグカップのコレクションか。マグカップが10個程横に並んでいた。新緑のグリーンからコーヒーブラウンまで……まるで樹木のようだ。瑞樹の大切なコレクションなのだろう。
玄関を入って左側は前の彼氏の部屋だった。今は空き部屋で……右が瑞樹のプライベートルーム。そして今俺がいるのがリビングだ。どうやら2LDKの部屋は60平米ほどありそうで、独り暮らしには広すぎる。(まぁここは前の彼と同棲していた所なのだが)
ここにあるものは一つ一つ、もしかしたら前の彼氏と選んだものなのかもしれない。そう思うと自分の過去を棚に上げて、つい焼きもちを焼いてしまうよ。
瑞樹……君を早く俺の家に呼び寄せたい。
そう思うが、この家をきちんと整理できるまで、じっと待つ予定だ。実際問題として賃貸借契約のこともあるしな。だが、もう何もかもそういう面倒なことは飛び越えて、このまま瑞樹を俺の家に攫いたい衝動に駆られてしまう。
落ち着け、宗吾。
ふたりの時間はようやく始まったばかりだ。
焦って失敗するな。
瑞樹には瑞樹の時間がある。尊重しないと駄目だろう。何度も誓ったことじゃないか。もう即物的に手に入れるのはやめると。
やがて日が昇り、太陽の光線が部屋を照らし瑞樹の瞼にも届く。慌てて俺の手の平で光を遮るが、瑞樹は眩しそうに瞬きをした。
どうやら目覚めてしまったようだな。もう少し膝枕してやりたかったが。
「あっ、宗吾さん……」
「おはよう。瑞樹」
「え? あれどうして……僕」
瑞樹がいつの間にか立場が逆転していることに驚いて、目を丸くしている様子が猛烈に可愛くて、チュッと素早くキスをしてやった。
「わっ! 」
おいおい、寝起きのキスひとつでそんなに過敏に反応するなよ。
もっと欲しくなるだろう。
「おいしいか」
「あっ……その、おっ……おはようございます」
これ位の淡いキスで、頬を苺のように染めるんだから参るよ。
柔らかい頬を両手で掴み、今度はもう少し深いキスを仕掛けると、瑞樹はビクンっと喉を反らした。その無防備になった喉仏に舌を這わしたくなる。だがこれ以上触れると……俺の下半身に力が漲りそうで、まずい。
「んっ……」
だがもう少しだけ……
ブルルル―
そこで、まさかの目覚ましコール!
かけたのは俺だが『ま・た・か・よっ!』と叫びたくなる。
「そっ……宗吾さん……お迎えの時間に間に合わなくなってしまいますよ」
「……続きはいつだ? 」
思わず大声を出してしまった。
「くすっ、大丈夫ですよ。僕は逃げません」
起き上がった瑞樹が、俺に明るい笑顔を向けてくれた。
そうだな、瑞樹はここにいる。今目の前に……いてくれる。
「今からシャワー浴びて、宗吾さんのスーツにアイロンかけて、あぁ朝ごはんはナイですね。とにかく急ぎましょう!」
瑞樹に手を引かれてソファから起こされてしまった。
やれやれ今日もお預けか。だがもう春はここまでやってきている。
「瑞樹……頼むから早く、引っ越しの日取りを決めてくれ」
「そうですよね。今日大家さんに相談してみます」
「決まったら、すぐに迎えに来るよ」
「はい!」
ふたりの約束が実行されるのは、もうじきだ。
桜は咲き始めた。
やがて……街中をピンク色に染め上げていくだろう。
俺と瑞樹の恋もようやく勢いづいて色鮮やかに染まりだす。
あれ……おかしいな。いつの間に横になったんだ?
えっ……まさかあのまま寝ちゃったのか。
自分の頭の位置を確認して驚いた。
この硬さって、枕でもクッションでもないぞ……
これって、わっ! もしかしてこの温もりは瑞樹の膝なのか。
じゃあ……俺、ずっと瑞樹に膝枕してもらっていたのか。
参ったな……普通は逆だろう、逆!
カッコ悪いな。以前だったら付き合っている相手に絶対にこんなことしてもらわなかったのに、瑞樹になら……俺もこんな風に甘えられるのか。自分がどんどん変わってきていることに、気づかされるよ。
瑞樹は無事かと仰ぎ見ると、ソファにもたれたまま俺の背中に手を置いてぐっすり眠っていた。俺にはすっぽり毛布をかけてくれたのに、君は何もかけていない。いくら春先とはいえ……それは寒いだろう。
だが瑞樹はとても窮屈な姿勢なのに、とても幸せそうな寝顔をしていた。
どうやら、いい夢を見ているようだ。君が幸せそうな顔をしてくれると、俺も嬉しくなるよ。幸せって、こうやって連鎖していくのだと実感するよ。
にしても俺と瑞樹では体格差がありすぎだろ!
悪い、重たかったよな。
そっと身体を起こして、今度は瑞樹の頭を静かに俺の膝に載せてやった。
うん、やっぱりこの方が絵になるだろう。
まどろむ瑞樹の肩を覆うように、モコモコの毛布をすっぽりとかけてやった。
もう明け方なのか。少しずつ窓の外が明るくなっていくにつれて、瑞樹の部屋が明瞭に見えてきた。瑞樹の方は相当疲れていたようで、まだ起きる気配はない。
なので俺はソファに座ったまま、瑞樹が長年住んだ部屋をじっくりと観察した。
今までこの部屋に何度か来たことがあるが、こんなにじっくり眺めるのは始めてだ。
へぇ、壁に棚を付けて花の図鑑を並べているのか。どうやら全部洋書のようだ。花が好きな瑞樹らしいな。ふぅん……キッチンのカウンターの下にはマグカップのコレクションか。マグカップが10個程横に並んでいた。新緑のグリーンからコーヒーブラウンまで……まるで樹木のようだ。瑞樹の大切なコレクションなのだろう。
玄関を入って左側は前の彼氏の部屋だった。今は空き部屋で……右が瑞樹のプライベートルーム。そして今俺がいるのがリビングだ。どうやら2LDKの部屋は60平米ほどありそうで、独り暮らしには広すぎる。(まぁここは前の彼と同棲していた所なのだが)
ここにあるものは一つ一つ、もしかしたら前の彼氏と選んだものなのかもしれない。そう思うと自分の過去を棚に上げて、つい焼きもちを焼いてしまうよ。
瑞樹……君を早く俺の家に呼び寄せたい。
そう思うが、この家をきちんと整理できるまで、じっと待つ予定だ。実際問題として賃貸借契約のこともあるしな。だが、もう何もかもそういう面倒なことは飛び越えて、このまま瑞樹を俺の家に攫いたい衝動に駆られてしまう。
落ち着け、宗吾。
ふたりの時間はようやく始まったばかりだ。
焦って失敗するな。
瑞樹には瑞樹の時間がある。尊重しないと駄目だろう。何度も誓ったことじゃないか。もう即物的に手に入れるのはやめると。
やがて日が昇り、太陽の光線が部屋を照らし瑞樹の瞼にも届く。慌てて俺の手の平で光を遮るが、瑞樹は眩しそうに瞬きをした。
どうやら目覚めてしまったようだな。もう少し膝枕してやりたかったが。
「あっ、宗吾さん……」
「おはよう。瑞樹」
「え? あれどうして……僕」
瑞樹がいつの間にか立場が逆転していることに驚いて、目を丸くしている様子が猛烈に可愛くて、チュッと素早くキスをしてやった。
「わっ! 」
おいおい、寝起きのキスひとつでそんなに過敏に反応するなよ。
もっと欲しくなるだろう。
「おいしいか」
「あっ……その、おっ……おはようございます」
これ位の淡いキスで、頬を苺のように染めるんだから参るよ。
柔らかい頬を両手で掴み、今度はもう少し深いキスを仕掛けると、瑞樹はビクンっと喉を反らした。その無防備になった喉仏に舌を這わしたくなる。だがこれ以上触れると……俺の下半身に力が漲りそうで、まずい。
「んっ……」
だがもう少しだけ……
ブルルル―
そこで、まさかの目覚ましコール!
かけたのは俺だが『ま・た・か・よっ!』と叫びたくなる。
「そっ……宗吾さん……お迎えの時間に間に合わなくなってしまいますよ」
「……続きはいつだ? 」
思わず大声を出してしまった。
「くすっ、大丈夫ですよ。僕は逃げません」
起き上がった瑞樹が、俺に明るい笑顔を向けてくれた。
そうだな、瑞樹はここにいる。今目の前に……いてくれる。
「今からシャワー浴びて、宗吾さんのスーツにアイロンかけて、あぁ朝ごはんはナイですね。とにかく急ぎましょう!」
瑞樹に手を引かれてソファから起こされてしまった。
やれやれ今日もお預けか。だがもう春はここまでやってきている。
「瑞樹……頼むから早く、引っ越しの日取りを決めてくれ」
「そうですよね。今日大家さんに相談してみます」
「決まったら、すぐに迎えに来るよ」
「はい!」
ふたりの約束が実行されるのは、もうじきだ。
桜は咲き始めた。
やがて……街中をピンク色に染め上げていくだろう。
俺と瑞樹の恋もようやく勢いづいて色鮮やかに染まりだす。
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